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47話 剣

この日、俺はハンターを休みにして遅めに起きて朝食をすますと、部屋に一旦戻った。


今日は町にくり出そうと考えていた。

目的は、武器を買いかえようと思ったからだ。

その予定を伝えてアドバイスをもらいたくて、精霊と気兼ねなくしゃべられる部屋に一旦戻ったのだ。


『今使ってる魔剣のショートソードではダメなのかい?』

今日の俺の担当?の砂の精霊はそう聞いてきた。

砂が集まって涙の形をしていてのっぺりした目がついている姿だ。

なんか知らないが今日は担当?は砂の精霊ひとりなんだそうだ。

「あちらの世界でナイフすら持ったことなかったから、慣れるためにショートソード買ったんだよ。慣れてきたかなって思えるようになったから、普通の長さの剣を買ってみようかなって思って。」

『だったら剣の精霊を呼んではどうだい?剣にも色々種類があるからその説明や質のいい武器の見分けもしてくれるんじゃないか?』

「それいいな!ありがとう、早速呼んでみよう。」

ということで、剣の精霊さんに来ていただきました~、わーパチパチ。


「―――――・・・っということで、剣の精霊にアドバイスしてほしくてさ。」

『なるほどな!いいじゃねえか、面白そうだ!協力するぜ!』

剣の精霊はあっさり協力してくれることとなった。

もちろん魔力はあげ放題だ。

「ありがとうー。で、早速なんだけどこれから武器屋に行こう。どの武器屋がいいとかわかる?」

『もちろんわかるぜ!質のいいもんを置いてる武器屋は俺たち剣の精霊にはピンとくるんだ。』

外観を見たらわかるらしい。

すごいね、さすが精霊だね。



ということで俺たちは宿屋を出て、俺はとりあえず近くの武器屋からローエオススメの武器屋など数件を回ってみたが、剣の精霊は外観を見ただけですぐにダメと判断していた。

そしてやっとオーケーの出た武器屋はなかなかのボロい店であった。

その武器屋自体、町の南の方の第4地区の中にあってなかなか入りずらかった。

第4地区というのはスラムがあるためにあんまりいい印象のない地区だ。

雰囲気もちょっと暗めで低所得者が住むために激安店とかヤバそうな怪しい店とかもある、治安がちょっぴり緩い地区らしい。

俺はよく通うわけではないけど、依頼とかで何回か来たことがある程度で、また変なのに絡まれたくないからあんまり行かないようにしてたところだ。

でもまあ、剣の精霊がオーケーを出すならちょっと勇気だして入ってみようかな。

俺は立て付けの悪いドアを開けて中に入ってみた。


中は意外にスッキリしてて、剣・斧・槍などが種類別にきれいに壁際に立て掛けられていて、そこらの武器屋より種類は多い。

一番奥がカウンターになっていて、店主と思われるものすごく怖い顔のおじいさんが座っていて「らっしゃい」とぶっきらぼうに言ってきた。

店主の顔が怖かったのでひえっと思ったが慌てて会釈して剣のコーナーに向かうと、あ、けっこう種類あるなあ・・・。

普通の長さの剣は・・・ロングソード、これだな。

片手剣の代表格で長さはだいたい70~80センチある。

俺が今使っているショートソードは50~60センチだから20センチ長くなるということだ。


・・・う~ん。

なんだろう。

もうちょっと長い方が得意(・・)な気がする。


・・・・・・うん?

なんで今、得意だと思ったんだ?

俺は剣なんてこの世界に来るまではもちろん触ったことないのに。

うん?でもなんでだろう。

もうちょっと長い奴を俺が扱うイメージがすごい湧いてくる。


『どうした?イオリ。変な顔をして。』

ハッとして慌てて小声で返事した。

「ごめんごめん。なんかロングソードよりもうちょっと長い奴がいい気がして。」

『ロングソードよりちょっと長いつったら、バスタードソードだな。その右隣の奴だ。』

俺が見ていたロングソードの右隣に、ロングソードより一回り大きな剣が立て掛けてあった。

『片手・両手と両方できて長さは1メートルだ。腰に吊り下げるタイプでこれ以上でかくなると背中に背負うことになる。刃もそこまで厚くないから長さの割には軽いぞ。』

なるほどな。

試しに持ってみると、見た目ほど重くはないけど俺の筋肉がそこまでないのでちょっと重い。

両手では普通に持てるけど、片手ではよいしょといって持つくらいだ。

これでもこの世界に来てハンターするようになってちょっとは筋肉ついたんだけどなあ・・・。

でもこのバスタードソードいいなあ。


「どうしよう、筋肉つけるから、これにしようかな?」

『これにすんのか?・・・いいんじゃねえか?今じっくり見たが、質はいいぞ。』

剣の精霊が質がいいというなら大丈夫だろう。

値段は・・・鞘付きで・・・1万5000G!?

た、高い!・・・け、けどこの大きさで質がいいならしょうがないか?

出せない金額じゃないし。


よし、と俺はバスタードソードを思いきって買った。


腰に差してみると・・・うわあ、長い。

先をズルズル引きずりそうなくらい長いけど、しょうがない。

この長さがいいと思っちゃったんだもん。

魔剣のショートソードは売るとなったら大騒ぎになるから一旦鞄に入れとくことにした。

そしてちょっと振ってみたくて、町の外に出掛けることにした。

とりあえず、人気のない西の草原に行ってみよう。



案の定、西の草原は誰もいなかった。


「よし、ちょっと振ってみよう。」

『おもいっきりやってみな!』

『俺たちが周りに魔物がいないか見張っとくから気にせずやりな、イオリ。』

「ありがとう、ふたりとも。」

俺は荷物を置いてバスタードソードを抜いた。


縦に振ったり横に振ったり、そして体の動きに合わせて素早く連撃してみたり、両手でいつくもの連撃を繰り出して、頭に浮かんだ動きをそのままやって、俺は無心で剣を振った。

なんでか剣の扱いが当たり前のようにわかる。


そもそも、あちらの世界でほとんどケンカをしてこなかった俺がなんで初めての戦いから一撃で魔物を倒せる?

戦い方なんてわかるわけもないのに、いざ戦いとなると頭の中に自然と戦い方が浮かんできて、体が当たり前のように動くのだ。

そしてそれを受け入れている自分がいる。

まあ、受け入れているおかげで魔物と戦えて命があると思ったら、これもチートなのかな?とか思えてくる。


そんなことを考えながら振っていたら、30分くらい振っていたらしくて汗びっしょりになってしまった。



「はーっ、疲れた。こんなもんかな。」

俺はバスタードソードを腰に差した。

『すげーすげー!めちゃくちゃかっこよかったぜ!』

『初めてその剣を持ったとは思えないくらい扱えていたぞ。見事だった。』

ふたりの精霊はそう絶賛してくれた。

「ありがと。でもやっぱり片手の時はちょっと重い感じがするからもうちょっと筋肉つけたらいい感じになるかもな。」

明日からまた依頼をいっぱいこなすつもりだし、それで筋肉つけたいな。

「さて汗かいたし銭湯行こっと。」


そうして俺は新たな武器を買って意気揚々としていた。




だが、この時の俺はちょっと考えが浅はかだったと思った。





1週間後。




「ぎゃーー!!バスタードソードが魔剣になってる!!??」



そう。

俺が剣を身に付けていたら魔剣になることをすっかり忘れてた。


『ははは!魔剣2本持ってる人間なんて珍しいよ。ネットワークに晒そっと。』

偶然遊びに来ていた情報の精霊に秒で見つかり、あっという間に晒された。

『これからは魔剣製造人間とイジろうかな?ぷぷぷ!』

「やめろ!!」



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