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45話 馬車を助ける

ある日のこと。




俺はいつものようにハンターの依頼を終わらせて帰路についている途中だった。

この日は複数の依頼をやってみようと思って討伐依頼と採取依頼を1つずつやってみた。

討伐依頼は町の西の草原のちょっと先に出るという魔物を倒すというものでさくっと指定数討伐して、採取依頼は西の草原の端に生えていた薬草の採取だったのでそれもさくっと終わらせた。

こんなにさくさく終わらせられたのも精霊のおかげだ。


『イオリ、あっちとあっちに依頼の魔物がいるぜ。』

「お、サンキュー。」

『イオリ~、ここに薬草生えてるよ~。』

「わ、本当だ!サンキュー。」


という感じで、今日の俺の担当?の、雷の精霊と音の精霊が手伝ってくれた。

雷の精霊はイナズマのマークの形と似た体にイナズマのマークの形に似た腕が2つついていて鋭い目がついている姿で、音の精霊は音符のおたまじゃくしのところに丸い目がついた姿だ。

もちろん手伝ってくれたので好きなだけ魔力を食べてくれと言っております。

西の草原から町に帰るために道に出たのにまだ食べてるようで『おいしー!』とか聞こえてきた。

西の草原はとんでもなく広いため、その端から帰るとなると歩いて結構かかる。

今は夕方に差し掛かって来た頃だから、町に帰り着いたらちょうど夜になるくらいかな。


そんなことを考えながら呑気に歩を進めていたら、前方からなにか騒がしい音が聞こえてきた。

耳を済ますと、戦闘音のようで、金属音や魔物のような鳴き声に人間の男性の叫ぶ声などが聞こえてきた。

「なんだ?誰か戦っているのかな?」

『モグモグ・・・そうみたいだな。』


俺は様子を見ようと音のする前方に行くと、道の真ん中で誰かが戦っているのが見えてきた。

とんでもなく豪華な馬車の周りをガチガチの白い鎧を着た人たち4人が守るようにいて、その外側を赤い鷹のような魔物5羽が取り囲んでいた。

「キィイイイ!」

赤い鷹は鉤爪で上空から勢いよく白い鎧の人たちに攻撃してきて、白い鎧の人たちはそれを防御して反撃しようと剣を振っているが赤い鷹は素早く上空に飛んでしまうのでなかなか倒せないでいるようだ。

赤い鷹たちはそれを繰り返して攻撃しているためか、白い鎧の人のなかには怪我をしている人もいた。


「だ、大丈夫じゃないっぽいな?」

『そうだねえ~。剣じゃなくて魔法で倒した方が早いんだけど・・・あ、魔法も使ってるね~。』

白い鎧の人たちはファイアボールやウインドカッターなどを撃ってみたりしているが、赤い鷹の体に当たってもたいしたダメージになってないようで、変わらず白い鎧の人たちを襲っていた。


「怪我してる人もいるし、助太刀しよう。手伝ってもらっていいかな?雷の精霊。」

『おう。任せな。』

雷の精霊が快く手伝ってくれるということで、俺は気付かれないように木や草むらにコソコソ隠れながら戦っているところに近づいた。

そうして白い鎧の人たちにも赤い鷹にも気付かれることなく20~30メートルほど距離を縮めたところで、俺は雷の精霊に指示をした。

「雷の精霊、手前で戦っている赤い鷹2羽を頼む!」

『了解!』


バチバチバチッ!


「「ギィッ!?」」

2羽の赤い鷹はどこからか降ってきた雷に打たれた。

2羽とも何が起こったのかわからない感じの鳴き声をあげて地面にヘロヘロと落ちた。

「な、なんだ!?」

白い鎧の人たちのうち2人がそれぞれ相手をしていた赤い鷹が突如雷に打たれて落ちてきたのを驚いていた。

が、すぐに気を取り直して、今がチャンスと地面に落ちた赤い鷹2羽をすかさず剣で刺して倒していた。


俺は木の陰からそれを見届けて、彼らに近づいた。

「すいません!助太刀させてもらいました!」

白い鎧の人2人は俺が声をかけるとすぐに気が付いてくれた。

「ハンターか・・・?すまん!助かった!」

「他の人たちも助太刀します!」

俺はそう言うと、魔剣を抜いた。

そして始まる謎現象。


全てがゆっくりになって俺はさっさと残りの赤い鷹3羽のところへ向かった。

1羽目は鉤爪で攻撃しようと白い鎧の人に向かって降りてきたところだったので、赤い鷹の横から足を2本同時に切り落として体を突き刺し素早く抜いた。

2羽目は白い鎧の人と赤い鷹が剣と鉤爪の応酬で揉み合っていたのを赤い鷹の後ろから羽を切り落とした。

そして3羽目は上空で様子を見ているようだったので、そいつに向かって魔剣を投げた。

なんとなく刺さるような気がしてやってみたのだが、魔剣は赤い鷹の元へまっすぐ飛んでいき体のど真ん中に見事に刺さって力なく地面に落ちてきた。


赤い鷹が地面に落ちたと同時に謎現象は解けた。


「うええっ!?あれ!?」

「え?え?」

1羽目と2羽目と戦っていた白い鎧の人2人はなにが起こったがわからずあわてふためいていた。

そして先の2人は俺の戦っているのを見てぽかんとしていた。

早すぎて見えなかったからぽかんとしているのかな?

まあ、ほぼ一撃で倒しているしそれもぽかんとさせた原因かも。

俺は3羽目の赤い鷹の体から魔剣を抜くと鞘に納めた。


「すいません、通りすがりの冒険者です。苦戦しているように見えたので、助太刀させてもらいました。」

そう声をかけるとあわてふためいていた2人はハッと俺に気付いた。

「き、君、いつの間に・・・!?す、すごいな!」

「た、助かったよ!ありがとう!」

白い鎧の人たちはホッとしたような顔をして剣を納めると、次々とお礼を言ってきてくれた。


「あっといけね!姫様!大丈夫ですか!?」

白い鎧の人は慌てて馬車に駆け寄っていった。

そして馬車の小窓越しに中の人としゃべっているようだ。

姫様・・・?


あれ、待って。

豪華な馬車が魔物に襲われているところを助けたら・・・なんてラノベで読んだことあるよ?

あるあるだよ。

ははは・・・まさかなあ・・・。



「ハンター。」

白い鎧の人たちの中で1番年上の人が俺に近寄ってきた。

「本当に助かったよ。助太刀感謝する。」

そう言って頭を下げてきた。

「ああ、いやいや。困ってたら助けるのは当然ですし。」

ふと見ると、白い鎧の人たちのなかには怪我をしている人が数人いた。

「怪我、大丈夫ですか?よかったらポーションいります?」

「ああ、心配いらないよ。こういう時のためにポーションをいつもいくつか持つようにしてるから大丈夫だよ。」

そう言われてまた見ると、怪我をしている白い鎧の人たちは腰に下げているポーチからポーションを出して怪我したところにかけていた。

そしてあっという間に怪我は治っていった。

よかったよかった。


「君に助けられたということで、是非とも姫様がお礼を言いたいそうなんだ。」

なんですと?

その時、馬車のドアがガラッと開いた。

中からいかにも執事っぽいスーツ姿の白ひげのじいさんが降りて誰かの手を引いているのが見えた。

白い鎧の人たちはスッと背筋を伸ばした。



そして馬車から美少女が降りてきた。


俺と同い年くらいの黒髪サラサラヘアーを腰まで伸ばした碧眼の美少女で、肌が白くて儚いというか、幸薄そうな感じだ。

黒の豪華なドレスを着て降り立った美少女は遠慮がちにこちらを見てきていた。


あ、大変。こういうときは跪くんだっけか?

どうしたらいいの?

ラノベであったのは、片膝を地面につけるんだっけ?

んで、手は胸に置く?みたいな?

とりあえずそれをやろう!違ったら土下座しよう!


俺は慌てて片膝を地面につけて手を胸に当てて頭を下げた。

美少女はしずしずとこちらに近づいてきて、俺の近くまでくると止まった。


「・・・助けていただき、ありがとうございました。」

美少女は小声でそう言った。

ギリギリ聞こえるくらいの小ささで、チラッと見上げるとサッと目線を外された。

・・・もしかしなくても、この子、人見知りか?



「・・・わ、わたくしは、ローワン王国第ニ姫のネフィエンヌ・アルネ・ローワンと申します。」



やっぱり姫様って、この国の姫のことだったか!!





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