44話 盗賊退治の後
アルと応援のハンターたちが来たのは、俺が予想した通りの夕方になってからだった。
その間に1回男2人は気が付いたが、また石の精霊に石つぶてをぶつけてもらって2人とも気絶させた。
アルは3人のハンターと戻ってきて、女性はハンターズギルドの職員と治療院に向かったそうだ。
3人のハンターはたまたまハンターズギルドにいたそうで、俺は初めましての3人だった。
パーティーとかいうのではなくて、それぞれソロの戦士っぽいおっさんに魔法使いっぽい女性に剣士っぽい女性だった。
女性が2人というのは盗賊が女性2人を捕まえているということで、保護するときに男性より女性がいた方がいいということらしい。
挨拶もそこそこに、気絶している男2人を起こして戦士っぽいおっさんが説得して洞穴の位置を聞き出していた。
脅したりはしてないよ。
ちょっと指をポキポキして近くにあった岩を素手で割ってただけだよ。
男2人はガクブルしながら教えてくれました。
地図を見ながら進んで30分ぐらいかかって洞穴のある丘に到着。
警戒しながら洞穴に近づいて様子を見たら・・・。
盗賊たちは全員が床に寝転がって具合悪そうにしていた。
どうやら目眩と吐き気でいまだに起き上がれない状態のようだ。
思ってもみない盗賊たちの状態にハンターたちやアルも戸惑っていたが、1人ずつ持ってきたロープで縛っていっていた。
俺も戸惑ったフリしてロープで縛る手伝いをした。
奥にいる女性2人は無事見つかって、ハンターの女性2人が声をかけたりして無傷であることがわかった。
「私たちも・・・わからないんです。1人逃がした後、薬で眠らされてまして、気が付いたのは1時間くらい前です。・・・ずっとぐったりして、気持ち悪いと言って横になってたんです。」
それを聞いた誰もが何があったんだろうと首を傾げた。
「ふむ・・・おい、あんたら!一体何があったんだ?」
戦士のおっさんがすぐ近くで寝込んでいた盗賊の肩を揺すって声をかけた。
「わ、わからない・・・。急に気持ち悪くなって、気絶して・・・目が覚めても気持ち悪いのが続いてんだ・・・うっぷ。」
「急に?・・・まあ、原因はわからんが・・・とにかくこのまま置いとく訳にもいかんから、町に連れていこう。警備兵に引き渡さねえと。」
だが盗賊たちはまともに立つことさえできずに、立ってもすぐにしゃがみこんだりした。
これでは移動ができないなと戦士のおっさんが困っていたので、密かに水の精霊に頼んで水分を元に戻したら、少し回復したようで休憩しながら町に向かうこととなった。
森を抜けて町への道に戻った頃には完全に夜になっていた。
「夜は魔物が出て危険だが、数時間したら町だからこのまま向かおう。」
戦士のおっさんの判断でそう決まって道なりに歩いて町に向かい、数時間かかって着いた。
町の出入り口には警備兵とギルド職員が待機していてくれて、その人たちに盗賊全員を引き渡した。
女性に履かせていた靴下と靴はギルド職員が女性から俺に渡してくれと預かっていたと返してもらった。
それからギルドに向かって、受付で討伐依頼を報告して報酬をもらってから、緊急依頼の報告をして、報酬をハンター3人に渡してお礼を言って解散となった。
あー、ジャイアントスネークの俺のマジックバッグにパンパンに入ってる奴も売ればよかった。
明日でいっかー、なんか今日は疲れたし。
「今日はありがとう、アル。なんか普通の討伐依頼が大変なことになったな。」
「本当だね。また、一緒に依頼をできたらいいね。」
そう言ってアルとギルドの前で別れて俺は宿屋に向かった。
その数日後。
孤児院にて。
「ど、どうだった?アル。」
グランはこそっとアルに聞いた。
この日、アルはお菓子の差し入れと孤児院への寄付をするために孤児院に来ていた。
広間のテーブルの上には色んなお菓子が並べられていて、3人の子供たちはどれから食べるかで論争中だ。
それを呆れながらも微笑ましく見守るローエとグランとアル。
ローエがお茶を用意するためにキッチンへ行った隙に、グランはアルに話しかけたのだった。
「うーん、恐らく、グランの言う通りかもしれないね。」
「本当か!」
「うん。僕も聞いたよ。確かに精霊に指示しているかのような言葉を聞いた・・・と思う。」
「思うって・・・。」
「しょうがないよ。戦ってて止めを刺す直前に聞こえてきたからはっきりと聞いたわけではないから・・・。」
「そ、そうか。でも聞いたってのだけでもよかった。」
「でも、もし今後、本人に確かめるとするなら、もうちょっとはっきりした証拠があった方がいいかもしれない。知らないとか聞き間違いとか言われるかもしれないね。」
「そうか・・・。」
「んー?なになに?なんの話をしてるの?」
ローエがお茶を持ってひょっこりキッチンから出てきた。
「え、ああ、なんでもない。アルがハンターを再開したらしいからどうだったか聞いてただけだ。」
「あ!そういえばアルフレッド様、ハンター再開したんですよね?どうでした?」
ローエはアルのハンター再開に食いついて、ニコニコしながら聞いてきた。
「しばらく行けてなかったけど、久しぶりでだいぶ体がなまってたよ。けど、面白かったよ。イオリと行ったおかげもあるんだろうけど。」
「あ、イオリと一緒に行ってきたんだ。イオリも頑張ってるわねえ。」
「頑張ってるどころか、イオリってすごく強いんだよ?いまいち本人は自覚がないみたいだけど。」
すると論争していた子供たちが反応した。
「えー、イオリ強いの?」
「全然強そうに見えないわよね。」
「・・・うん。」
かなり疑っている目で見られたが、アルは苦笑いして答えた。
「うん、すっごい強いよ。魔物と戦ってるのを見たけど、素早くてほとんど見えないし全部の戦いを一撃で終わらせていたからね。」
へえー!と子供たちは驚いて目をキラキラさせていた。
「今度イオリ来たときに戦ってって、言ってみようかな?」
「あんたが相手になるわけないじゃない。魔物と戦ったことないでしょ?」
「でもさ、イオリが戦ってるとこ見てみたい。」
「・・・私も見たい。」
子供たちは純粋に興味があるようで、アルはその様子にふふふと笑いかけた。
「じゃあ、今度イオリが来たときに言ってみたらいいんじゃないかい?イオリだったら見せてくれると思うよ。」
アルが子供たちにそう言うと、子供たちは「そうする!」と口々に言ってキャッキャとお菓子論争に戻った。
「・・・グラン、もしなんらかの証拠が手に入って、イオリに確かめる日が来たらその日は僕も同席していいかな?」
しばらくしてお菓子論争に結論が出て、全部外の原っぱで開けて食べる!ということに決まったので子供たちとローエは原っぱに出ていったのをグランとアルが見送った後、アルはそう言ってきた。
グランはその申し出が思ってもみなかったので少し面食らってアルを見た。
「え?ああ、それはいいが・・・どうした?」
「ふふっ、ちょっと個人的に興味が湧いてきたんだよ。もし本当なら色々と話を聞いてみたくてね。」
「個人的興味・・・?・・・あー、アレか。お前は確か魔法の研究やってるから・・・。」
グランはアルから聞いた、自身の趣味のことを思い出した。
「個人的な趣味で本を読み漁ってそれをまとめてる程度だけどね。本当に精霊と話せるなら、色んな魔法の謎が解けるかもしれないんだよ?」
途端に子供のようにキラキラした目のアルに、グランは呆れていた。
「そんな謎とかより、危険な存在かどうか確かめるのが重要だろうが。」
「そんなとはなんだい、大いなる謎だよ。危険な存在かなんて・・・僕はわかりきってる気がするけどなあ。」
「あ?」
なにかを含んだような言い方のアルに、グランは首を傾げた。
「イオリはそんな悪い人間には見えないよ?表裏なさそうだし真面目だし人助けもやってるし。一緒に依頼をしてますますそう思ったよ。グランだって一緒に依頼やったからいい奴だって、わかってるでしょ?」
「・・・。」
グランは微妙な顔をしていた。
経営者の1人としても、孤児院出身者としてもこの孤児院を守る責任感でイオリを警戒しているけど、1人の人としては信頼してもいいと思ってるのかな?とアルはその微妙な顔から推測した。
「まあ、僕はこれで帰ることにするよ。イオリと話すことになったらまた知らせてね。」
「・・・ああ。」
アルはやれやれと肩をすくめながら孤児院を出た。




