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第四十七話 予告

私は特撮番組が好きだ。

毎週日曜日の朝は子供以上にワクワクしているほどだ。

映画も毎年見に行っている。

前売り券を買い、座席を予約し、朝一で見に行く。

これをかれこれもう5年やっている。


この日も私は子供を連れて映画館に来ていた。

本日公開の映画を朝から見るためだ。

子供の手を引き映画館に入り、ポップコーンやジュースを選ぶ。

映画を見る前のこの時間も楽しみの1つだ。


私は子供と2人で指定した座席に向かう。

入ると他の映画の予告をやっていた。

子供向けの映画やティーン向けの恋愛映画の予告が繰り返し流れる。


毎年見ていると映画の予告も大人向けの物とは違う事が分かる。

簡単に言えば子供が見ても怖くない、大丈夫な物しか流れない。

暴力シーンや流血シーンなんて絶対にありえない。

他の劇場がどうかは知らないが私が通う劇場はそうだった。


だからこそ不思議だった。

今回に限って何故か子供向けとは思えないホラー映画の予告が入ったのだ。

人が殴られたり、腹部を刺されて死んでいたりとかなり衝撃的な内容だ。

さぞや子供は怖がっているだろうなと思った。

しかし、怖がるどころか周りにいる家族は何の反応も示していない。

私は半年ぶりの映画館だったから、もしかするとここ最近はこういう予告が普通なのかと一瞬考えた。

でもやっぱりおかしい、誰も一言も発さない状況なんてあるのだろうか?

子供が怖がらなくても親が何か言いそうなものなのに。


不安になったが予告が終わるとまた子供の声が聞こえてきた。

同時に本編も始まり、私は一旦考えるのをやめた。

映画が終わってから係員に聞けばいいだろうと思ったのだ。



映画の内容はいつも通り、イケメン俳優が戦い、敵が爆発する熱いものだった。

途中子供には分かりづらいストーリーだったようで退屈する子もいたが、概ね好評。

戦闘シーンではどの子も無言になるくらい熱中していた。

私も御多分に漏れず目をキラキラさせて見入ってしまった。


そのまま最後まで映画を堪能したのだが、ED後にまたおかしな映像が流れた。

数秒だったので何かの手違いだと思った。

だってED後はスクリーンはすぐに黒くなり、館内は一気に明るくなるのだから。

映像が流れるなんて奇妙な事が起きるはずが無い。

しかもその映像は先ほどのホラー映画の予告同様衝撃的な物だった。


血塗れの女性と子供が一緒に倒れている映像。

それが数秒間映し出され、最後に子供が起き上がり女性を蹴りつける。

どういう内容の映画にせよこれは酷いと思った。

同時に凄く気味が悪かった。


せっかくの良い気分が台無しだ。

劇場の入り口に立つ係員に先ほどの予告は何なのかを聞かないと収まらない。

荷物をまとめると、私は子供の手を引いて入り口に向かう。

そして観客1人1人に挨拶をしている係員に何故ホラー映画の予告が入ったのかを訪ねた。


だが係員の女性は不思議な顔をしている。

人が殴られたり、腹部を刺されたりしている予告が流れたと言ったのだが通じていないようだ。

映画のED後にも子供と女性が血を流して倒れている映像があったと言っても信じてもらえない。


係員は諭すように説明をしてくれた。

今日の予告にはホラー映画は無く、ファミリー向けの映画の物しか流していない。

ED後も特にトラブルは無くスクリーンは黒くなったのでそんな映像は確認していないと。

私は確かに見たと思っていたのだが、そこでおかしな事を思い出した。

誰も声を発していなかった事を。

そして気付いた、映画のタイトルを一切見ていない事を。

あれは映画の予告ではない、私はとても怖くなった。


係員にお礼を言うと子供の手を引き足早に劇場を去った。

このままここにいてはまずい事になると本能が警告しているようだ。

私はタクシーに乗ろうと少し離れた停留所に急いだ。




その日はおかしな日でした。

父と一緒に家でご飯を食べていると見知らぬ女が入ってきたのです。

何か激しい言い争いの後父の声が聞こえなくなると女は私の手を引き映画館に向かいました。

私がお父さんはと言うと黙ってろと言って殴られました。

泣くともっと強い力で殴られたので私は痛いのを我慢して女に着いていきました。


映画館でも私は声を殺していました。

隣の女が怖くてしょうがなかったからです。

座っている最中女は爪を噛んだり、歯ぎしりをしたり、忙しない様子でした。

しばらくすると女が荷物をまとめて立ち上がり、私の手を引きます。

入り口で立ち止まったかと思うと急に女の顔が青ざめました。

どうしたのかと思った瞬間、私の手を引っ張り走り出しました。


そして離れたタクシー乗り場に着きました。

私はここで逃げないともう逃げられないと思い、女の手を振り払って車道に飛び出そうとしたのです。

しかし女の手は私を離さず、2人とも車道に転ぶ形になりました。

そこに1台の車が突っ込んできた、というのがあの日の私の記憶です。


その後気づくと私は病院に居て、隣では母親が泣いていました。

父親が死んだと聞かされたのもその時です。

その後はあなたも知っている通り、頭のおかしな女が子供を連れ去るため父親を殺害した、それだけの話です。


え、私があの女に思っていることですか?

手記が残されているらしいですが、読む気にもなれません。

私は未だにあの女を許していませんから。

父親を奪ったあの女、出来る事ならこの手で復讐したかったです。

同じように殴って、刺して、もう一度轢いて、頭を蹴りつけてやりたい。

まあそんな事を言ってももうしょうがないし、父も母も望んでいないでしょうしね。


ただ、1つだけ気になるのは一緒に行った映画館ですね。

あの映画館は既に廃業していたんです。

なのにあの女は映画を楽しんでいるようでした。

そして急に青ざめて走り出した。

あの女は一体あの映画館で何を見ていたのでしょうか?

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