表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/68

第十八話 砂嵐

「先輩、すみませんがこの書き込みを見てもらえますか?」


部下が俺の所に持ってきた1枚の紙、そこにはチャットか何かの書き込みが印刷されていた。




今ってさ、テレビ放送が終わっても何かしらの映像出てるじゃん?

カラフルな画面でさ、音も局によっては鳴ったり鳴らなかったりするよね?

じつはそれってデジタル放送になってからって知ってた?

その前は砂嵐って呼ばれてるザーって音と白黒のノイズみたいな映像が流れてたんだ

それが子供の頃怖くて怖くてしょうがなかった

1日の終わりを感じさせるのもだけど、何か時々映っちゃいけないモノが映ってる気がして

しかも1回だけ、気のせいかもしれないけど、人の顔が映った事があった

何言ってるかまでは分かんなかったけど、口っぽい場所が動いていたから何か言ってたんだと思う

もし誰かこの書き込みを見てる人がいたら情報が欲しい

ノストラダムスの大予言が流行ってたからたぶん1999年の夏頃だと思う

見てる人いたらよろしく

あ、ちなみにその頃居たのは九州ね



なら俺見てたよ

友達も見たって言ってた

でも見た人物が俺も友達も別人だったんだ

俺が見たのは髪の毛がとんがっている感じの人の顔

友達が見たのは長髪の女性、しかも全身映ってた

何も喋ってなかった、ただ映ってるだけ



それなら俺も見たな

俺は昔の3Dゲーム出たての頃のカクカクした人だった

その人がくるくる回ってた

5秒くらいで消えたけど、あれなんだったんだろう?



そんなにみんな違うの!?

僕が見たのは男の人、たぶん

良く分からないけど車を運転してたよ

そのまま画面奥に消えていった

もしかして放送局事に違う映像流して実験してたとか?



私が見たのも違う

あれはたぶん子供だった

お母さんって言ってた気がする

気のせいだと思ってたけど、本当だったの?



ウソつくなよ

あのとき流れたのはボウシ被ったおっさんだ

録画してるから動画サイトに投稿してやろうか



見せて!


見たい!


お願い!


しょーがねーな、1時間待て


ありがとう!!


ほらよ、これだろ


ああこれだ、これだよ俺が見たの!

やっと見つけた、お前か




俺が目を通している横で部下が説明を続けた。


「この書き込みの後動画を投稿した男性が刺殺体になって発見されました。奇妙な事にこのチャットルームの書き込みは殺された男性以外全て同じ場所から書き込まれていました。同一のネットカフェなのですが、おかしいんです。」


何がと聞くと少し怯えたような表情で部下が続けた。


「この書き込みのあった時間、該当のネットカフェは休みで客は1人も入っていませんでした。電気系統のトラブルでパソコンも使えなかったんです。だから、書き込み出来るはずがないんです。」


なるほど、確かにおかしいな。

他に情報は?と聞くと部下からよりおかしな報告を聞く事になった。


「被害者は過去にいじめで人を自殺に追い込んでいます。自殺した少年が死ぬ直前まで一緒にいたのが被害者で、彼の家から帰る途中の廃工場で首をつりました。

そして現場にも不可解な点がありました。被害者以外の痕跡が何一つ見つからなかったのです。凶器の包丁は彼に刺さったままでしたが、それにすら何も残っていませんでした。」


どういう事だ?

自殺した少年の関係者が復讐で殺したのかと思ったが、その割には手が込んでる。

部下はさらに続ける。


「被害者は両親と同居していて、被害者を見つけたのもこの2人です。起きてこないのを不審に思い息子の部屋を開けるとそこには冷たくなった息子がいた。

これも妙で、被害者は全身を数十か所も刺されていたのに両親は物音一つ聞いていません。しかも犯人が逃げたと思われた窓には鍵、玄関も鍵がかかっていたそうです。」


まるでオカルトだなと俺が茶化そうとして顔を上げるとそこには青ざめた部下の顔があった。

ふるえる口で報告を続ける。


「一番おかしな点は被害者のパソコンです。モニターには砂嵐の映像が映っていて、その中には嬉しそうに笑う少年の顔が浮かび上がっていたそうです。」


本当にオカルトだったか。

まあでも面白おかしい記事にはなりそうだ。

書くんだろうと聞くと、無言でスマホを見せられた。

そこには砂嵐が映っていた。

よく見ると何かが浮かび上がってくる。

それは少年の顔のように見えた。

俺が無言で画面を見ていると、部下がポツリと言った。


「私も殺されるんでしょうか・・・」


俺はただ部下を見つめる事しか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ