第5話 ダンジョンっ!! ってか廃墟?
松明を持って森の中を歩く。俺ではない。
ゲームの中のキャラクター。彼が森の中を歩いている。
幸いには明りを付けても敵は来ない。
昼に会ったモンスター達はどうやら夜行性ではないようだ。
しかし夜行性のモンスター。それに出会ってしまったら。
「そうなると戦闘かぁ」
幸いにもこのゲームは2つの手で2つのアイテムを持てる。
つまり片方に松明。もう片方に武器を持つ事が可能なのだ。
しかし。
「包丁入れても駄目だったんだよなぁ」
もしや武器になるか? っと思って入れた包丁は却下された。
ゲーム内には肉切り包丁という武器があったからイケると判断したが、しかしあくまでそれはそれ。
ただの包丁では駄目なようだ。
「融通利かないゲームだなぁ」
包丁でも駄目という事は他も当然のように駄目だった。
つまりしっかり「その形」で無いと却下されると言う事。つまり剣は剣。盾は盾だ。
この現代社会で短剣やロングソード、クロスボウや弓なんて……。
「手に入らないよなぁ」
そんな訳で素手一本。拳一つで勝負する。
セスタスという素手専用の武器もあるらしいが、そんな物用意出来る訳がなかった。
あ、斧ならどうだ? そうだ斧だっ!! 斧なら使える筈でっ!!
よしそうと決まったら明日っ!!
◇ ◇ ◇
斧、安い奴でも3500円だった。今ある現金が500円。
斧なんて買える訳が無かった。
そんな訳で探索を再開する。幸いにも死なない限りはその場で再開出来るようだ。
常にその場に居て朝になったら殺されてる。なんて事になってなくて本当に良かった。
俺は夜食の生米をむさぼりながらゲームを再開する。夜プレイしているのでもちろん画面は夜だ。
もちろん……。もちろん? 感覚がおかしくなってるけど夜になったら、夜になるゲーム……。
ああ意外とあるか? でも骨太アクションでそれはマズいよなぁ。
ともかく前に進む。裸足で夜の闇を進む。
松明の火がバチバチと音を立てて、なんだかゲームの雰囲気を暗く怪しいものにしている。
いや実際暗くて怪しいのだが。
「んん? アレは?」
しばらく進んで。先に何かある。
「ああぁぁ……」
思いがけず溜息が出る。このゲームを始めてしばらく。
やっと人工物を目にする事が出来るからだ。
今までずっと森。見渡す限りの森だった。
それが今になり、やっと人の手が加わった物を拝めるのである。
「ここまで長かったなぁ」
ゲームが始まって今まで一体の敵も倒す事が出来ず森を彷徨っていた。
だがここになって初めて「ダンジョン」を見つけた。
本来ならこんなゲームすぐワゴン送りだろう。だがこんなゲーム、ワゴンでも手に入らない。
クソゲーだが貴重。だったら。
俺だけが出来るたった1つのゲーム。そう考えると、興味出るじゃないか。
「さて、このダンジョンはっと」
松明を照らし、ダンジョン。いやこれは廃墟か?
廃墟の中を歩く。
見渡す限りの、廃墟。崩れた建物。人の気配はぁ――。まったく無い。
歩く最中キャラが小石を蹴る。
コンコンと音を立てながらその小石は壊れた石畳の上を滑りながら草の地面に落ちる。
相変わらずリアルな表現。表現……。これは本当に表現なのだろうか。
考えるが結論が出ない。それなら進むしかない。
自然物の森と違い、火で照らされた廃墟は先程より怪しく、怪奇的に揺らめいていた。
歩く。歩く。歩く。歩いて。
何も無い。
見渡す限りの廃墟。もうそれしか言い表す言葉がない。
そんな廃墟を。歩く歩く。歩き続ける。
それしか出来る事が無いのでそれしかやる事がない。
もしかしたらこのままなんじゃ。
そう思い始めた頃。
「うおっ」
突如、大きな剣が刺さった鎧を見つけた。
鎧は跪いたような状況でその場に佇み、動く気配は無い。
「これは……。なんだ?」
分からない。分からない、が。
「近づいてみるかぁ」
なんだかちょっと楽しくなってきた。
もしかしてこの鎧から装備をはぎ取れる。なんて事あったりして。
ん? あれ? ゲームキャラが勝手に近づいて。
なんか、鎧から剣を……。引き抜いている。全自動で……。ムービーシーンか?
おお、これはもしや剣入手イベントかっ!? や、やっと武器が手に入るっ!! これでっ!!
アレ? 剣は取れたけど。
あの鎧。なんか。
動きだしてない?
あ、あ、あ。
周囲が白いモヤで覆われて……。
うわ。あ――。
これ、ボスです……。




