第22話 面接面接っ!! これで異世界就職、だっ!!
「では英雄様」
はい。英雄様です。なんでしょか、なんでしょか。
「貴方様は」
「貴方様は「生きて」いらっしゃいますか? はいかいいえでお願いします」
ここははい。だから礼を1回。って訳でコントローラーを操作して一礼
「答えたっ!!」
「まずは生きているって事は確認出来たねお姉ちゃん」
う――ん。普通に受け答えしてる。やっぱり彼女達は生きてるのか?
なんというか。やっぱりエンデール内の3D空間と比べたら浮いてる感じ。
あからさまに「人」だもんね。その質感。顔の表情。衣服のしわが擦れる表現。
唇の動き。唾液でヌメる舌の表現すら完璧に表現している。
実写みたいじゃない。もうこれは完全に実写。
実写の中の人物が3D空間の中で座りながら、ゲームキャラ越しに自分と対話している。
本当に、そうとしか思えないんだよな。
「ともかく英雄様は生きていらっしゃる。だがなぜ声が出せないのだ?」
大きい方と小さい方。
キツめな表情をした金髪の美人さんがたぶん姉。賢そうな青髪の子供がたぶん妹。
どちらも髪色が違う。どっちかの両親が金だったり青だったりしたのかな?
彼女達はどういうバックボーンでここに来たのだろうか。
騎士の一族だとか言ってたけど。騎士って? うーん聞きたい事は沢山ある。
でもまぁ。
何も言えないから何も聞けないだけど。
「英雄様のご様子はまるで、何かに操られているよう……。もしやこれは英雄様の魔法で、本体はどこかにいらっしゃるのでは?」
むむっ!! 良い線言ってると思うっ!! そうそう、いや、そうか? 魔法、魔法……。
うーん。魔法で、合ってるかな――。
「英雄様、どうですか? やはり貴方様は何らかの理由で自由が……」
「そうなのですか?」
まぁ、そんな感じで良いかな。ともかく一礼を、っと。
「やはりそうなのかっ!!」
大きい方の彼女は妹の質問に声を上げるだけのBOTみたいになってる。
きっと戦闘担当とかそういう感じだったのだろう。
見た感じこれといった武具は持ってない。どこかで落としたのか……。
ともかく武装していない彼女はこの場では無能にならざる得ないのだろう。
そういう面で智代さんに通じてちょっと悲しくなる。
平和は良いけどそれで困る人も居るって事だなぁ。世の中ままらないもんだ。
おっと、あまり思考に嵌っていきすぎか。ともかく彼女達の会話に集中しないと。
「やはり召喚の儀式が不安定だったから英雄様にもそのしわ寄せが……。え、英雄様、不自由はありませんかっ!?」
不自由は……。まぁ幸い布団もあるし普通に、自由に動けるって言うか。
と、ともかくここは礼を2回してみよう。
「不自由はしてない? そう、なのですか?」
はいそうです不自由はしてません。だって自宅だし身内も近くに居るし。
これと言って不自由は何もありません。はい。
「こんなに不自由そうなのに……。やはりこれは魔法で作られた「ドール」のような物なのかも」
「何度でも復活していた。であれ理に適う。つまり英雄様は魔法使いなのですか?」
あ、また答える系? 魔法か――。
正直戦士ビルドで今までやってきたから魔法ビルドはあんまり興味無いのよね。
でも魔法使いって言われてるし……。う――ん。なら心機一転。魔法ビルドを組むってのも良いかもっ!!
ちょっと未練はあるけど――。ここは魔法使いって事でっ!!
ここは礼を1回だっ!!
「やはり、英雄様は魔法使いだったのですか」
「しかしそれにしてはこん棒を持っていたり、それっぽくはないが」
あ、そっか。俺は魔法使いでキャラは操り人形。つまり戦士系って事でも通るのかっ!!
よしなら魔法使い路線止め止めっ!! やっぱり戦士でイキま――すっ!!
う――ん、でもなぁ。 設定が現実的になっているなら、遠距離から魔法を撃つのも悪くないのでは?
えっと。今の経験値はどれくらいだ?
35万っ!! 結構溜めたな――。これならかなりビルドが限定出来るんじゃないか?
なら魔法を……。 んん? いや、そもそも。
魔法売ってくれるNPCどこ?
あ。
ああ……。そっか。うん。
はい。戦士ビルド一択です……。たははー。選択肢が無かった。
ここにはアイテム商人も魔法売ってくれる人も、誰も居ない。全てが現地調達。
そんな状況で魔法ビルドなんて……。自殺するようなものだ。
「ともかく」
「英雄様は魔法使いで、立っているこの方は英雄様のあやつり人形。そういう事なんだと思います」
「なるほどな。だから自由に発言も出来ず、動きもぎこちなかったのか」
「やはり不完全な召喚だった……。そしてこの空間は恐らく英雄様の魔法によるもので」
「なるほど……。あの立っている少女といい部屋の質感といい。「作り物」のよう」
「そう、思っていたのだ」
「なるほどなるほど……」
「これが異世界の魔法……。空間を作り出す、そんな事が……」
「これが英雄の力……。ふむふむ」
なんだか知らないけど納得する彼女達。俺はまったく未だどういう事か理解してないんだけど。
まぁ推測は出来る。でもこれが本当に合ってるかは……。でも推測として。
つまり彼女達は。
俺と間違えて、ゲームキャラを召喚してしまった。
ってコト?
むぅ……? いやそもそも召喚って……。
何ですかそれは。いや、そもそも失敗してるんだけど。
う、う――ん。どういう事なんだか。
「英雄様、もう1つ。質問は良いでしょうか」
はい。何でしょうか? まぁ可能な限り答えますけど。
「その……」
「英雄様は……」
「本来なら、我らの願いを聞いてくださるまでその……。元の世界には帰れない」
あっ。
「そんな、習わしでした。しかし貴方は今恐らく元の世界に居る」
「本来であれば英雄様は我らの世界に囚われ、望郷の意思から我々に協力をしてくださいました」
「しかし」
「貴方様は、それがない。貴方様は自由です。つまり」
いつでも「止められる」
「貴方様は我々に縛られる理由がない。ならば、貴方様は「英雄」を辞退する事も容易なのです」
そうだよな。だって俺はここに居るんだから。
「しかし」
しかし?
「しかし、今まで儀によって選ばれた英雄がその道に外れた事は一度もありません」
「英雄は、やはり英雄だった」
「召喚された英雄は、真の意味で、まことの英雄だった」
「今回は……。不幸な事故で貴方様は分離してしまいました」
「しかし、しかしそれでも……」
小さい方の子が手を震わせている。きっと、緊張しているんだろう。
そうだよな。事情は分からないけど。きっと彼女達はそれに賭けていた筈で。
なのにその賭けていた存在が……。 俺だって同じ状況なら聞きたい。
「それでも……」
彼女が聞きたい事は。
「それでも我らの世界の為に、力を尽くしてくださいますか?」
そんなところ、だろうねぇ。
神妙な面持ち。不安なそうな表情でこちらを見る2人。
正直なところ、まだゲームなんじゃって意識が抜けない。当たり前だ。
誰がこんな事を信じろって言うんだ。
いや、まだよく分かってない自分が居る。状況があまりにもおかしい。
これで実際に異世界に召喚されているなら、信じる事も出来ただろう。
だから、今の状況に未だ乗り切れない。だって俺はここに居るのだから。
何のしがらみもない。彼女達に協力する理由なんて何処にも無い。
このまま全てを無かった事にする事も出来る。
でも。
そうであるならこそ。
良いんじゃないか?
ここは……。
そう、俺は……。
そうして俺は。
彼女達に、一礼を返した。
それ以上は繰り返さない。
それを見る2人。その表情は喜びなのか。それとも疑問なのか。
微妙な顔でこちらを見る。
そうだろう。逃げ場のある奴の言葉など。
それでも。
「ありがとう、ございます……。英雄様」
それでも期待しなきゃならない。
ああ、なんとも妙な状況だ。
逃げ道がある異世界の勇者なんかに期待しなきゃならないなんて。
でもまぁ。グ――――――――。
あっ。
「あっ」
「あっ」
「あっ」
大きい方の彼女のお腹が鳴った。
えっと。
そう言えば昨日買った分のご飯が残ってるか。
よし。
アレだ。
ご飯、食べる?




