Episode 3
ユキは青空を見上げ、口元をほころばせた。
「今日は……プールに行こう」
そう呟き、休養と気分転換を求めて足を進める。
念のためAIを連れていたが、朝のうちは何も起こらないだろうと楽観していた。
プールに着くと、そこは思ったより閑散としており、大人が数人いるだけだった。
ユキはロッカールームで着替えを済ませると、迷わず水の中へ飛び込んだ。
まだ子供でありながら、彼女は泳ぎに自信があった。
「お姉ちゃんたちにはちゃんと伝えてあるし、平気だよね」
今朝、メッセージで「今日は一人でプールに行く」と知らせてある。
姉たちが自分のことを守れるのをユキは知っていたので、不安はなかった。
飛び込み、泳ぎ、潜水の練習まで、夢中になって楽しむ。
水しぶきと笑い声が響く中――。
ゴゴゴゴッ……!
突然、大地が激しく揺れた。
「じ、地震!?」
ユキは慌てて水から飛び出した。
一瞬、怪獣の襲撃かと構えたが、ただの地震だった。
建物が軋みを上げる中、ロッカーへ駆け戻り、そのまま群衆と一緒に屋外へ逃げ出した。
――そして、夜。
甘く、しかし不吉な旋律が辺りに響き渡った。
まるで悪魔を呼び寄せるかのような旋律が。
ユキの目の前に、古びた鎧をまとった霊が姿を現した。
(あれは……どの武者霊? 新選組? 天草? それとも浪人? でも、どれも敵意を持つはずない……。じゃあ、これはいったい――?)
答えの代わりに、霊は巨大な刀を振り下ろした。
一撃で建物が斬り裂かれ、ユキは紙一重で回避する。
「くっ……!」
ユキは光の槍を呼び出し、反撃する。
しかし数度の斬撃で槍は粉々に砕け散った。
「龍棺!」
彼女は咄嗟に封印術を放ち、霊を一時的に拘束する。
だがすぐに鎧の隙間から魔力が爆発し、封印は破られてしまう。
魔力をまとった剣が振り下ろされる。
ユキは杖でそれを受け止めた。
すると杖は光に包まれ、剣へと姿を変える。
「はぁっ!」
剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。
ユキは剣術の知識を持たなかったが、AIが動きを補助し、刀身は自動で敵の斬撃を受け流し、反撃してくれる。
「ユキ、今のうちに魔法を!」
AIの声が響く。ユキは力強く頷いた。
「――七光槍!」
七本の光の槍が宙に出現し、一直線に霊を貫いた。
「ぎゃあああああっ!」
断末魔の叫びと共に、霊は消滅する。
止めを刺したのは、AIの導きによる一撃だった。
ユキは肩で息をしながら、夜空を見上げた。
「……やっぱり、今日は“普通の日”じゃなかった、か」




