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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第2章 学園編(一年生)
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13 エルメラド王立学園

 懐かしい制服に袖を通しながら、ここから激動の時代に突入することを再認識し、気を引き締める。

 十五歳になった私は、ついにエルメラド王立学園へ通うこととなった。

 あの学園には宮廷図書館に劣らず、豊富な資料と優秀な指導者たちが名を連ねている。今回の私も、再びエルメラド王立学園魔法科への入学を決めたのだった。


 そして、以前と同じく、エルも騎士科への入学を果たしている。今回は既に宮廷騎士団へ出入りし、実力も知られているためか、むしろ学園側から打診があったようだった。同学年になるアルランデ様も騎士科だそうだ。

 私と同じ魔法科には、あのパーティー以降、たまに話すようになったアミリア様も在籍している。なぜか、あのパーティー以来、ガザーク家のお茶会に行くとよく会うんだよね。

 若干、出会いのタイミングや関係性が変わっているところもあるが、概ね時間が巻き戻る前と同じ運命を辿っているようだった。


 魔王が現れるまで、あと五年ほど。

 ヴァン様の残した大魔法については、ディーン様やファブラス家の魔導士たちと協力し、消費する魔力を減らすべく改良が施されている。

 また、それとは別に効果的な魔法が編み出せないものかと、日々研究を続けていた。

 二度目の学生生活だが、その先にあるものを忘れてはならない。


「そうだ、これも持っていかないと」


 鍵付きの引き出しから、エメラルドグリーンの宝石がついたペンダントを取り出す。

 グランディール様からいただいた、守護の魔法が込められたお守り。

 なくさないよう、学園に持っていく荷物の中に注意して詰め込む。


 忘れ物がないか、リーファにも手伝ってもらいながら何度もチェックした。

 旅立つ準備を終え玄関先に向かうと、紫色の短髪が目に入る。

 以前の私には無縁だったけど、学園には従者を何人か連れて行ける。ぞろぞろ大人数というわけにはいかないんだけど、身の回りのお世話をしてもらうためだ。

 連れて行かないというのもまずいらしく、身支度を手伝ってくれるメイドのリーファと、料理担当のレオについてきてもらうことになった。


「リーファは分かるけど、アタシも一緒に行っていいのかしら?」

「私は大歓迎だよ。ロベルトも、リンダも推薦してくれたんでしょう?」

「ええ、経験を積むいい機会だって」


 屋敷の皆もよく分かっている通り、私はよく食べる。一日三食では足りないこともしばしば。魔法を使った日は尚更だ。

 以前の私は、学園でお腹が空いて我慢できなくなると、厨房を借りていた。朝昼夕の時間帯であれば料理人が待機しているが、時間外は自分で何とかしなければならない。

 おかげで人並みには料理スキルも上がったが、先のことはお養父様にもお見通しだったようで。料理人はうちから一人連れて行くよう言われてしまった。


 あれからファブラス家の料理人も増えてきて、食事事情は改善していた。初期の頃は大惨事だったからね。

 ロベルト、リンダ、レオの三人で回していた頃と比べて、働きやすい職場になってきたと思う。この三人が途中で辞めなくてよかった。


 初期メンバーの中でも最年少のレオに今回同行してもらうのは、ロベルトとリンダの強い希望あってのことだった。

 屋敷に来てからのレオは、面接の時の取っ付きにくさが薄れ、自分を出せるようになっていた。

 人一倍熱心に働いてくれるし、メキメキ料理の腕も上がっている。毎日のように食べている私が言うのだから間違いない。

 そんなレオは、教えがいがあるとロベルトとリンダから期待されていた。


 そんなところに舞い込んできた、私に同行してくれる料理人の募集。

 学園で刺激を受けることも修行である、と二人はレオのことを後押ししたのだった。


「お嬢様がいいなら、アタシは何も言わないわ。これからもアタシの料理を食べてもらえるなら、それ以上に望むものはないもの」


 うう、レオさん何ていい人!

 そんなこと言われると、しょっちゅう食べたいって催促してしまいそうだ。家じゃないんだから、学園では気をつけないとね。


 ちなみに、私の家庭教師をしてくれていたイディオは、お養父様のサポートをしなければならないことと、生活力がほぼないため屋敷に残る。

 いつもは寝坊してきたりとか、遅刻したりとかもあるんだけど、朝早いにも関わらず今日は時間通りに見送りに来てくれた。


「お嬢様、夏には戻ってくるんですよ? 遊びに行くのもいいですけど、顔はちゃんと見せにきてくださいね?」


 いつの間にか親みたいなこと言うようになったね。それだけ親睦が深まったってことなら嬉しい。


「長期の休みには戻ってくるから、イディオも体調には気をつけてね」

「努力します」


 徹夜して倒れてるところを何度か見かけてるから、あまり無理はしないでほしい。注意してもまたやるんだもんな。


 もちろん、私の両親も見送りに来てくれた。体に気をつけてとか、大体は私の身を案じることを言われたけど、学園への入学は誰より喜んでくれた。


 お養父様とも、しばらくはお別れだ。ガザーク家から手紙が来ても、私が出ることは難しくなってしまうので、どうにか頑張って回避してもらいたい。


「よい学園生活になるよう祈っています」

「ありがとうございます。では、行ってきます!」


 お養父様から激励の言葉ももらい、いよいよ出発だ。

 今度こそ勝たなくては、魔王に。滅びの運命に。

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