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神に愛された宮廷魔導士  作者: 桜花シキ
第2章 学園編(一年生)
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13 エルメラド王立学園2

 エルメラド王立学園は四年制だ。

 一年生から三年生までは各科ごとに学び、必要な知識や技術を身に付ける。四年生は集大成を見せる時期で、論文を書いたり、身に付けた魔法や武術をお披露目したりする。それが進路にも関わってくるので、それまで手を抜いていた学生は躍起になっていることもしばしば。

 ちょうどグランディール様とリトランデ様は四年生なので忙しいだろう。二人とも進路の心配はなさそうだが、グランディール様は次期国王、リトランデ様はその側近として、この先も大変な未来が待ち受けていることに違いはない。


 学園に通っていた頃は、魔王が現れて世界が崩壊するなど考えもしなかった。グランディール様たちがエルメラド王国を支えていくのなら、この平和は続いていくものだと思っていた。

 今度こそ、前回叶わなかったことを現実にする。グランディール様が治める国を、この目で見たい。大切な人たちの住むこの国を守りたい。

 以前よりも、自分に関わる人たちは増えた。その分、守りたいものも多くなった。魔王から世界を守る。その思いが折れてしまうことはないかと恐れていたこともあったが、日に日に意志は固くなっていた。


 私たちを乗せた馬車は王都に入り、学園の寮の前で停まった。

 エルメラド王立学園は全寮制なので、特別な理由がない限り学園の敷地からほとんど出ることはない。息が詰まるかと思えば、私にとってはそうでもなくて。元々、それほど頻繁に外出するほうではなく、ファブラス家の屋敷にいた時も他の魔導士たちと研究室に籠っていた。生活に必要な施設が一ヶ所に集まっているなら、それに越したことはない。


 ひとまず、これからしばらく使うことになる寮の自室に荷物を運ぶ。入学式は明日なので、今日は少しゆっくりできるだろう。

 寮生活は以前と変わらないが、今回は貴族たちが使用する建物に割り振られている。前回は一般寮だったから実際に中を見るのは初めてだ。食堂がどこにあるのかとか、あとで少し見て回ろうか。

 学生寮は、貴族と一般、学年、性別ごとに分けられている。分けなくてもいいんじゃないかと思ったこともあるが、色々とトラブルが起こるのを避けるためなんだそうだ。

 一緒に来てもらった従者に関しては、自室で一緒に生活してもいいし、別棟にある使用人室を使ってもいい。相談した結果、リーファは私と同室、レオは使用人室を使うということになった。レオとは少し場所が離れてしまうが、お腹が空いたら遠慮せずいつでも訪ねてきていいと承諾をもらった。


「こちらの寮には、アミリア様もいらっしゃるのですよね?」


 荷物の片づけを手伝ってくれていたリーファが、手を止めずに聞いてくる。


「そうだね。学年も一緒だし、どこの部屋かは分からないけど、この建物にはいるんじゃないかな?」

「あのご令嬢に関してはあまりいい噂を聞きません。お嬢様もパーティーで絡まれたとお聞きしていますし」

「どんな噂かは知らないけど、普通の女の子だよ。心配するほどのことじゃないと思うけど」

「お嬢様は誰に対してもそうですからね‥‥‥まぁ、何かある前に対処できるよう、私が目を光らせておけば大丈夫でしょうか。エル様も一緒なら心強かったのですが」


 以前は一般寮の方で一緒だったエルとは、今回分かれてしまった。すれ違いも多くなるだろうが、授業終わりの休み時間には会うこともできるだろう。


「あれ、リーファってエルと会ったことあったっけ?」

「主人の交友関係を把握するのも仕事ですので。彼女なら、お嬢様をお任せしても大丈夫だと判断いたしました。共にお嬢様をお守りすべく定期連絡を……オホン、何でもありません」

「そ、そうなんだ‥‥‥」


 当然のように聞いていたが、リーファがエルと話しているところは見たことがない。

 自分の知らないところで二人は意気投合していたらしい。



 荷物も片付け終わり、さて寮内を少し見て回ろうかと思っていると、コンコンコンとやや強めなノック音が響いた。


「私ですわよ! いるのは分かっていますわ!!」

「アミリア様、ですか?」


 あちらから訪ねてきたことにびっくりしつつも、応じないわけにはいかないので扉を開ける。

 そこには、見間違えるはずもない。従者を引き連れたアミリア様がドンと構えていた。


「私が直々に挨拶に来て差し上げたのだから、感謝なさい」

「あ、ありがとうございます。申し訳ありません、こちらから伺うべきところを……」

「べ、別に! ちょっと早く着きすぎて、部屋にずっといるのも退屈なので散歩していたついでですわ。決して、あなたに会いにくるのが目的だったわけではありませんのよ!?」


 若干顔を赤らめながら、ここに来た理由を並べ立てる。怒っているわけではないみたいだね。


「ちょうど、アミリア様もここにいるんじゃないかと話していたところだったんです。どこのお部屋ですか?」

「隣の部屋ですわ」

「お隣だったんですね」

「ふふん、この私と部屋が隣同士なんて、そんな栄誉なかなかなくてよ?」


 それを聞いて、リーファは目を逸らしながら口に手を当てていた。幸い、先ほどの会話はアミリア様には聞こえてなかったみたいだね。この部屋、防音もしっかりしてそうだもん。

 でも、言葉には気をつけないとね。余計なトラブルを生み出しかねない。


「お嬢様、あまりそういうことを言われますと、またリトランデ様に叱られますよ」

「わ、分かってますわよ!」


 アミリア様の物言いに、従者の女性が口を挟む。

 以前、彼女と一緒にいた従者たちは皆びくびくしていたが、今回は意見できるようだ。いつクビにされるかという恐怖がなくなったためだろう。

 今回の彼女は、簡単に人を切り捨てたりしなくなった。大まかな性格こそ変わらないものの、従者たちとの関係も良好なようである。

 その様子を見ながら、リーファも噂と違うなと思ったのか、不思議そうな顔をしていた。


「お嬢様、ここに来たのは挨拶だけが目的ではありませんよね?」

「そうでしたわね。よくお聞きなさい。何も分からないでしょうから、私が直々にこの寮の中を案内して差し上げますわ」


 任せなさい、とアミリア様は胸を張る。

 こちらの返答を聞く前に、ずんずん廊下を進んでいってしまった。


「自信たっぷりですけど、お嬢様も先ほど見て回ったばかりなので。あなたのことをどうしても案内したいらしく。申し訳ありませんが、少し付き合ってください」


 こそっと耳打ちして、従者の女性は苦笑した。私とリーファは顔を見合わせてから頷く。

 それだけ言うと、従者の女性はアミリア様の傍に戻っていった。アミリア様の耳元でも、何か囁いているようだ。


「一度見ただけで大丈夫ですか?」

「馬鹿にしないで。完璧に覚えているわ。……何年もいたんだもの」

「え?」

「あなたは知らなくていいことよ」


 アミリア様とのやり取りで、従者の女性が首を傾げる。内容は聞こえなかったけど、何を話していたんだろう?

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