旅立ち
冒険者ランクがAに上がり、家に戻ったあと陰月のことを話した。
「俺にはもう1人仲間がいる。俺がこっちの世界にやってきた時から一緒にいる仲間がな。」
「こっちの世界?」
「ああ。話してなかったな俺はこの世界の人間じゃない。異世界から転移させられたんだ。」
「そうだったんですか!?確かに、そうでもないとあんなに強いのは説明がつきまんけど。」
「そうなんだよ。まあ、元の世界に帰るつもりもないけどな。それと、仲間の話だがな俺をこの世界に連れてきた神様の妹だ。」
「神の妹!?それって神様ですよね?」
「そうだな。」
「そんなさらっと。」
俺達がこんな話をしていると陰月に話しかけられた。
「私の認識阻害は人間だけだけど任意で見えるようになれるよ?」
「へ?陰月って認識阻害でほかの人には見えなかったの?」
「そうだけど。言わなかったっけ?」
「聞いてない。それに見えるようになるには俺が心から信頼しなきゃいけないんじゃないのかよ?」
「それでも見えるようになるけど、櫂が心から信頼する人なんてこの世界にはいないと思う。」
「確かにそうかもしれないな。」
「でしょ?だから、私が認識阻害を切るの。」
「分かった。じゃあ、切ってくれ。」
「了解です!解除」
そう呟くとだんだん存在感が濃くなっていきほかの人にも認識できるぐらいまで濃くなった。それを見たマリージョとフィナは目を見開き驚いている。そして、陰月が話しかけた。
「こんばんわ。私は陰月。今は櫂の仲間。」
陰月は意味ありげな言い方をしたが、反応すると面倒くさそうだったので無視した。
「はっ!私はマリージョです。」
「わ、私はフィナと申します。」
マリージョとフィナは親元を離れたため名前しか名乗ってないが陰月は2人が王女だと知っている。何せ陰月はずっと俺と一緒にいたからな。
「2人ともよろしくね。」
「「よろしくお願います。」」
「動きが固いなぁ〜、もっと砕けた感じでいいよ。」
陰月は2人の動きが悪いことを指摘する。まあ、神と知った上でいつも通りの動きをしろという方が無理である。そして、俺は本題を切り出した。
「俺はそろそろ旅に出ようと思う。いろんな国を見て回りたいしな。」
「「私もついて行きます!」」
「いや、一応この国の王女なんだし置いていくつもりだぞ。」
「何でですか?王女なんて関係ないじゃないですか!」
「いや、これから何が起こるかわからないし戦闘できないやつは足で纏いなんだよ。」
「「それは...、そうかもしれませんけど寂しいじゃないですか!」」
彼女達は涙目で訴えてきたが、俺は連れていくつもりは毛頭なかった。安心させてやるためにこう言った。
「待っていてくれよ。俺は目の前で知り合いを失うのは嫌なんだよ。それに、俺には転移があるからすぐに戻ってこれる。」
「「それでも、それでも嫌なんです。」」
「じょあ、1週間に1回は出来るだけ帰ってくる。これで分かってくれ。」
「わ、分かりました」
彼女達は渋々了承してくれた。
「いつ行くのですか?」
「明日の午後かな。午前に挨拶して回る。まあ、挨拶って言ってサラと王様ぐらいかな。」
「そうですか。それじゃあ、明日は一緒に行きますから。」
「ああ、分かったよ。じゃあ、明日はみんなで行こうか。」
「はい!」
「それじゃあ、明日も早いし寝ようか。」
「分かりました。」
そういって全員自分の部屋に戻って行った。それから数分後マリージョとフィナが俺の部屋に来て、「明日からしばらく会えないですから」と、言って布団に潜り込んできた。俺は内心しょうがない奴らだなと思いながら黙って受け入れた。それから、俺はクエストで疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
次の日の朝、俺が起きた頃には2人とも起きており朝ごはんも出来ていた。
「おはよう」
「「おはようございます」」
俺達は朝の挨拶をしてからごはんを食べた。食べ終わったあと、お茶を一杯ゆっくりと飲みそれから家を出た。まずはギルドだ。家から数分の距離にあるギルドに行きギルドマスターと会えるように受付嬢に頼んだ。
「すまんが、ギルドマスターと会いたいんだが。」
「分かりました。少々お待ちください。」
そう言うと受付嬢は直ぐに確認に行ってくれた。受付嬢は数十秒で帰ってきた。
「大丈夫だそうですよ。」
「分かった。マリージョ、フィナ行こうか。」
「「はい。」」
俺はふたりを連れて奥の執務室に入っていく。ドアを開くとサラが机に向かって書類を片付けていた。
「で、今日はどんな要件だ?」
サラは部屋に入ってきた俺に向かって聞いてきた。
「ああ、今日の午後にこの国を去って次の国に行こうかと思ってな。」
「そういうことか。で、この国に帰ってくるのか?」
「出来れば週1で帰ってくるつもりだ。」
「ふふっ、随分好意を持ってもらってるようだね。マリージョ、フィナ。」
「「はい!」」
いい返事をした彼女達。そして、俺はあることを思い出してサラに言った。
「サラ、俺がいない間彼女達のことを頼む。」
「任しておいてくれ。誰にも近づけはしない。」
「ありがとう。あと、俺の屋敷だがな好きに使ってくれて構わない。」
「好きにさせてもらうよ。」
「それじゃあ、よろしく頼む。」
そう言って執務室を後にした。それから王城に向かう。歩いていくつもりだったがめんどくさかったので魔法を使った。
「転移」
俺達は王城の彼女達の部屋に転移した。そして、そのぬいぐるみがたくさんある部屋出て王達のいる部屋に行った。ちなみに王たちの居場所はおれのサーチで確認済みだ。王達のいる部屋に入ると王様はすごく驚いていた。
「少しお話があるんですがよろしいですか?」
「あ、ああ、いいぞ」
「今日の午後にはこの国を出ようと思います。」
「急じゃな」
「ずっと思っていたことですし、他の国も見に行きたいですからね。」
「そうか、そうか。了解した。で、マリージョとフィナは連れていくのか?」
「いえ、この国に置いていくつもりですよ。どんな危険なことがあるかわかりませんからね。それに、俺はすぐに帰って来れますし。」
「そうじゃったな。気をつけていくのじゃぞ。」
「はい!」
「ああ、そうじゃった。報告が2つあるだ。」
「なんだ?」
「1つ目、7つの国に囲まれている森の中心で魔王が復活した。何百年ぶりじゃろうな。今のところは動く気配はないので大丈夫だろう。2つ目じゃが、帝国が勇者の召喚に成功した。それとのぉ、その召喚された人達は昔のお主と同じ格好をしていたらしいぞ。たしか、制服じゃったか?」
「同じ格好?俺と同じ学校から召喚されたのか?」
「多分そうじゃろうな。その中でも5人だけは飛び抜けていたらしい。」
「名前はわかるか?」
「分かるぞ。確かな、勇斗、麗、隆輝、柚香、麟だったはずだ。」
「そ、そうか。」
俺は親友の名前を出されて驚いた。
「おや、知り合いかい?」
「はい。親友たちです。」
「それは災難だったの。魔王に勝つと言っとるがまあ、無理じゃろうな。今回復活した魔王は今までの中で一番強いと予想されておるからの。」
「マジですか。そりゃ災難なことに。」
「助けてやらんのか?」
「求められたらたすけますけどまあ、来なければほっとくだけだ。」
「そうか。お主らしいの。」
「だろ。じゃあ、俺はこれで失礼する。」
「そうか。まあ、元気でやれよ。」
俺は手を挙げただけで、俺は部屋を出た。出たあと、王女たちの部屋に行き転移で家に戻った。
「それじゃあ、行ってくるよ。」
「「行ってらっしゃい!」」
俺は家を出て門まで転移で行きギルドカードを見せ門を出た。
これから向かうのはルガタノヤマタ国だ。ここは日本に食文化が似ており米がある。俺もそろそろ米が食べたいと思っていたのでちょうど良かった。そして、俺は国を目指して歩き出した。
やっとリーグランドを出ました。




