馬車の中
この話から新章、王都編となります。
まぁ、まだ王都には到着すらしてないのですが…
それぞれ王都へ引っ越す準備を終えた。
魔法で馬車を作り、召喚魔法で召喚した一角馬−ユニコーン−にそれを引かせ出発した。
その道中は王国魔法騎士団第伍番隊が警護してくれている。
俺はサイノン兄妹、オクマサ姉妹と同じ馬車に乗っている。
今回の件では生徒達には部活に所属している、していないに関わらず奇跡的に被害は無かった。
しかし親を亡くした生徒達は沢山いるのだ。
サイノン兄妹もオクマサ姉妹もその内に入っている。
無理もないが四人全員塞ぎ込んでいた。
特にオクマサ姉妹は深刻だ。
サイノン兄妹は母親が王都で仕事をしている。
つまり身寄りがまだあるのだ。
父親が亡くなってしまったのだから辛くない訳は無いがそれでもまだ母親が残っている。
それに対してオクマサ姉妹は両親共今回の件で亡くなってしまった。
しかも王都付近に住む身寄りがいないという事だ。
そういった子供達は村長のカーマとヨーダンブール校長が手分けして面倒を見る事となった。
彼等なりの贖罪のつもりなのだろう。
本人達が自ら言い出した事だった。
フムト フィルも金銭面で援助すると申し出ていたし、生活するのには困らないだろう。
しかし心に負った傷はそう簡単には癒えないのだ。
俺は子供達にどんな言葉をかければいいのか分からず馬車内に沈黙が流れていた。
その長い沈黙を破ったのはサマンサだった。
「ねぇ、先生。
先生のお父さんやお母さんはどこにいるの?」
あまり答えたくない質問だったが今曖昧な言葉を返したり嘘をついたりするのは憚られたので正直に答える。
「俺に両親はいないよ。
俺が物心つく前に死んでしまったらしい。」
「え?」
子供達4人が一斉にこちらを見る。
「だから俺は孤児院で育ったんだ。
その孤児院にも馴染めず兎に角早く独り立ちしたかった。
だからいっぱい勉強して飛び級で16才で学校を卒業して1人暮らしを始めたんだ。」
「寂しくなかったの?」
サマンサが俺に問いかける。
「どうだろう。
もしかしたら寂しかったのかもしれない。
当時は勉強や研究、発明等に夢中になって取り組んでいたけれど、それも今思えば寂しさを紛らわせる為にしていたのかもと自分でも思うよ。」
皆がまた押し黙ってしまった。
俺は頭を人差し指で掻きながら続けて言う。
「でもまぁ、今からあの時の生活に戻れと言われても無理だろうな。
お前達学校の生徒や村の人達と出会って人の温かさってのを知ってしまったからね。
恐らくもうあの孤独には堪えられないよ。」
「私達のせい?」
タバサが恐る恐るといった表情で尋ねる。
「違う、そうじゃない。お前達の“せい”じゃなくてお前達の“おかげ”だ。
お前達に人と人との繋がりの大切さを教えて貰ったんだ。
お前達には感謝しているし、お前達がいたから知らない土地でも寂しさを感じる事なく生活していく事が出来たんだよ。」
それを聞き終わった後、少しの間黙ってたサマンサとタバサが口を開いた。
「じゃあ私達も…
先生やディーテちゃんにアルフ兄ちゃん、それにぶちょー…科学部の皆がいるから寂しくない!!」
「うん。寂しくなんかない!!」
それは勿論強がりの面も多く含まれているのだろう。
しかし先程まで下を向いていた彼女達は少しだけ、でも確かに前を向いたのだ。
こんなどうしようもないと思っていた俺の生い立ちが彼女達を少しでも元気づける事が出来たのだと思うと、少しぐらいは意味がある人生だったのだと思うことが出来たのだった。




