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『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


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第六話:忍び寄る影と、父の誓い

「魔法……ですか?」


 俺は額から流れ落ちる汗をハンカチで拭いながら、なんとか言葉を振り絞った。


「はははは! 先生、魔法なんてのは王国のそれなりの貴族出身者でもなければ使えない代物ですよ。うちはしがない設計士の家系ですから、そんな高尚な力なんてあるわけが……」


 リナ先生は、隣に座るカイトをじっと見つめたまま、小さく呟いた。

「そう……かしら。だとしたら、私の見間違いなのかしら……」


 まずい。全く疑いが晴れていない。

 ノインのやつ、まさか学校で魔法を使ったんじゃないだろうな。俺が横目で睨むと、ノインはバツが悪そうに少し困った顔をして視線を泳がせた。


 その時、教室のドアが勢いよく開き、初老の男性教師が入ってきた。

「リナ先生、失礼。生徒の保護者から緊急のお電話です」

「あ、すぐ行きます!」


 リナ先生はこちらを向き、「カイト君の学校での生活に問題はありません。安心してくださいね」と付け加えると、「では、失礼します」と言い残して慌ただしく教室を出て行った。


「ふぅ……」


 心臓の音が廊下まで聞こえそうなほど激しく打っていた。安堵のため息が漏れる。


     ***


 学校からの帰り道。夕日に染まる通学路を歩きながら、俺はノインに魔法の件を問い詰めた。


「ノイン、学校で魔法を使ったり……してないよな?」

「う……ん」


 なんだ、その間は。

「隠し事は許さないぞ。ちゃんと話しなさい」


 俺は立ち止まり、膝をついてノインの目線に合わせて問いかけた。かつての軍師としての鋭い追及ではなく、一人の父親としての真剣な眼差しで。


「実は……」


 ノインは俯きながら、学校で起きた出来事をぽつりぽつりと話し始めた。


 数ヶ月前から学校で過ごしていると、時折、何か「嫌な気配」を感じるのだという。

 先日もグラウンドで遊んでいる時、ずっと自分を監視しているような視線を感じた。そして一昨日、放課後に忘れ物を取りに教室へ戻った時、事件は起きた。


「突然、黒い影に襲われたんだ。……体が勝手に動いて、反射的に防御魔法を使って……影は消えたけど、たまたま通りかかった先生に見られちゃったみたいで」


「なぜ黙ってたんだ?」


 俺の問いに、ノインはさらに深く顔を伏せた。

「パパを……心配させたくなかった。それに、もし騒ぎになったら、またパパが僕の前からいなくなっちゃうんじゃないかって、怖かったんだ……」


 小さな肩が震えていた。

 平和な日常を手に入れたからこそ、それを失う恐怖が、この小さな胸を支配していたのだ。


「……すまなかった」


 俺はノインを強く抱きしめた。カーディガンの柔らかい感触越しに、息子の温もりが伝わってくる。


「大丈夫だ。パパはいなくなったりしない。それにお前のことは、パパが絶対に、命に代えても守ってみせる」


「うん……パパ」


 ノインを抱きしめながら、俺の意識は「設計士」から「ヴェイル」へと切り替わっていた。


ノインを狙う黒い影。かつての魔王軍はここ絶界宮で俺とともに暮らしている。ならば考えられるのは……あの強欲な王の差し金か。それとも、和平を良しとしない人間側の過激派か。


(誰だろうと関係ない。この平穏を壊そうとするなら、俺が相手だ)


 たとえ「死んだはずの勇者」として再び剣を握ることになろうとも、構わない。

 夕闇が迫る通学路で、俺は静かに、しかし激しい怒りとともに自分自身に誓っていた。

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