表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺のオヤジが最強すぎて勇者を廃業したんだが ~最強の魔王を育て上げ、俺をバカにした世界に復讐しようと思う~』  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/159

第四話:疑惑の月光

かつて屈辱とともにくぐった王宮の門を、今は聖騎士ヴィンセントを従えてくぐる。

 謁見の間には、王と名だたる貴族たちが、救世主の再臨を待つかのように居並んでいた。


「勇者アステリオよ。よくぞ参った」


 王の言葉も、今の俺には半分も頭に入ってこない。思考を占めているのは、これからの惨劇と、自分という存在の矛盾だけだった。

 ヴィンセントが、周囲に見えないよう俺の背中を小突く。

「……おい、ちゃんと聞いているのか?」

「あ……ああ、大丈夫だ」


「アステリオよ。まずは北の山に出現したグリフォンと、魔族の軍勢を蹴散らしてまいれ」

「はっ」


 王の長々とした演説が終わった後、別室で派手な歓迎会が催された。

「アステリオよ、過去は水に流そう。これからは王国の誇りとして尽くしてくれ」

「身に余るお言葉です」


 俺は、ヴィンセントに事前に叩き込まれた定型文を、機械的に繰り返した。

 かつて俺を無能と嘲笑い、ケーキを切らせて喜んでいた貴族どもが、途端に尻尾を振って擦り寄ってくる。こいつらへの感情をとうに捨て去っていて正解だった。そうでなければ、その醜い身体をスポンジのように切り分けているところだ。

 唯一、ガルガンチュアだけは会場の端で俺を睨みつけている。それでいい。そうでなくては張り合いがない。


 ヴィンセントが酒の入ったグラスを二つ持ち、俺のもとへ歩み寄ってきた。

 一つを俺に渡し、カツンと小気味よい音を立ててグラスを重ねる。


「勇者アステリオに」

「聖騎士ヴィンセントに」


 お互い、中身を一気に飲み干した。

「……いつもの毒水(安酒)とは、味が違うな」

「当たり前だ」

 ヴィンセントが、悪戯っぽく笑った。


 ようやく喧騒から解放されたのは、日付が変わる頃だった。

 冷たい夜風に当たりながら、一人で家路につく。重い革靴の音が石畳に響く中、背後から聞き覚えのある声が突き刺さった。


「アステリオ!! ……あんた、どうするつもりなの?」


 振り返ると、そこにはイザベラが立っていた。

 いつもなら手放さないはずの魔導カメラも持たず、華やかなドレス姿のまま、射抜くような鋭い視線を俺に向けている。


 その目を見て、俺は直感した。

 この女は、気づいている。


 俺が魔王軍を操る「ヴェイル」であることも、ノインの正体も、そして俺がこの国に仕掛けようとしている復讐の全容も。

 「空気の読めないインフルエンサー」という仮面の下に隠されていた、真実を見抜く魔道士としての瞳が、俺の逃げ道を塞いでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ