アドヴェントス 王族行幸
白い馬車のバルーシュが教会の入り口まで進みます。玄関で止まると護衛騎士が小さなタラップを用意しました。
馬車のドアが開かれ、護衛騎士に手を取られエスコートされた大聖女様がタラップを降りて地面に降り立ちました。そして辺りを見渡し笑顔を振りまいています。それに応じて感嘆まじりの響めきが上がっている。
玄関では,タダイ神父が出て大聖女様に一言二言話をしてお迎えをしているのが見えました。やがて玄関の中へ入ります。
大聖女様がお出でになるなんて一大事。呆然と立ち尽くしていました。あっ、いけません。お茶ぐらい出さないと。
踵を返し慌てて教会の中に向かいます。中へ入るとロビーの壁に備え付けられている長椅子に大聖女アイリス様が座っていました。
「そっ、粗茶でございます」
よかったぁ。オーカーのベールを被りスモックを着た赤毛の獣人狼族の女の子がアイリス様にお茶をお出ししている。本日、来られる方々に出す赤甘茶を用意してあったんです。
この獣人狼族の子は姉のセリアンと二人,見習いとして聖教会へ入り、パラス教会にいるんです。ナイス! シュリンちゃん。
すぐにお茶を出してくれるなんて助かります。よく気の利くいい子なんです。
でも、よく見るとトレイが震えている。緊張で手が震えているに違いありません。がんばれ。
「あら、可愛い子」
アイリス様の顔が綻びます。
「貴女、お名前は?」
「………、シュッ………」
「シュ?」
「シユッ……シュリンって言います」
「良い,お名前ね」
「あっ、ありがとうございます」
ああ、お茶の乗るトレイの振れが大きくなってる。中身が溢れていないかな。それだけシュリンちゃんの緊張の度合いが上がるのがわかる。
アイリス様,早くトレイからお茶を取って飲んであげてください。お茶ガ溢れてしまいます。
「ねえ。シュリンちゃん?」
「はっ、はひ」
「ギュッてしていい?」
「⁈」
言うが早いか、アイリス様はシュリンちゃんに抱き寄せてしまう。
「………、ミギャァ」
シュリンちゃんの手が振り上げる。ジタバタと踠いてる。トレイが舞い、お茶の入ったカップが宙を舞う。
ヤァ。なんとか,私が飛びついて空中でキャッチ。事なきを得ましたが。ハァ、ハァ。
「うん、うん。この子の抱き心地良いわぁ。フカフカ。なんか、いい香りがする。お日様に当てて干した毛布みたい。ん〜、モフモフ!」
我関せずと、アイリス様は恍惚として吐息まじりに言葉を呟いています。
「ねえ、トゥーリィ。サマンサには聞いていたんだけど本当にこの娘良いわね。ウチにお持ち帰りして良いかなあ」
「だっ,ダメですって。シュリンちゃんはウチの娘です」
思わず、お客様に大声を出してしまいました。
「ざ〜んねん」
アイリス様、ちっとも残念そうな顔していませんし。
話の中のサマンサは聖教会本部のレセプションにいるシスターなんです。彼女も大の可愛いもの好き,モフモフ大好きなんです。アイリス様、彼女から色々と話を聞いていたんでしょうね。
「じゃあさ。私の、お付きの侍女にしちゃダメかな?」
「アイリス様には侍女としてイルマ様がおられるではないですか」
「いいじゃない。もう一人、増やしたって」
「私が怒られます。アイリス様も叱られますよ。勝手な事するなって」
「ちぇ〜」
「ちぇ〜,じゃないです。お茶の代わりを出しますので、お座りになって待っていてください」
「はぁ〜い」
人々の前では清廉、高潔な聖女様なんですけど、ウチに入って人目が無ければ、こんなものなんですね。ぜんぜん違う。現実って怖い。
私は奥へ戻り、厨房で新しいお茶をたてて、アイリス様へおもちしました。
かのシュリンはというと、椅子に隠れて、怯えた目をしてこちらをみています。怖かったんでしょうね。
聖教会の頂点にいる大聖女様から、いきなりのハグ。堪らなかったんでしょうね。
大丈夫だよ。シュリンちゃん。取って食われるような事ないから………、多分。
タッタッタ・ターン
私の耳に,玄関を叩く音が入って来ました。なんでしょう。どなたかお出でになったのでしょうか。
「はい,少し、お待ちを…………」
私は急ぎ、玄関へ向かいます。玄関のドアを開けると,そこには羽付きベレー帽を被ったカーキ色の服を着た男の方が小脇に何かを抱えて立っていました。抱えているのは丸められた羊皮紙のようです。
もしかして、この方はメッセンジャーではないでしょうか。見ると着ているのは王国の紋章の付いたダブレットです。そして,メッセンジャーは羊皮紙を広げて、
【告げる。我が城主、エドワード・ヘクタ・マウントバッテン・メリオネス様、ウリエル・エタ・テラム・インペラーム様の御一門が、ここパラス教会へ本日、礼拝される。相応の用意をされるように。以上】
と宣言された。羊皮紙を丸めると小脇に挟み、身を翻して帰っていく。
先振れです。王族の皆様が来られるという。それも正式な作法に則したもの。
できたらお忍びで参拝してくれると良かったのですが儚い希望でした。聖教会からアイリス様たちも来られたし。
どうしましょう。大事です。一大事に上書きの一大事。気合いを入れてお持てなしくないといけませんね。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
メッセンジャーが帰って間も無く、開いているドアから規則正しい音が聞こえて来ます。
チッ,チッ,チッ、
蹄につけられた蹄鉄の音でしょうか。金属の音も混ざって来ます。
慌てて、外に飛び出して通りを見ます。アイリス様が来られた通りとは別の通りから馬が見えました。
あっちはお城がある。じゃあ、お城からお見えになったんですよね。
馬の顔は頭部を守る金属製の面甲シャンフラン。紋章の刺繍された馬鎧の胸繋や手綱には装飾のハルネス・メダリオンとか、金色のモールが下げられて煌びやかに飾られています。
騎乗している方々も白と赤のフサがついた兜を被り、チュニックにグローブ、ブーツの色を揃えて乗られていました。
隊列を揃えてこちらに通りを向かってくるのです。その後ろには馬車も見えます。それも数台。
えぇっ、インペリアルパレードじゃないですか。やだぁ! 早速、お見えになりました。
急いで教会の中に入ろうかとしたんですが手がワタワタしてノブが上手に握れません。時間をとってしまいました。背中越しに馬の足並みがトロットで進んでいきます。
『 ホルト 』
ザッ、ザッ
背中越しに号令が聞こえ、一糸乱れずに馬車の歩みが止まりました。
恐る恐る後を見ると、教会の前に大きなステート・コーチが止まっています。キャビンとか窓には金色の装飾がなされていました。
護衛騎士が一人、降りてタラップを準備。そして扉を開けると、白い大きな羽飾りをつけたベレー帽が見えます。ケルメス・レッドのガウンコートを羽織っています。生地には金色と銀色の刺繍が一杯。宝石も沢山付けられています。下はホーズを履き、上は袖のゆったりとしたスリーブのダブレット。贅の尽くされた衣装です。
また、赤色は高貴な色とされ、王家が着ることになっています。という事は城主様になると………。
タンッ
かの方が一歩、ブーツを履いた足がタラップを踏みます。ベレー帽が上がり、辺りを見渡す金色の顎鬚の見事な城主様のお顔を見ることができました。そして馬車から出るとゆっくりとタラップを降ります。
更に続いて出て来られる方がいます。見事に編み込まれたブロンドの上には、辺りに光を散らす宝石のついたティアラが見え、鮮やかなインペリアル・レッドのドレスが現れます。
豊満な胸を飾るのは沢山の飾り糸で編まれた白銀のストマッカ。目も鮮やかな赤いガウンとペチコート。
最も格式のあるガウンドレス、ロープ・ザ・フランシースです。そしてドレスの艶やかさに負けない紅い唇も見えます。和かに笑顔を辺りに振り撒くんです。
「ウリエル様!」
思わず見知った方なので呼んでしまいました。この国の皇帝ジブリール様の妹君ウリエル様です。
こんな場所で敬称抜きで呼んだりしたら不敬罪に問われないでしょうか。
「おぉ、トゥーリィかや」
ウリエル様は先に降りられた城主様に手を取られタラップを降ります。そして,私の方へ向かってスカートをつまみ、静々と歩いてくるのです。
「暫くぶりであるな。息災であったか?」
「はい。ウリエル様も、お元気そうで」
私はスカートを軽く掴み膝を落として黙礼を返します。
「うむ。先に話した通り、皆で馳せ参じた。宜しく頼むぞえ」
ウリエル様の後ろでは、号令が掛かり幾つもの馬車が止まって、中からコートやガウンドレスを着た方たちが降りているのが見えます。
「はい。もっと、お手柔らかに来ていただけるとよかったのですが。以前のようにお忍びで来られるかと………」」
「まあ、こちらにも体裁と言うものがあるのでな」
「もう、驚きすぎて心臓が止まるかと思いました」
「そなたなら、大丈夫じゃろ」
「酷い言われよう」
「まあ、良いではないか」
「ははは………、はぁ」
あぁあ、心の中でため息が出てしまいます。こちらの気持ちも察してほしい。
パラス教会はこじんまりとした、ちっちゃな教会なんです。大聖女様だけではなく、城主様まで来られるなんて。それも家族総出なみたいですし。大事過ぎて対処できなくなりますよ。
年の召されたタダイ神父の心臓は持つのかしら。主へお願いしないといけませんね。
「ウリエルよ」
ドキッ
ウリエル様の後ろから,渋く太い声が耳から入り頭の中を震わせます。なんかお腹の下まで染み入るぅ。
「挨拶はそこまでにして、そろそろ、儂に紹介してくれぬのか」
「そうであったな」
ウリエル様の隣に城主様が立つ。来ているコートの上からも筋骨隆々とした体躯が見て取れます。整えられた鬚の奥から眼光鋭い碧眼が私を睥睨して来ます。
ウリエル様もそうなんですけど、お子様も沢山いらっしゃるのに歳が感じられない。圧が感じられます。現役バリバリといった感じです。
「ジブ」
愛称で呼ばれるなんて仲の良さも感じます。
「この御仁はトゥーリィ・パラス。パラスサイト教会に仕える聖女じゃ」
「ほう」
違います。城主様、そこで感心しないでください。
「ウリエル様。違いますよ。私は未だ見習いの身。修練の途中のものですって」
「どう、違うのじゃ。我やルイに施したる奇跡、見習いの身でできるものではあるまい」
「いや、あれは………」
色々とあってですね。シュリンちゃんの魂に住まう方の御力とか、何故か、私の中に住まう至高の方々のおかげというか。
「聖女と名乗っても構わない程の事しておいて。お主」
「ですが…………」
「何故に見習いの身にこだわる?」
「いえ………、それはですね」
まだ、覚えないといけない事もあるし、私自身、出自も怪しく聖女には相応しくないかと……、
「ハハハッ。ウリエル。そう、虐めるな。答えに困っておるぞ」
横で話を聞いていた城主様が助け舟を出してくれました。有難い、助かります。
「ともかくだ。トゥーリィとやら。お主には………」
ここで城主様は、膝を軽く曲げ、羽付のベレー帽を手に取り、仰々しく手を回しながら胸に納め、頭を下げた。見事な形のボーイング・スクラッピング。
「我、エドワード・ヘクタ・マウントバッテン・メリオネス」
「妾、ウリエル・エタ・テラム・インペラーム」
傍のウリエル様は,頭を下げペチコートの裾を掴み広げて膝を落として,優雅なカーテシーを魅せた。
「「最大の感謝を送ろう」」
お二人とも、頭をお上げください。王族たるもの。私如きに頭を下げることなんてしなくていいですって。
「ヌシには,我妻ウリエルだけでなく、我子ルイの命を救ってくれたと聞く」
「どれほどの感謝を贈れば良いか。空より広く大地より揺るぎない感謝の想いを伝えようぞ」
お二人ともお辞め下さい。たかが聖女見習いが行ったこと。
その日、その時に、そこに奇跡を願うものがいた。そして叶った。それこそ、主の恩情。思し召しですって。感謝でしたら主へ向けていただければいいのですよ。
でも、どうしよう。お二人とも頭を上げてくれない。ならば私も頭を下げればいいのかしら。
そうだ、いっその事、ひざまついて平伏し、私が地面に額を擦り付けてぬかづけばいいのよ。オロオロとしながら二人へ近づき腰を下ろそうと………、
トントン
「?」
肩を叩かれました。なんでしょうか?
「狼狽えるな」
この声はタダイ神父ですね。振り返ると冠ミトラを被り,トゥニカを着た神父様が立っています。ですがいつもと違う緋色の肩衣スカプラリオを纏っています。確か、緋色は高位の方が纏う色だと思うのですが。
「儂に任せておけ」
えっ、タダイ神父がこの場を納めるというのでしょうか。相手は王族の方達なんですよ。
「ジブリール様。ウリエル様。頭を上げて頂けますかな。哀れな子羊がブルブルふるえて恐縮しておりますゆえ」
タダイ神父が私の前に出て話をします。でもですね、私が子羊ですか。食べたって美味しくないですよ。肉はついてないし骨っぽくて。
「そうですよ。勘弁していただけますか? ウチの可愛い子ウサギが怯えて震えてるおりますのに」
えっ、アイリス様のお声まで聞こえます。わざわざ、お出になってくれたんですか。私を助けてくれるなんて。
それにですけど、私が子ウサギ。それも可愛い。私には似つかわしくないことは言葉だと思うのですが………。かい被りすぎです。
スッと城主様もウリエルも静かに肩を起こします。声をかけられて、やっとのことで面を上げてくれました。
あれ? 城主様の眉が上がる。
「誰かと思えば、タダイではないか」
「大聖女のアイリス様であるかや。お久しゅう御座います」
王族の方々ででしたら、度々大聖女様にお会いする機会も多いかと思うのですが、城主様がタダイ神父の顔を見て驚いています。ご存知なのでしょうか。
「タダイ。暫く姿を隠しておって、今までどうしておった。お主、枢機卿であったのではないのか」
「寄る年波には勝てんよ。職は後輩に譲って儂は外の裏ぶれた教会に身を潜めておったわ」
えっ、タダイ神父って枢機卿をされていたんですか。確かに緋色は枢機卿が纏うべき色なのですけど。
全く枢機卿って位で言えば大聖女様の直近。ナンバーツーです。ナンバーツー。そんな高位の方が,引退して、なんで裏ぶれたパラス教会にいるんですか。隠れて昼間から酒飲んでるし。
「で、あるか。全く探しておったのだぞ。ここであったが百年目。積もる話もあるでな。お主のこれまでの話も聞かせよ。良いな」
「では、立っていては話も続かぬもの。教会の中に入ってはどうでしょう。喉を潤すものもありますゆえ」
しかも,城主様とも昵懇なようで。気心の知れた二人に見えます。過去に二人に何かあったのでしょうか。驚くことが雨霰と降って来ます。
「では私がお茶をおひとつ、お出ししますわ」
「大聖女様が自ら出していただけると。こりゃ凄いわい」
城主さまのお顔が破顔します。余程嬉しいのでしょう。
「ウリエル…我らは先に行く。後は頼んだ。それと近うによれ」
城主様は側によったウリエル様の腰を抱き寄せると、
「しかしながら,このままでは儂ら気が治らぬ。我らの想いは伝えんとな。なあ」
「はい。貴方」
お二人は寄り添い,笑顔となって
「「大儀であった」」
「謹んで、お言葉を受け取り致します」
私は胸の前で手を合わせて労いのお言葉を頂きました。なんとなくですが,お二人の言葉が柔らかい。これは受けねばならないと思いました。言葉の内側にある感謝の思いは,是非とも主へお届けしておきますね。
そしてタダイ神父とアイリス様は城主様を連れて教会の中へと入っていきます。一人残ったウリエル様は、
「堅苦しい場面にして悪かった。まあ,それだけトゥーリィには恩義を感じておるのだ。察してくれ」
「いえ、滅相もありません……」
「有難い。では、私の子らも紹介するぞ。皆、こちらへ………」
傍に控えていた、ご家族の方々がこちらに来られます。
「こっちが王太子のフィリップ、妃のイゼベルじゃ」
王太子のお色なんでしょうか、杏色のダブルコートをお召しになっていて下には牡鹿のブリーチズでトップブーツを履いていましす。傍にはお妃様がオレンジ色ガウンドレスを着られていました。お二人とも、アルカイックな笑みを浮かべています。
「第二王子 ルーカス」
この方は軍の方でしょうか。黒基調で金モールや飾緒、鮮やかな配色徽章で飾ろられたコートを着られています。お一人なようで、まだ伴侶はいらっしゃらないのですね。
しかし,目が冷たく感じます。なんか値踏みされているみたい。
「第三王子 シャルルと婚約者マーガレット」
こちらの方々は目に鮮やかな青基調のコートとガウンドレス。
「皇女のアンリじゃ」
歳は私に近いかな。刺繍の見事なピンク色ガウンドレスにウリエル様譲りのブロンドを高々と結い上げ、宝石の眩いティアラを飾られています。
ラッパのように広かった袖に四角いスクエアネックのフレンチガウンですね。私は縁がないのですが最近の流行りだそうです。こそっと教えてくれました。
「僕もいるよ」
「ルイ様!」
第五子のルイ様がウリエルの脇からひょこっと現れました。水色のコートの下,真っ白いストッキングが眩しい。
「シュリンはいるのか?」
「シュリンちゃんなら、礼拝堂にいますよ」
「会ってくる」
「えっ、ルイ様?」
言うが早いか。ルイ様は教会へ駆け出します。聖教会本部での騒動から、ルイ様はシュリンちゃんが大のお気に入りみたいです。
今回、皆様の参拝は彼の一言、『シュリンはどうした』から始まったのですよ。
「ルイめ、全く落ち着かぬ。ジブにそっくりじゃ」
えっ、ウリエル様、貴女に似たのでは………
「なんぞ?」
いえ、なんでもありません…どうやら気配で察したようです。心にもチャックです。
「では妾も、中へと行かせてて頂くとしよう」
「はい、暫しお休み頂きますよう…粗末な茶でありますかが喉でも潤されるがよろしいかと」
「助かる」
ウリエル様もスカートを摘み、静々と玄関へと向かいました。
物音がするので振り返ると馬車が止まっている通りでは使いの方達が色々と荷物を下ろしています。長椅子もあったりしました。王家の皆様の物なのでしょうか。
賑やかな中、ライトパープルのダブレットを着込んだ方が駆け込んで来ます。
【告げる。我が主人、エンリケ公ナバール公爵が礼拝される】
ナバール家と言えば、私の知るフィリップ様のお家です。
そして、またお一人。ベージュのダブレットを着た方が………、
【告げる。我が盟主、アークライト公コールマン侯爵が礼拝される】
コールマン家は、守護令嬢と呼ばれるレディ・コールマンのご実家なんですよね。そして、又。
【告げる。我が主君、ヴァイマル伯ヴィルヘルム伯爵ガ参列される】
次々とメッセンジャーが貴族の方々が来られることを告げていく。通りの向こうから何台もの飾られたステートコーチが馬に引かれてやってくるのが見えて来ます。
城主様、王妹のウリエル様が礼拝されるのを聞いたのでしょう。皆様、押っ取り刀で来られるようです。もしかして城内の貴族の御歴々の皆様が来られると言うのでしょうか。
更に騒ぎを聞きつけて城内中の皆様も来られたりして。どれくらいの方がお見えになるのでしょう。
あっ、目眩が。考えるのが怖い。
「おっと。気をつけろ。こんなところで倒れてどうする?」
どなたかがふらつく私の肩を支えてくれました。この声は聞き覚えがあります。色んな騒動の時に一緒に戦ってくれた方。黒髪の大剣使い。
「ヴィンス様!」
「そうだ。トゥーリィ。俺も来たぞ」
この国の皇帝の第四王子である御方です。なんか、もう勢揃いといった感じなのですかが………、
街の小さな教会の、ささやかな休日ミサのはずが、この先どうなるのですか。
お願いです。主よ。主の啓示受けたる古の大聖女様。誰でもいいから教えてください。




