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青ざめきった顔で自ら目を覚ましたリュエルは、頬に一粒の涙を零していた。
「エルー……。レグリス様は親しみを込めて、私をそう呼んで下さっていた」
これは過去だ。醒めると同時に、映像は全て泡がはじけるように跡形も無く消えた。けれど感情は消えない。リュエルは耐えるように瞼を固く閉じる。
「あの方を忘れることは絶対にできません……でも、もう、この喪失感は忘れられると思っていたのに……。あの人……シアンの声が、瞳が、どうしても私に思い出させてしまいます……エルーという名で私を呼んでくれる人は、もういないのだと……」
くすぶりかけた篝火に照らされた宴が、実際の距離以上に遠く夜闇に滲んでいた。佳境を越えた宴会は厳かな騎士たちにも多少の羽目を外させる。料理をきっかけに、オロフが居なくても、シアンがいくらかの騎士たちの話の輪に誘われているようだった。旅の間中、間近に聞こえていた声が遠くから聞こえてくる。その声は、小さくなっても姿同様、誰かを鮮烈にリュエルに思い出させる。
細い三日月が、見るものを突き刺すように鋭利に空に浮かぶ。リュエルはそのせいか、再び目を閉じた。
「……私は、彼といるのが辛い……」




