富士の山の大噴火
怒りに打ち震えた富士の山は、真っ赤な溶岩を吐き出しおった。
さらには、無数の火山弾を天高く吹き出し、そのうちのいくつかはオニ太郎目がけて飛んできたのじゃ。
「トエエエエエエエエエ!」というかけ声と共に、オニ太郎は手にした貝の棍棒を振り上げる。
そうして、凄まじい勢いで飛んでくる火山弾を打ち返したのじゃ!
亡者どもと同じように、またも会心のあたりでジャストミート!そのまま、打ち返された火山弾は富士山の頂上目がけてまっしぐらに飛んでゆく。
ホームラン!場外ホームランじゃ!
これに気をよくしたオニ太郎。
次から次へと、飛んでくる岩の塊を片っ端から打ち返してゆく。
ボッコン、ボッコン、音を立てながら飛んでゆく無数の岩。
しばらくの間そうしておると、やがて富士の山も機嫌を直し落ち着いた。
じゃが、ゴゴゴゴゴゴと地の底から唸るような音は、引き続き聞こえてくる。
「今の内じゃな…」
そうつぶやくと、オニ太郎はゆったりのその場を立ち去った。
*
修業の旅を再開したオニ太郎。
今度は、でっけえ平原にたどりついた。のちに“関東平野”と呼ばれるその地域は、この頃はまだな~んもねぇただの平原じゃった。草っ原と沼が続くばかり。
人間ちゅうのは恐ろしいもんじゃ。やがて、ここに江戸の街ができ、100万人を越える人間が住むようになる。
それどころじゃねえ。家は建ち並び、ビルは乱立し、いずれは1000万…いや周辺地域を含めれば3000万人を越える人間たちが、この辺り一帯に住み着くようになるのじゃった。
じゃが、この時代には、まだな~んもねぇ。
ただ、ポツリポツリと民家が点在し、田畑を耕したり、魚を捕ったりして暮らしとるもんかおっただけじゃ。
そんな中に1人の変わり者がおった。人から離れて暮らし、いつもグ~タラ寝転んで過ごしてばかりおる怠け者じゃ。喰いもんは、そこら辺に生息しとる魚やら鳥やらを適当に捕らえて喰いつないでおった。
ここで、オニ太郎はその男に出会うたのじゃ。
男の名は、平賀源内。“平賀源内マイナス3世”というた。