金太郎vsオニ太郎
「じゃけど、勝負と言うても、何で勝負するんじゃ?」とオニ太郎。
それに対して、金太郎。
「ようし。じゃあ、相撲じゃ!相撲でケリをつけよう!」と答える。
「おっしゃ!それでええぞ!」とオニ太郎もすぐに同意する。
さっそく山のてっぺんにある平になった場所へと移動すると、地面に土俵を作った。
行司はキツネじゃ。観客は動物たち。山じゅうの生きもんが集まってきて、わいのわいのと歓声を上げる。
さあ、勝負の開始じゃ!
「はけよい、のこった!」と、キツネの声が響く。
ところが、土俵の真ん中で、ふたりはがっぷり四つに組み合ったまま、ピクリとも動きゃぁせん。
「お前、やるな!」と金太郎。
「おぬしこそ!」と、オニ太郎。
それから、しばらくの間、そのままの状態が続いたが、ふたりとも徐々に疲れてくる。
しだいに、左右にぶれはじめる。
金太郎がオニ太郎を投げ飛ばそうとふんばると、全体的に右に傾く。
それをグッと我慢して、今度はオニ太郎が金太郎を投げ飛ばそうとふんばった。
すると、2人の体は全体的に左に傾く。
そんなコトを何度か繰り返し、ついにキツネの行司から水が入れられた。
「待った!待った!このままじゃあ、キリがない。1度離れて取り直しじゃ」
こうして、しばらくの間が取られ、もう1度、取り直しとなる。
「はけよい、のこった!」と声がかかり、再びふたりは土俵の真ん中でがっぷり四つ。
ところが、今度も勝負はつかぬまま水が入る。
そんなコトが3度、4度と繰り返され、ついに勝負は引き分けに終わった。
「いや~、こんな強い奴には生まれて初めて出おうたわい」と、金太郎。
「わしもじゃ!わしも!…と言いたいところじゃが、わしの方はもっと強い奴に出おうたことがある」と、オニ太郎。
「なんじゃ?そいつは、どのような奴じゃ?」
「その名を桃太郎と言うてな…」と、話は盛り上がる。
そのまま、その夜は宴会となった。
広場の真ん中に火をたき、大きな鍋に湯を沸かし、山で採れた食材をボンボコボンボコ放り込んでゆく。
そうして、これまた山の中に湧いた酒を飲み、金太郎とオニ太郎、ふたりは大いに盛り上がった。
何度も何度も酒を酌み交わし、山鍋の友となったのじゃ。
山鍋の友とは、読んで字のごとく“山の鍋を一緒につついた仲”という意味じゃ。