龍王様と暮らす日々
龍宮城に住まう龍王様に気に入られたオニ太郎。しばらくの間、この地でやっかいになることに決めた。
龍王様は、娘である乙姫様を失って、たいそうな悲しみに暮れておった。そこにオニ太郎がやって来たもんじゃけぇ、まるで息子のようにかわいがってくれたものじゃ。
「ほぉれ、オニ太郎。こんな珍しいもんが採れたぞ」と言っては、新種の貝や美しいサンゴや真珠なんかを見せてくれた。
なにしろ龍王様は海の王じゃ。世界中から海の生き物たちがやって来ては、様々な品を献上してくれるのじゃった。
また龍王様は、碁にもこっておった。
白と黒の貝殻でできた碁石を持ってきては、オニ太郎に向ってこう言うのじゃった。
「オニ太郎や。碁を打とうや!碁を!」
「いやぁ、わしゃぁ、そういうのやったことないけぇ」と、オニ太郎が答えると、龍王様はすぐにこう返してくる。
「大丈夫じゃ!大丈夫じゃ!基礎から全部教えてやろう。お前は若いから、すぐにうまくなるぞ」
龍王様の言った通りじゃった。
オニ太郎は、すぐに囲碁の基本的なルールを覚えて打てるようになった。さすがに龍王様と互角にとまではいかんかったが、それでも石をいくつか置いてもらって、2人で楽しげに碁に興じたものじゃ。その姿は、まるで本物の親子のようじゃった。
さらに、龍王様は武術の稽古もつけてくれた。
素手での戦いだけではのうて、剣やら槍やらひととおりの武器の扱い方も教えてくれた。また、龍王様の配下には腕っぷしの立つもんが何人もおって、オニ太郎はそういうもんらにも、よう稽古をつけてもらったもんじゃ。
オニ太郎にとっては、これが一番ありがたかった。なにしろ、桃太郎に敗れて以来、頭ん中はそればっかりじゃ。
「いかにして強うなるか?どのような訓練方法で、どのくらい修業すればよいのか?常に鍛錬を欠かしてはならぬ。強う!もっと強うならんと!」
毎日毎日、そればっかり考えて暮らしておったのじゃから。
もともと持っておった才覚に加えて、「強うなろう!」というやる気が、オニ太郎をメキメキと上達させていった。そうして、半年もすると、龍宮城にはオニ太郎に勝てるようなもんは誰もおらんようになってしもうた。
そうなるとオニ太郎の方も満足できんようになってくる。
「もっと!もっとじゃ!もっと強いもんと戦いてぇ!」という思いが、心の底からムクムクとわき上がってくるのじゃった。




