龍宮城の龍王様
さて、全身傷だらけになって海を漂っておったオニ太郎じゃったが…
いつの間にか、気を失っておった。どうやら、先ほどの戦いで血を流しすぎたらしい。
そうして、次に目を覚ました時には、見知らぬ豪邸の前じゃった。
「こ、ここはどこじゃ…」
オニ太郎は、そうつぶやく。
「ここは、龍宮城ですよ。海の底にある宮殿なのです」
そう答えたのは、1匹の大きな大きなカメじゃった。どうやら、このカメが自分の甲羅の上に乗せて、オニ太郎をここまで運んできてくれたようじゃ。
「龍宮城…!?」
「そう。龍宮城です。海の生き物たちが住まう場所。そして、それらの生き物を束ねる龍王様の根城でもあります」
「龍王か。そんなものが、この世にはおるもんなんじゃなぁ…」と、オニ太郎は感心した。
世の中には、まだまだオニ太郎の知らん不思議な生き物や出来事が山ほどあったんじゃ。
続けて、大きなカメはこう言った。
「龍王様は、意気消沈されておられます。娘の乙姫様がいなくなり、随分とさびしい思いをされておられるのです」
「いなくなった?」
「そうでございます。ある1人の男を追いかけて、乙姫様はこの龍宮城を出ていかれてしまったのです」
「男?」
「そう。それは、私めを助けてくれた若い釣り人でありました。もっとも、今はもう全然若くはないのですが…」
オニ太郎は、ようわからんまま、とりあえずその龍王様とやらに会うてみることにした。
宮殿の謁見の間に通されたオニ太郎。龍王様と会話をする。
龍王様は人間の姿をしておって、黒髪に長い黒ヒゲをたくわえておった。人間の年齢で言えば、50才くらいじゃろうか?そのくらいに見えた。
ガタイはええ方じゃったが、背は低く、オニ太郎に比べると随分と弱そうな感じじゃ。
「これはこれは、こんな海の底へとよう参ったな。それにしてもおぬし、全身傷だらけじゃが…?」と、龍王様は不思議に思う。
「はぁ。桃太郎というもんと戦ってこうなったんじゃ。それが、たいそう強い奴で…」と、オニ太郎が話し始める。
「ほうほう。なかなかおもしろそうな話じゃ。話してみい」と、龍王様も興味を持たれた。
それから、オニ太郎は話し始めた。これまでのいきさつ。鬼ヶ島での平和な日々。そこに突如やって来た桃太郎と3匹の獣たち。そして、その戦いの顛末を。
龍王様は、とても退屈しておられたので、さも楽しそうにオニ太郎の話に聞き入った。
「ほうほう、それでそれで?」
「それは、いかんな。酷い話じゃ」
「フ~ム…おぬし、なかなかの強者じゃのう」などとあいづちを打ったり感心したりしながら、話を聞き続けられたのじゃ。
そうして、ひととおりオニ太郎が話し終わると、龍王様はこうおっしゃられた。
「どうじゃ?しばらく、この城で暮らしてみんか?わしも、一人娘の乙姫がおらんようになってさびしくしとったとこじゃし」
「そういうのもええかもしれんな…」と、オニ太郎は思い、2つ返事で了解した。
こうして、オニ太郎は、龍王様の住む竜宮城で暮らすことになったんじゃ。




