パンデミック
人
「おつかれさまで~す」
すっかりこの仕事に慣れ、藤本はセミの死体処理をしてくれる掃除業者に挨拶をしていた。
僕らが倒した後に来るらしく、たまに鉢合わせする。
最近は涼しくなってきたのかセミの数も少なくなってきた。だから、早めに切り上げるので掃除業者も早めに来るんだろう。
池田とログハウスでTVを観ていたら嫌なニュースが流れてきた。
「九州の方で巨大化したハチが住民に襲い掛かる事件が相次いでおり、九州からの脱出を政府は住民に促しております。死者は100人以上出ており、自衛隊を派遣する模様」
報道規制しきれなくなったんだ。藤本は思った。池田は
「自衛隊派遣って多分とっくにしてるんじゃないかな」
池田の読みは正解。
「けど、セミも最近少なくなってきたし、俺たちも九州に飛ばされるのかな?」
「それは、明日隊長に聞いてみないと分かんない。けど、クビにならずにすみそうだね」
と池田は楽観的に言う。
次の日。隊長に聞くと「その可能性はある」と言う。
と言うよりも一般市民が巻き込まれてる時点で国民総動員で戦争もありえるらしい。
自衛隊だけじゃ数足りないし。あいつらの繁殖力はすさまじい。池田はさらに聞く。
「昨日ニュースで自衛隊派遣って言ってましたけど、実際いつぐらいから派遣されてたんですか?」
「君たちが来た頃からだ。一般市民が攻撃されて報道規制出来なくなったんだよ」
「やっぱり、その辺りからかなと思ってたんですよ」
「鋭いね。正解だよ。ハハッ」力なく隊長は笑う。
その日のニュースではハチが一般市民を襲う様子が流され背筋が凍った。
政府が九州からの避難指示を出した。沖縄にもいるんじゃないかと女子アナは言っていた。
なぜ、昆虫が巨大化したのか昆虫学者が言ってたがどうでもよかった。
地理学者が九州を襲う理由を述べてたがそれもどうでもよかった。何となくだけどハチと日本国民の全面戦争が始まる気がする。
戦
「ハチだけではありません。何と巨大な蚊も人間を襲っています。沖縄、九州で発見、死者は不明。昆虫に詳しい生物学研究者の前田さんからは刺されたら致死量を吸われるんじゃないかとの事で非常に危険。九州、沖縄の方は外出は出来るだけ控えるようにして下さい。もし、するのであれば車での移動をお願いします」
現地では自衛隊員が奮闘するも、相手の数が多すぎて苦戦していた。
蚊に刺されても大丈夫なように特殊なスーツを着て戦っているが、ハチの針はそれを突き破って刺して来る。
「もう、蚊には構うな。ハチだ!ハチをやれ!」
班長本田の声が響く。
「どこに巣があるんだ。そこをやらなきゃキリがない」
若手の西浦がグチる。
「市民を守るのが我々の仕事だ」
住民のいる街で彼らは戦っていた。
九州、沖縄の方では交代で24時間体制で自衛隊が戦い続けた。自衛隊員が住民の他府県への脱出を手伝った。
そういう班と戦う班で分かれていた。
一方で政府は悩んでいた。
自衛隊だけではとてもじゃないけど人数が足りない。害虫駆除業者や国民をプラスすべきかどうかを考えていた。憲法の問題もある。
結局、VS虫と言う事で戦争では無いと結論付け、害虫駆除業者に依頼を出したのである。
藤本らの元に依頼が来た。藤本と池田と実松と若造の4人は九州に戦いに行く事になった。武器も届いた。
殺虫ガスが入った火炎放射器みたいな見た目のやつと虫の針を通さないスーツが配られた。
ただ、1つ疑問に思うのはなぜ、自分らも呼ばれるのか?めちゃめちゃ向こうは虫の数がいるのか?
その通りである。しかも、ハチにはスーツが通用しない。ハチがブスッと穴を開けた所から蚊が血を吸っていた。
母親に電話すると
「あんた、断りや。そんな危ないの」
と反対するも、
「多分やけど、全国規模になるやろから九州で戦うか大阪で戦うかの違いやって。遅かれ早かれ戦わなあかん」
そう言い、九州に向かった。
九州の空港でわざわざ自衛隊の人が出迎えてくれた。自衛隊の人から
「よく来てくれました。今人手不足なんで本当に困ってたんです。説明したい事があるので皆さん会議室に来てください。」
会議室に呼ばれ中で色々と説明されたが、何で昆虫が大きくなったかの説明で眠たくなってしまった。
そんな事より倒し方を教えてほしい。もう大きくなっちゃったんやからそれはどうでもよかった。
「で、ですねぇ、次に弱点ですけど・・・」
おっ、これは聞いとかなあかん。藤本は前のめりになる。池田はメモを取り出す。実松はダルそうだ。若造は池田に鉛筆を貸した。
「あります」と断られていた。
「火に弱いんじゃないかと。けど、これは悩んでます。住宅に燃え移ったら大変ですからね。だから殺虫剤を散布してるんですが、何せ量が・・・」
「火なんて人間でも弱いっつーの」
実松がツッコンだ。少しの間が空いてから自衛隊の人が答える。
「後は煙ですね。煙で燻せば動きが鈍ります。」
「煙もリスキーじゃねぇか」
実松はまたもツッコンだ。
「けど、動きを鈍らせる利点は大きいんですよ。遠目からでも殺虫放射器は届きますんで」
「何だよ殺虫放射器って」
「火炎の殺虫バージョンと思って頂ければ」
「ほぅ。後、蚊はどうしたらいいんだよ」
「蚊は殺虫液を当てれば簡単に死にます。だから蜂を重点的に狙ってほしい」
「ってかよ。蜂って専門の業者が駆除するもんだろ。俺たちでもいいのかよ」
「北海道で即戦力がいたと聞いたので呼んでもらいました」
「セミと蜂じゃ大違いだろうがよ!」
「人数が足りてないんですよ!!!」
自衛隊員は強く言った。実松は黙った。
しばらくした後、殺虫放射器の使い方を教わり、特殊なスーツ、ガスマスク、養蜂業者が付けてそうな帽子とタオルを貰った。
養蜂業者の装備にガスマスクとスーツが加わった感じだ。最後に実松が嫌な質問をした。
「何人か死んでるの?」
場が凍りついた後答えが返って来た。
「・・・死んでないよ。・・・・・ケガ人は出てるけど」
唇の震えと変な間でウソだと分かった。これは駆除ではなく戦争だ。
「普通のサイズでさえ2回刺されたらヤバいのに巨大化した蜂相手に勝てんのかよ」
と実松は最もな事を言う。俺も気になった事を質問した。
「あの、拠点をやらないと意味ないんじゃないですか?巣をやらないと」
「それは実は見つけてる。自衛隊の中でも優秀な連中が言ってるが返事が来ないんだよ。ちなみに場所は屋久島だ。屋久島に巣があったんだよ」
「屋久島かぁ。何でそれマスコミは言わないんだ」
「混乱するからだろ」
もうしとるわ。
と誰もが思ったがみんな黙った。って言うか返事がない時点でマズいんじゃ・・・
全員がこの戦いに不安を覚えた。けど、もうやるしかない。「帰る」と言える雰囲気じゃなかった。
糸
屋久島にはハチの他にクモもいた。報道規制ではなく、危険すぎて入れなかったのだ。
島民は自衛隊が避難させるも全員ではない。死人も出てしまっていた。自衛隊精鋭部隊も苦戦していた。
糸に絡まったら最後で粘り気がすごく中々取れない。そこをハチに刺されて死ぬか、クモに噛まれて死ぬかである。
虫たちの拠点である屋久島はすごい事になっていた。九州の方ではハチと蚊だが、こっちはハチとクモ。巣にたどり着く事すら出来ない。
おそらく縄文杉あたりにあるんじゃないかと噂されている。世界遺産に何て事をするんだ。
そうこう言ってると目の前に糸が見えた。班長が全員に叫ぶ!
「前に糸があるぞ。気を付けろよ!」
みんな注意して歩く。火炎放射器で焼き払う事も出来そうだが、山火事になってしまいそうで恐かった。
最初はナイフで切っていたが、粘り気がすごくて、切りづらくて仕方ない。だから諦めた。
そうこうしてる内に糸(クモの巣)の数が増えてきた。
「クモが近くにいるぞ。気を付けろ」
昨日、島民を避難させて山班と住民班(市街地)に分かれていた。
下ではハチが主に襲ってくるが、クモの巣もあった。
って事はクモも来るのである。なぜこうなってしまったのか。
環境破壊が原因である。ちょっとずつ虫が大きくなっていってるのに気付かなかった人間側のミスである。蚊とかたまにでかいのいたのに・・・
目の前にクモが現れた。幸いにも1匹だけだ。
班長は殺虫放射器を撃った。当たって倒れた。
班長は迷っていた。最低な考えだが、屋久島の山を燃やした方が早いんじゃないか。
政府に問うてみようと思ったが、政府は
「世界遺産を燃やすなんてダメだ!!」
と断られた。じゃあお前らも戦いに来いと心の中でグチった。
その後
「もっと応援を呼んでください」
と頼んだら、それは了承された。
虫
この戦争に手応えを感じていた女王蜂は上機嫌だった。
「拠点場所に我々とクモがいる時点で負けようがないわ」
「そうですね」
働き蜂は答える。しかし、他のハチが一つ反論をした。
「スーツを改良されたら厄介ですよ」
「いや、大丈夫。我々の針は最強ですよ」
「いえ、でも油断は出来ません」
「彼らの生命線がスーツならスーツを作る工場を襲撃すればいいわ」
「それがどこか分かりません」
「じゃあ、もうそろそろ大阪、東京も行きますか?どっちかに工場あるだろ」
「そうしましょうか。たくさん人のいる所狙いましょうか」
「単純にエサも増えるって訳よ」
そんな話をしているとクモが突っ込んできた。
「俺たちも大阪や東京に行かせてほしい。運んでくれないか?」
「あなたたちを運ぶのは難しいから殺した人間の肉をこっちに運ぶってのはどう?」
「巣を張って獲物を待つのが楽しいんだけどなぁ」
クモはふて腐れる。
「あの糸バレバレじゃない」
「飛べないってツラいな」
「まぁ、私も拠点にいるから。」
「屋久島の方にも優秀なハチを残しますよね?東京、大阪に集中しすぎると拠点があっさりやられますよ。おそらく、こっちに人間も強敵送って来てるはずなんで」
「それはもちろんよ。自衛隊って奴をこっちに送ってるんでしょ。なら、こっちも人数揃えとかないと」
「あの、自衛隊が敵で来るなら、僕ら人間肉のお土産いらないんじゃ・・・」
「・・・分かったわ。その代わり絶対に生きて帰ってきなさいよ」
「はい」働き蜂総長のキラネスは元気よく答えた。




