死に飽きた彼女
短編ですが、番外や別視点のものも後日出す予定です。
「澪……いい加減やめたらどうだ?それ」
「ん?どれ?」
ベッドに寝っ転がりながらアイスを食べながら漫画を読んでいた私に、そのベッド兼部屋の持ち主である幼馴染の八坂直が呆れたように声をかけてくる。
「それだよ、それ。人のベッドで人の漫画を読みながら人のアイスを食うことだよ。それも持ち主に一言も断りなく」
「えー、いいじゃん別に。幼馴染特権だよ」
「なんだよそれ……」
もう何度目かわからないやり取り。
「まったく……というかそんな怠けてお菓子ばかり食ってたら太るぞ」
「あー!直ったら女の子にそういうこと言うんだ!サイテー!デリカシーないよー!そんなだからモテないんだぁ!」
「うるせぇ余計なお世話だ」
軽口を叩きながら、直はゲームの準備をする。
「……ねぇ直、乱闘するんでしょ。勝負しようよ」
「ん?よくわかったな。まぁいいけど」
「ちなみに私が勝ちます」
「ほぅ随分と強気だな、だが勝ちは譲らないぞ?」
……違う。私が勝つ。
そう決まっているのだ。
「ほら〜!言ったでしょ!」
数分後、私の画面にはWinと表示されていた。反対に、直の画面にはLoseと表示されていた。
もう何度も見た光景だ。
「はぁ、まじか……」
「いっつも勝ってるからって油断してるからだよ〜だ!ってことでアイス奢って!」
「お前さっき俺のアイス食ってただろ」
「それはそれ、これはこれ」
「お前なぁ……」
直は呆れたように眉を顰めて立ち上がる。
「ほら、いくぞ」
「さっすが直!よくわかってる〜!」
私はベッドを飛び降りる。
着々と時間は近づいてきている。
大丈夫、きっとできる。そのために何十回と見てきたのだ。
「母さん、ちょっと出かけてくる」
「おばさん行ってきまぁす!」
「あら、どこかいくの?」
「そこのコンビニまで」
「そう。気をつけていくのよ」
「はーい!」
アレはちゃんと部屋に置いてきた。もう心残りは何もない。
あとは、私が……
直の家を出て、隣にある私の家を通り過ぎ、橋を渡る。
私はその真ん中くらいで足を止めた。
「……っ。おい、急に止まんなよ澪。どうした?」
一息ついて笑顔でくるっと後ろを歩いていた直に向かって振り返る。
「ねぇ直、私もうすぐ死ぬの」
「……は?」
一瞬フリーズした直は一息ついて呆れたような顔をした。
が、私の表情を見てか、はたまた長年幼馴染をやってきた勘か、それが冗談ではないと悟ったらしく引き攣った笑みで問いかけてくる。
「な、なんだよそれ……もうすぐ死ぬって……なんだよ?冗談……だよな?」
「冗談なんかじゃないよ。……決められたことだから」
トラックの音がする。
「……直、何があってもその場を動かないでね」
「は?お前何言って……」
……今だ。
「ッ!おい!澪!お前何してっ!」
橋の柵に手をかけた私に慌てるようにして直が駆けてくる。
「……ごめんね、直」
一瞬止まって直の方を見て、私は柵を乗り越えた。
ばしゃん、とも、どぼんとも聞こえるような大きな音と共に体に鈍くそれでいて鋭い痛みが走る。かと思えば、すぐに息ができず苦しみだけが襲ってくる。
これでいい。そう、これで。こうするしかなかったのだ。
痛い、苦しい、痛い、苦しい、痛い……
遠くで大きなつんざくようなブレーキ音と直の声が聞こえる。
(ごめん、直。でもこれできっと……)
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「何にしようかな〜!」
「っ!澪!!!」
「え?」
「っ……!」
(何、今の……確か私、直とのゲームに勝ってアイス奢ってもらいに行ってて……そしたら直に腕引かれて……代わりに直が突っ込んできたトラックに……潰された……?)
「……澪?」
「っ……!」
「おい、どうした?人の部屋に勝手に入ってくつろいでた割には顔真っ青だぞ?」
「え、あ、」
(直……?ってことはさっきのは夢……?)
「……おい澪、どうした?」
「い、いやぁちょっと悪い夢見てたみたい!」
「お前なぁ……人のベッド勝手に使っといてそれはないだろ」
「ごめんごめん!」
「ったく……あ、乱闘するけどお前もやる?」
「お!じゃあ私が勝ったらアイス奢って!」
「なら俺が勝ったらお前が奢れよ」
「受けてたとうじゃないか!」
(……なんか嫌な予感がする)
「ね、ねぇ直、私やっぱり近所のドーナツがいいかな」
「はぁ?最初にアイスって言ったの澪だろ?……はぁ、しょうがねぇなぁ……」
(これで、夢みたいになることはないはず……)
「っ直!前!」
「ん?っと……」
(自転車……危ない……けど別に何もない……直もちゃんと避けたし、やっぱり気のせい……)
「……っ!?」
(……え?)
「……直っっっ!!!!!」
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(普通に進めばトラックが突っ込んでくる。道を変えても自転車が突っ込んできて、それを避けて橋にもたれかかったら橋が崩れて川に落下。あの橋を通らなくても道路の木が倒れてきたり、ギリギリで直を引っ張って避けてもその拍子に自転車に突っ込まれたり工事中の地面が崩れたり足場が降ってきたり。部屋から出なくても火事が起きたり私の家にいても意味わかんない強盗入ってくるし。ゲームにわざと負けても、何も変わらなかった。ずっと、直が死ぬたびにループしてた。でも、直が死なないことはなかった。何をしても直は死んだ。なら、私が先に死んだら?ループの中で唯一記憶がある私が死んだら?それなら、もしかしたら……って思ったけど……)
……正解、だったのかな……まだ、直の声が聞こえる。私の名前を呼ぶ声が……
でも……もう……
ごめんね、直……でも、死んで欲しくなんか、なかったの……だって……
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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誤字脱字の報告もあればしていただけると助かります。
前書きにも書きましたが、後日談と真相編というものを書こうと思っていますのでよければ後日チェックしてみてください。
それでは、またどこかで




