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75〜静寂の狂騒曲〜

 皮肉な関係



――KINKONN――


『…ひほ、何だ!?…』


 零のスマホにアラームが鳴る。

 この音は零のプログラムしたサーバーからの送信で、スマホが何らかの異常が起きた事を知らせている。

 慌てて楓香からスマホを取り戻し確認するが、スマホのセキュリティには反応が無い。


 つまり新種のウィルスかセキュリティを通り抜ける何か……



『…あの、楓香さん、これパソコンの前で出来ませんか?…』


 零は風呂場で楓香にボンドをお湯で溶かして洗い抜いて貰っていた。

 しかし、確認する為にはパソコンが必要だった。

 

「ふぅむ……これで良いの?」



 お湯を半分入れた桶に零をかけると部屋に運び出していた。

 電源を押そうとすると、濡れ手から滴る水滴に気付き、仕方無く零が覚悟を決め楓香に頼みを重ねる。



『…ひほ、やってくれ…』

「ふむぅ……」



――BUJARUJURUJURUJU――



 零のボディを掴み桶の上に持ち上げると、ひねる、ひねる、ひねる、絞られる零の腹綿から滴り落ちる水。

 水量が無くなり零のボディがペタンコになる中、零は尚も両腕を差し出していた。


――BUJARUJU――

――BASSA――


 絞りはたかれた零のボディは少し膨らみが戻るが、力無く動き出す。

 足をお湯に浸けた事で腹綿がボディ全体に浸透させた水量は、凡そ人の水分量と同じなのかもしれないが、そのボディを包む皮が肉か生地かでこんなにも……


『…皮肉な話だ…』



 テーブルを這い何とか電源を入れた零が、上半身だけテーブルに乗りキーボードの前で呟いていた。

 スマホのアプリとしては認められないサーバープログラムが、スマホのセキュリティとして認められたプログラムが反応しない異常に警告を発したのだから。


 サーバーに繋げ確認する零をサポートする様に見える楓香は、ただ足裏のボンドを洗い拭っているのだが、何となく零の中でも気不味さを感じる程の尽くす女に感じていた。



――KATAKATAKATA――

『…ひーほー、来たぜ、奴等だ…』


 少し前までの雰囲気も心の中の葛藤もガラリと変える程の何かがソコで起きていた。



『…楓香、スマホ…』


 濡れ手にスマホを渡すと零がパソコンに繋げる。

 何かを転送して外しそのファイルを開くと暫くして再起動を始めた。

 立ち上がると更に繋げパソコンのコマンド画面を立ち上げた



『…逆に覗いてやるぜ、待ってなクソ共…』

――KATAKATAKATA――






――PERONN――

「え?」


 大泉と話していた透子がテーブルの上に置いていたスマホに入ったメッセージに目をやると見た事の無い画面が出ていた。


 そこに書かれた文字には



【バレない様に周りを見渡せ! お前のスマホに覗きウィルスを仕掛けたヤツか仲間が近くに居る筈。多分左後ろ! そいつにカメラを向けろ。零】



「零!?」


「ん? 友達から? もう帰ろっか」

「あ、いえ、ちょっと待って下さい」



 スマホを持ち……

 どう向ければ良いのかも判らない。

 盗撮みたいに思われても困る。


 というか、盗撮するのかされているのか、ヤッているのは零でそれが何になるのかも解らないままに、相手に気付かれては不味そうな気はするが、カメラを向けるだけの事にも気を負っていた。


 相手は何の躊躇いも無く愉しんでカメラを向けている事等知らぬままに……


「あ、リップ……」


 思い付いた様に右手で鞄を漁りながら左手にスマホを持ちカメラを相手に向けていた。





――KATAKATAKATA――

「これ、透子のスマホ?」

『…ああ、犯人の映像だ…』




――PERONN――

 透子が鞄から手を出しスマホを見るとまた画面に文字が



【そいつの一メートル範囲内で三十秒立ってろ、あとKOBAって知り合いか何かの電話受けたか?】


「はあ? あ!?」




――KATAKATAKATA――

「あ、透子だ……」

『…ひほ、インカメに切り替え…馬鹿っ面が。こりゃ受けた顔だな…』





――PERONN――

【了解、早く行け!】


「え? 何? 何で? え、見えてる?」



――PERONN――

【早くしろ雌豚】


「この、……」



「あら、彼氏?」


 大泉の予想外の問いに我を思い出し、冷静にどう近付くか考えていた。

 と、片付けようとする大泉が箸を落とす。

 これだ! とすかさず箸を蹴り、取りに行った。


「違います。アイツは……同……」



 立ち止まる透子は考えていた。

 同居人ではあるが、大泉に同居人として紹介するのは不味い気がした。

 別に会わせる話にはならない筈だが、もしもがある。

 隠せば彼氏と疑われて良い男が現れた時に邪魔な話にもなり兼ねない。

 本気で悩んでいた。


――PERONN――

【良くやった。もういいぞ】


「え、あ」


 箸を拾い戻りながら尚も本気で考える透子に大泉が申し訳なさそうに口を開いた。


「ごめん、難しい年頃だもんね」

「え?」



 キョトンとする透子がKOBAに関連する名を思い出しハッとする。


〈……小林?〉


 無言電話の後ろでしていた音は小林のスマホに付いていた鈴の音ではないのか? と、朝の研修間違えの大泉と事務の人達が困惑する最中に小さく鳴っていた音。

 まだ二十代の透子の耳には鮮明に聴こえていた音だが。



「大泉さん、……」

「帰ろうか」

「……はい」


 大泉に何と説明すれば良いのかも何が起きているのかも理解していない事に気付き、煮え切らない態度をとっている自分に悔しさを感じ家路に向かう透子の頭の中は、零に何が起きているのかを問いただす事だけだった。







――KATAKATAKATA――

『…よし、まさか自分がヤラれる側になってるとは考えないだろ、のぼせ上がってなクソ共が! イヒヒヒヒヒ……さてと、…』


――BITYA――



『…楓香、さん…』


 振り向き様に遠い目で語りかける零に見つめ合う楓香が眉を寄せる。


『…ヤッてくれ…』


「ふむぅ……」


――BUJARUJURUJURUJU――

――BASSA――


 


 踊らされているのは……


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