九話
チビチビ投稿して行きます。
これを優先するつもりです!
ルーとともに夕波に抱き上げてもらい階段を降りると一階したの扉から桜が出てきた。
竹刀を袋にしまい肩に斜めがけにしてさっき別れた時と全然変わらない。
少し埃が着いているだけだ。
もちろん透けてもいない。
「ごめんな、ミト。驚かせちゃって。ちゃんとだいといてあげればよかったね。」
桜が手を差し伸べてくる。
夕波が私を桜に差し出した。
「ヴヴー!」
「………。」
「………。」
「…嫌われた?」
「も、もう少し待ってみようか。」
最初にいった通り私は幽霊とか怖い。だから幽体離脱とかする桜も正直いって怖いのだ。
「姉貴ーー!終わったよー!」
夕波の家に帰ってきた。今日は桜もここに泊まるらしい。
パタパタと走る音がして夕波のお母さんが顔を覗かせた。
「おかえり、菊ならまだ帰ってないわよ?」
時計を見ると夜の9時を指していた。
「ご飯出来てるわよいらっしゃい。」
夕波のお母さんの後ろからさらに高齢の女性が出てきた。夕波のおばあちゃんかな?
おばあちゃんの横を通るとにっこり笑っておいでおいでと手招きされた。
戸惑っているとルーがおばあちゃんの後を着いていった。そこで私もルーのようについていく。
おばあちゃんは床にお皿をふたつ並べると片方にはミルク。片方にはキャットフードの上に鰹節を掛けたものを入れてくれた。
「姉貴遅いな。」
夕波がチロリと時計を見上げた。時計は今12時を指している。
同じリビングにいた全員がテレビの上にある時計に目を向けた。
「何かあったのか。」
顔をしかめ不安げにつぶやいたのは先ほど帰ってきた夕波のお父さんだ。そして私はその腕の中に収まっている。お父さんは帰って来て私を視界に入れた途端に飛びついて来た。
「わあーー!モフモフだ!」
ガタイのデカイ強面の大男がそう叫んで飛びついて来た時は本気で死ぬかと思った。
「電話繋がらない。」
夕波がスマホの電源を切ってそういった。
その言葉に全員が目線を交わし合う。
「誰か菊がどこに行ったか知ってるか?」
全員再び顔を見合わせ、全員が首を振った。
「仕事場所言いたがらないからね、姉貴は。」
「じゃあ、明日。雄高に頼んで探してもらおう。悪いけど夕波、桜くん。雄高と一緒に探してくれ。こっちは他を当たってみる。」
「わかった。」
「お安い御用です。」
夕波は自分の手元に呪符をたぐり寄せながら、桜は隣に置いてあった竹刀に手を寄せて頷いた。
「ミトはいく……「ヴヴー」…ごめん。」
霊がいると分かってていく奴がいるか!!
………ああ、いたね。ここに約2名いたね!
夕波は手持ちの呪符の数を数えているし桜は庭に降りて竹刀の素振りを開始する。
☆☆☆☆☆☆
私は再びあの部屋にいた。男がゆらりと立ち上がってこっちにくる。
薄い月明かりが男を足から順に照らし出す。
汚れた靴。
破けたズボン。
ナイフを持ったままダラリと垂れ下がった腕。
血に濡れた赤いシャツ。
私は全身の毛を逆立てていた。
「来るな。来るな。来るな、来るなあああぁぁ!!」
そして光は血だらけの顔をうつした。
「いやあああぁぁぁ!!」
☆☆☆☆☆☆
「ミト、ミト!落ち着け、どうした?」
頭をサワサワ撫でる感じとなだめるようにかけられる声で私は現実に引き戻された。
場所は夕波の家の客室。桜と一緒に泊まらせてもらったのだ。
夢……か。
ホッと息を吐いて。でもまだ夢の余韻が残っていて、私は桜に擦り寄った。
「大丈夫か?嫌な夢でも見たか。」
私はクンクンと情けない声を上げて桜のお腹にグリグリと頭を擦り付けた。
しばらくされるがままになっていた桜だがよしとつぶやくと私をだいて自分の布団に潜り込んだ。
「今日は一緒に寝よっか。」
ギュッと安心させるように抱きしめられその温もりにホッとして。
私は再び眠りについた。
☆☆☆☆☆☆
桜の布団のすぐ脇に血だらけの男が立っていた。私はそいつをひたと見据えた。
「この子達に手を出したら、許しませんよ。」
しばらくすると、
男は静かに闇に溶けていった。