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地獄でカフェをOPENしました  作者: 美倭古
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Can't Wait

「お~い、監一さん、監二さん。只今ぁ」

 監一と監二が自身の器を持って、こちらに向かって歩いて来た。

「玄、久し振りだな。どうだった、耕三との旅は?」


『あははは、旅って言っていいのだろうか? 俺、地獄の罪人なんですが』


「あ、うん。色々とすっごく勉強になった」

 あまりに濃厚な体験を多数したため、どれから説明していいのか、頭の中で順番を決める必要がある。

「皆さんに重要なお知らせがあります。先ずは、チーズをゲットしました! ピザが焼けるぞ」

「まじかよ。上に住んでる耕作鬼さんが、作ってたってことか? それを分けてくれるのか? すげえな。玄、それはお手柄だぜ」

「ほんまや、ピザってめっちゃ楽しみや」

 茜と理子は、チーズが無い事を知らなかったが、皆の喜ぶ様子から、朗報なんだと理解した。

「それから」

「まだあるのか?」

「エスプレッソマシーンが完成しました! しかも耕三さん、既にここの蒸気道に、運んでくれてる。帰って来る時に上から見えた」

「え? ホウレン草を蒸気道に運んだ時は、なかったぞ」

「僕等が、退いてからドカンとやって来たんやで」

「エスプレッソマシーンかぁ! すっげぇな! 早速、コーヒー豆を挽くぞ!」

「地獄コーヒーか、はよ飲んでみたいわ。あ、だから監一さん達、自分の器持って来てんの?」

「絶対にカメラがあるぜ」

 監一達の手に握られている器に、皆の視線が集まった後、勇の言葉で解散したかの様に、隠しカメラを探した。

「それから、テーブルとチェアーも考えてくれるって。店の看板は木の板に俺が、絵を描けって言われた。冗談だといいけど」

「それも良いと思うぜ。個性的でさ」

「なになに? 玄って絵が上手なん? ちなみに僕も絵描くの好きやから手伝うで」

「そうだった。義晴が描けるじゃん」

 看板の話は、義晴が描く事で話が進みそうだ。

「いよいよ、オープンだな」

「凄いよ。玄君。地獄で夢を叶えちゃうなんて」

「私も尊敬します。私なんてここで終わるのだと諦めてましたから。メンバーに加えて貰えて有難うございます」

 理子が俺に礼を言うのと同時に、他の皆も俺に祝福の眼差しをくれた。

「皆で頑張ろうな! エイエイオー」

「あははは、出たよ、玄のエイエイオー」

「あれ、生きてる時から玄君の口癖だから」

「やっぱり」

「ええやん。エイエイオーや~」

 キッシュの焼き上がる香りと共に、俺達の笑い声が木霊した。


「しかしまぁ、耕三さんは正真正銘のGenius《天才》だな」

「何で急に横文字なん? 僕も勇に同感やけどな。こんなん普通作れるか?」

「耕三さん、、、、」

 耕三には本当の名前がある事を思い出した。耕三と呼び続けていいのだろうか。

「玄、どうした?」

「あ、いや何でもない。耕三さんと暫くの時間を過ごしてみて分かった。彼ならこれくらい朝飯前だよ」

「耕三さんって、エンジニア兼サイエンティストって方ですよね?」

「そうそう、しかもイケメンらしい。僕もまだ会ったことないねんけど」

「はぁ~ ここに耕三さんが現れたら絶対、茜と理子のハートは取られちゃうな。玄、最強のライバルだぜ」

「あははは、闘う前から完敗だよ」

「ダメだこりゃ~」

 俺達は、蒸気道に設置されていたエスプレッソマシーンを前に、耕三の話で盛り上がっていた。

「耕三さんも、噂されたら、くしゃみするんだろうか? ははは」


 蒸気道からはスチームだけでなく、熱湯も所々噴き出しており、耕三はエスプレッソマシーンのタンクと繋げていた。電気が無くても熱湯が、常にタンクに補充される。また溢れ続ける熱湯に対応して、タンクが満タンを超えないように、排水管も取付けてあった。蒸気圧もバルブが付いており管理が可能だ。

 実物のエスプレッソマシーンに触れた事の無い耕三が、まるで全てを熟知していたかの如く、機械を短期間で造ってしまう彼は、正しく神だと言える。

「じゃあ、玄、早速やってみっか?」

 俺達は先程、巨大な石臼を男3人掛かりで動かし、コーヒー豆を挽いたのだった。

「実にいい匂いだのう」

 監二は楽しみで仕方ないのか、先程から鼻をひくひくとさせるので、俺達は吹き出しそうになるのを、堪えるので必死だった。

「こんな感じでいいんじゃない? 玄君」

 フィルターにコーヒーの粉を、押し固める作業をしていた茜に尋ねられた。

「あ、上手にタンピング出来てる、さすが先輩」

「このタンパーすっごく使いやすい。体重をかけれるから、この作業なら、女の私達でも出来そう。でも、ポルタフィルターを、あの抽出口に取り付けるのは、玄君達のヘルプが必要だわ」

「茜さん、私の背が低くて、ごめんなさい」

「理子ちゃん、身長なんて気にする事ないわ。コーヒーを詰めるの、私1人じゃ出来きなかったわよ。手伝ってくれて、有難う」

「そんなぁ」

「玄君、この機械レバーって事は手動式。私使った事ないから、お役に立てないわ」

 俺達はカフェオープンに向けて、役割分担を決めようと考えた。出来る事、出来ない事を、事前に把握しておくためだ。

 理子は背が低かったので、エスプレッソマシーンの扱いや、大きい器などを運ぶのには、不向きであった。性格も控えめで口数も少なかったが、「奥ゆかしい」と、鬼達には喜ばれた。


「茜先輩、ピストンレバー式、実は俺もよく知らない。1度だけ家庭用の使っただけ。あははは。でもやってみるしかない」

「どういう事だ? エスプレッソマシーン使った事ないのかよ」

「最近のは、お湯の量も圧力も全部、機械で管理されてるから、ボタン押すだけでいいんだよ」

「なるほど、それやったら誰にでも使えるなぁ」

「まぁね。でもこれは手動式。電気が無い時点で地球のとは違うんだし、手探りで使いこなすしかないな」

「とにかく、やってみようぜ」

「耕三さんの造った機械は、神がかってるから、なんとかなるって」

「だな~」

「じゃあ、お湯出してみるよ。ここにちゃんとガードを付けてくれてるけど、飛び跳ねると危ないから、少し離れてくれ」

 いよいよエスプレッソマシーンの試運転だ。

 皆の熱い視線が、俺の背中に向けられているのが、振り返えらずとも感じ取れた。

 緊張で張り詰めた空気に、時折聞こえる監二の鼻息が、皆の遠慮がちな笑いを誘っていた。

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