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#5 久しぶりの生活

 俺はそれから、長老のあとに続いて静まり返った廊下を歩き、案内された自分の部屋へと向かった。どうやらこの道場は、無駄に広い構造になっているらしく、まだまだ部屋にはかなりの空きがあるらしい。


 「明日は朝早いからな。さっさと部屋に入って休むんじゃぞ。」


 「は、はい⋯。」


 廊下の途中で足を止めた長老に重々しく念を押され、俺はかろうじて生返事を返した。

 

 ああ、ダメだ、マジで眠い。長老との命がけの死闘を繰り広げた直後だからな、自分でも気づかないうちに全身のエネルギーが根こそぎ奪われ、極限の疲労状態なのだろう。部屋に入ったら、着替えもそこそこに倒れるようにベッドへダイブしてやろう⋯そんなことばかりを考えながら重い木製の扉を開けた俺は、その光景を目にして思わず絶句した。


 「うおっ、すごっ!!」


 そこに広がっていたのは、ここが道場であることを完全に忘れてしまうような、まるで高級ホテルのスイートルームを思わせるゴージャスな空間だった。体を優しく包み込んでくれそうなふかふかの特大キングサイズベッドに、彫刻が施された上質なイスと高級感あふれる机、さらには足を伸ばしてゆったり寛(くつろ)げる大きな革張りソファまで完備されている!ただ⋯これだけの豪華すぎる設備が整っていながら、部屋のどこを見渡してもテレビが一切無いことだけは、現代人の俺としては地味に悲しいところだ。


 「一階には大浴場の温泉もある。せいぜい疲れを癒すといい。なにせ、明日の朝起きたら⋯ホホホ⋯。」


 背後から長老が不気味な笑みを浮かべながら、スーッと通り過ぎていく。


 (このじいさん、なにかと嫌味つけてくるよな⋯。いちいちウザいんだよ⋯。)


 すると、俺のお腹の虫が限界を告げる大きな音を鳴り響かせた。


 「さあ、気を取り直して、念願の美味いご飯を食べに行きますか!」


 もうお腹と背中がくっついてしまいそうなレベルだ。思い返せばこの世界に来てからまともなものを口にしていない。かなりペコペコだー!


 そして俺は、長老に教わったとおり、食堂へ向かった。


 「うわぁー!!すごすぎる!!」


 超高級ホテルのディナー会場みたいだ!長テーブルの上にずらりと並べられた無数の料理は、なんと圧巻のバイキング形式!すでに大勢の道場生たちが集まっていて、みんな楽しそうに大きな皿いっぱいに好きな料理を盛り付けている。


 すると長老がやってきた。


 「本当に豪華なバイキングですね!道場に入って本当によかったー!」


 「ホホホ!そう言ってもらえると、こちらとしても用意した甲斐があるというものじゃのう。」


 目の前のテーブルを見れば、大トロやサーモンが眩しく輝く握り寿司!ジュージューと香ばしい音を立てて上質な脂が乗った絶品焼肉!さらには特大のタラバガニまで惜しげもなく山盛りに積み上げられている!遠慮なんてしていられるか、食えるだけどんどん皿に盛って食べまくろう!


 「食に感謝!さあ、宴の始まりだー!」


 あまりの豪勢さにテンションが限界突破してしまい、俺はなぜかみんなの前で司会進行役みたいになって高らかに叫んでいた。


「いただきまーす!!」


 こうして俺は、この異世界に来て実に半日ぶりとなる本格的で温かい食事にありついたのだ。


 まずは目の前の焼肉からだ。箸で分厚く切られた極上の肉を掴み、タレをたっぷりつけて口の中へ一気に放り込む。パクッ。


 「⋯う、うっっっ!!」


 「ショウセイ殿!?だ、大丈夫か!?」


 「う、ま、い⋯!!言葉にならないくらい美味い⋯!!」


 信じられない!噛む必要すら感じないくらいのあり得ない柔らかさ、そして一噛みごとに口の中いっぱいに溢れ出てくる肉汁の芳醇なジューシー感!久々にこんな良いご飯を食べたぜ!


 ⋯というのも、俺は現実世界では二十二歳の高卒で働いている一人暮らしの身。少しでも栄養バランスがよくて健康的な食事をしなきゃと思い立ち、一時期は節約も兼ねて自炊を試みたこともあったのだが⋯、悲しいことに、出来上がるのは決まって炭と化した何かや、味が一切しない超絶まずい物体ばかり。スマホの料理レシピ動画を穴があくほど見返して一生懸命頑張ってはいる。しかし、悲しいが俺には料理のセンスが絶望的に欠落しているのだ。結局そんな味気ないコンビニ弁当やカップ麺ばかりの侘しい食生活を送っていたからこそ、今日のこの温かくて美味いご飯が余計に五臓六腑に沁みわたって美味しく感じる。


 途中で寿司を口へ放り込み、カニの身をほじくり返しながら、夢中で大皿の料理を平らげ続けていると、頭の中に急に無機質な声が響いた。


 ーーーハイパースキル「爆食者(クラウモノ)」を獲得しました。これにより、食物であれば胃袋の制限なく限りなく食べ続けることができます。もちろん食べた分だけ、そのまま栄養やパワーとして体にたくわえられます。ーーー


 なんだその大食いタレントに特化しすぎたみたいなスキル!?まあでも、この最高に美味い飯が胃袋の破裂を気にせず無限に食えるなら、何の損もない最高のスキルか⋯。


====================================


 「ショウセイ殿!ショウセイ殿!」


「ん?なにぁ⋯っ!?」


 肩をガックンガックンと強く揺すられて、俺はハッと目を覚ました。なんと手に空っぽのお皿と箸を握りしめたまま、食堂のテーブルでそのまま寝落ちしていたらしい。


 「す、すみません⋯つい満腹感と極度の疲労で意識が遠のいてました⋯⋯。」


 「ほら、もうみんな食べ終わって各自の部屋に戻ったぞ。早く部屋へ行って休みなさい。」


 「はい、俺も部屋に戻って寝ます⋯。」


 俺はそのままお腹がパンパンにはじけそうな満腹感でフラフラになりながら部屋へと戻り、俺は豪華なふかふかベッドへと吸い込まれるように崩れ落ち、この後悪夢が待っていることも知らずに深い眠りについてしまったのだった。

[著者・tops0216より天才のあなたへ]


最後まで読んでくれたあなた、ありがとう!!!!


ぜひ、感想やレビューを送ってね!!


次回もお楽しみに!!!!


[次回予告]

#6 不敵者

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