↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/247

29話  冬の授業 ~始めよう作戦会議2~



 今ある商品を改良して、貴族に気に入られる物を作る。


 やること自体は、はっきりしている。

 しかし、レント商会は元々貴族向けの商品は作ってもおらず、ノウハウもない。


 エステラは腕を組んで唸り。

 ノックスはブツブツと呟き。

 アイナは人差し指を顎に当て、何か良い案はないかと、各々頭を捻って考える。


「お兄ちゃん、貴族が欲しがる物っていえば?」

「う~ん、名誉とお金かな?」

「兄さん、貴族ってお金を何に使うの?」


 ……どの時代も、お金は大事か。


「事業だったり、部下の給料や軍備費用、調度品とか装飾品……すぐに思い当たるのはこんな感じかな」


 ……商人から提供できるのは、調度品か装飾品かぁ。すぐには作れないよね。


 実のところ、ぬか石鹸はどれくらいすごいのだろうと疑問に思ったことはある。

 現状、貴族が使っている品を、大きく上回るレベルなのだろうか?


 ……効果はバッチリだし、所長は興味を示すって言ってたけど、正直どうなんだろ?


「お兄ちゃん、ぬか石鹸って貴族が興味を示すぐらい、すごい効果なの?」

「うん。ぬか石鹸は間違いなく売れると思う。ここまで効果が高い物は、そうそうないよ」


 ぬか石鹸の評価は、やはり高い。

 だとすると、他の商品はどの程度なのか調べる必要がある。


「お兄ちゃん、貴族が使ってる化粧関係の商品ってある?」

「化粧? うちは専門じゃないからね。いや……ちょっと待ってて、会長の奥さんなら持ってるかも」


 ノックスが席を立とうとした時、アイナが「私が借りてくるよ」と、代わりに倉庫を出ていった。


 ……奥さんの品なら、女性の方がいいかもね。


 三人で桶を片付け、換気していた窓を閉めていると、倉庫の扉が開いた。

 アイナが、化粧品を持って戻ってきたようだ。


「借りてきたよ~」


 机の上に置かれたのは、今も貴族に流行っている物だという。

 子供の手のひらサイズで、平民用にしては凝った装飾が施されている。


 わたしは蓋を開けると、指先ですくって手の甲に伸ばしてみる。


 ……伸びが悪い。ドーランというより、白粉に近いかな。


「お兄ちゃん、これが最新の化粧品?」

「あっちこっちで人気だったよ。火の月に平民にも普及し始めたんだよ」


 ……貴族って、着飾ったりするの好きだよね? でも、美容関係の商品ってあんまり品質が良くないのかな?


「兄さん、これ肌が荒れそうだけど」

「人によるかな。毒性は無いけど、どうしても肌に合わない人もいるからね。ステラも化粧してみるかい?」


 エステラは、げぇ~っと顔をしかめて、頭を振った。


「貴族って、こんなの塗ったくってるのね。私は勘弁ね。なんか窮屈そう」

「エステラも女の子なのに、その感想は勿体ないわよ」


 アイナが、エステラの頬を指でツンツンしている。

 エステラは、全く化粧には興味が無いようで、本気で嫌そうだ。


 その横でノックスがガッカリした顔なのは、この際どうでもよかったが、わたしも勿体ないとは少し思う。


 ……お姉ちゃん、将来いい線いくと思うけどなぁ。


 わたしは、手の甲に伸ばした化粧品を見て、勝算はありそうだと確信した。

 この化粧品が最新だというのなら、美容関係なら勝負できるかもしれない。


 ……ぬか石鹸って、全身用シャンプーみたいなもんよね。だったら……。


「お兄ちゃん、ぬか石鹸を二つに分けるとか、どう?」


 言ってみたものの、みんなはポカンとしている。

 わたし自身、言った後で、これじゃ説明不足すぎると思った。


 ……これじゃ駄目だよね。


 依然として頭の上にハテナマークを並べているノックスとエステラ。

 いち早く我に返ったアイナが、困惑した表情で聞いてくる。


「えっと、妹ちゃん、どういうこと?」

「相手を騙すようで悪いんだけど、ぬか石鹸って髪も体も洗えるでしょ? だから、髪用と体用って分けちゃえば、商品が二つに増えるかなって……全身用で三つ、とか」


 ……説明下手くそすぎるっ!


 エステラがポンッと手をうつと、ノックスが机を両手でバシンッと叩いて椅子から立ち上がった。


「「それだっ!」」


 どうやら、うまく伝わったようだ。


 ノックスは「香りを付ければ、さらに種類は増えるぞ」と、付け加えた。

 さらに増やすつもりらしい。

 なんだか騙しているようで気が引けるが、その分、全身用を薄めたり、値段を調整すれば問題無いだろう。


 効果は同じだが、わざわざ髪用で体を洗わない。

 貴族なら尚更らしい。

 ノックスも「そんな失敗を侍女がするはずがない」と、賛成した。


「新しい商品を作るのは厳しいけれど、これならいけそうだ」

「妹ちゃん、やっぱりすごいね」


 わたしは、笑顔のアイナとハイタッチを交わす。

 後は、わたしたちが興味を引くことができれば、上手くいくかもしれない。


 これで全体的な流れは決まった。


 ……これ、上手くいったら、すごいお金になるんじゃない? うへへへぇ。


 ノックスは商品の改良を。

 エステラとアイナは作戦の成功を。

 わたしは儲けの計算をと、笑顔の理由は様々だが、これもいいだろう。


 四の鐘が鳴って間もなく、倉庫の扉がギィッと開く音がする。

 どうやら、お父さんが迎えに来たようだ。



「どうした? 揃ってニコニコして……」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。