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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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53話  倉庫整理開始 ~矛盾する感情3~



 昼食を終え、わたしは再び作業へ戻った。


 午後の日差しは地下倉庫には届かず、やはり薄暗いまま。

 しかし、空気は午前中より少し暖かく、寒さで指先がかじかむことはない。


「さて、残りも頑張らなくちゃ……」


 わたしは頬を軽く叩いて、気合を入れ直す。


 絵と品を照らし合わせる作業だ。

 単純そうに見えて、微妙な形状の違いや、かすれた文字が頭を悩ませる。

 しかし、ロエナと使用人たちは少しずつ手順に慣れてきており、先程よりもずっとスムーズだ。


「その品と絵の対応は……」


 ロエナが声をかける。

 わたしは頷きながら、小さな箱を持ち上げる。


 その瞬間、微かに河童が顔をのぞかせた。

 箱の端を持って、重みを少しだけ分散してくれることに、わたしは目を細めて笑う。


 ……ありがとう。助かるよ。


 河童は楽しそうに、ただぴょんと跳ねるだけ。

 意思を強く要求するような様子はない。

 あくまで、手伝いの一環のようだ。


 わたしが力を入れなくても、箱を持ち上げる動作が少しだけ軽くなる程度。

 それでも、一人じゃないと思えるのは、わたしにとって大きい。


「うん、この方法なら、昼食前よりもずっと早く整理できそう」


 使用人たちも手順を覚え、絵と品を確かめながら箱を整理していく。


 わたしは一歩下がり、手順の確認と指示を続ける。


 時折、棚の隙間から小さな光の粒が漂う。

 河童や妖精、古狸がふわりと宙を浮かび、軽く荷物を押すようにして手伝ってくれる。


「これで、箱の内容を絵と照らし合わせる手順はほぼ完璧ね」


 わたしが声をかけると、ロエナは笑顔を返す。

 使用人たちも自然と作業に集中し、昼前よりも整理が効率的に進んだ。


 わたしは少しだけ立ち止まり、倉庫の奥まで見渡す。

 整理されていない箱はまだ多いが、棚と箱の間に秩序が生まれつつある。


 精霊の手伝いと使用人たちの慣れ。

 この両方で、倉庫は少しずつ、でも確実に形を取り戻していった。


 ……これで夜には片付きそうね。


 わたしは小さく頷き、再び手を動かす。

 箱を持ち上げ、絵と照合し、品を分類する。

 昼食前と同じ作業ではあるが、微かな充実感が胸に広がる。


 自分の指示が、使用人たちの動きに反映されるのを見るだけで、静かな満足感を得られた。


 そして、倉庫の奥で精霊たちの気配を感じながら、わたしは今日中に整理を終えるために集中を切らさない。


 午後の作業は、ただの整理作業以上の意味を持っている。

 それは、この邸の秘密を知り、理解するための大切な一歩だと思った。




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