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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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47話  小さき優等生 ~再始動、小さな調査官2~



 所長が顔を上げた。

 その様子を確認して、わたしは不安を感じながら口を開いた。


「同じ人物と取引したのだとすれば……何かしら共通の痕跡はあるはずです。それが一切残っていないなんて……変じゃないですか?」


 所長が小さく頷いた。


「意図的に痕跡を消していると考えるのが妥当だろう。取引相手が、ほぼ東側と南側の商人相手だ。あの辺りは、元々、この街に店を構える商人たちではない」


 ……それも、厄介だよねぇ。


「商品の入手経路も不明なものが多い。仮に盗品だったとしても、証明する手段がない……得をすれば良いと考える商人が多い区画だ」


 所長の声音が冷ややかに響いた。

 その言葉に、講義で学んだ内容が現実でも起こっているのだと実感した。


 東と南側はサルボ商会など、大口の取引の際は証文をしっかり残している。

 小口の取引も、西区の商会の場合は証文がある。


 だが、旅商人などの個人と取引を行うことで、帳簿の数字をある程度いじれる。


 流通経路がはっきりしない商品を多数扱うこと。

 これが、税金逃れとして今も行われているのだ。


 特に個人同士の取引など、ほとんど調べようがないのが現実だ。


 でも、人物像すら不明の幽霊商人。

 ただの噂話じゃ済まされない。


「現地を確認する必要がありますね」


 トランの言葉が、張り詰めた空気をわずかに和らげた。


「そうだな」


 所長は即答する。


「虚言であれば痕跡は見つからぬ。だが、実際に利益を得たのであれば、必ずどこかに歪みが残っている……調べる価値はあるな」


 そう断じた所長は、紙に筆を走らせ、何かを書き込むとトランに手渡す。

 書類に視線を落としたトランが「すぐに手配します」と、内容を確認し講義室から足早に退出した。


 ……今日の講義は中止かな?


「所長、今日の講義は中止になりそうですか?」


 所長の視線がわたしに移る。


「そうだな」

「わたしは時間まで、ここで待っていればいいですか? それとも、ジークさんが迎えに――」

「何を言っている。君も現地へ行くんだ」


 ……まだ、同行すると言っていないのだけれど。


「君はトランの補佐だ。トランが現地へ行くのだから、君も同行するのが当たり前であろう」


 ……わたしって、いつ補佐になったの?


「わたし補佐になったんですか?」


 何を言っているんだと、所長の表情は至って真面目だ。


「昨日、同意したではないか。そうですね、と」


 ……ん? そっちの方が効率いいよね~って話じゃ……。


「あれは……」


 所長の表情は、同意したよなと有無を言わせない迫力があった。


「たしかに、口にしました」


 ……言質を取られてる……これは勝てないな。


「よろしい」


 まぁ、所長の雰囲気が少し和らいだので良しとしよう。

 あのままだと、わたしの息が詰まってしょうがない。


「現場へ君を連れて行くのには、利点があるからだ。私たちには見えない世界が見えている。その目は唯一無二だ」


 そういうと、所長はふっと笑った。


 ……なるほどねぇ。精霊が見える目が役に立つかもしれない……やれるだけ、やってみますか。






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