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「この瓶に見覚えはありますか?」



 保安官は空の瓶を机の上に置いた。


 その瓶は何の変哲もない物に見えるが、私には見慣れた物だった。



「これは……。錬金術で作った薬を保存する薬瓶です」


「なるほど……。では、誰でも手に入れられる物ということですね」



 中身のない薬瓶を手に取って、何か細工がないか調べる。


 ただの薬瓶だと思っていたけど、これはただの薬瓶じゃないわ。


 瓶の底にある印を指でなぞる。


 この印は偶然できたものじゃない、私が付けた印だ。



「いいえ……。ここに印があるのは、私が持っていた物。そして、これは研究室から盗まれた物です」



 どうして、これがここにあるの?

 研究室に泥棒が入ったあの日。盗まれた物だ。


 私は保安官に事情聴取されていた。

 そんな時に、まさか盗まれた薬瓶を出されるなんて思っていなかった私は、動揺を隠せないでいた。



「盗まれた物?それは本当ですか?」


「はい。この印は私が付けた物です。これをどこで見つけたのですか?」


「エミリー・ジェイキンがいた宿で発見されました」


「エミリー様が……?」


 

 研究室に入った泥棒はまだ捕まっていない。

 裁判の準備で忙しくて、泥棒のことをすっかり忘れていたけど、エミリー様が泥棒を?


 でも、エミリー様は家に軟禁中で、裁判所と自宅の往復しか許されていなかったはずだ。


 誰が盗んで誰がエミリー様にこの薬瓶を渡したの?

 


「いくつか、この薬瓶について聞きたいことがあるのですが、出来る範囲で結構なので質問にお答えください」


「分かりました」


「盗まれた時。この薬瓶は空でしたか?」


「いいえ。この薬瓶には、私が作った薬が入っていました」


「なるほど……。では、あなたはこの中身が何なのか知っているのですね。中には何が入っていたか、お聞きしてもいいですか?」



 勿論。私が薬を作ったから中に何が入っていたか知っている。


 だけど、誰かに言うには、特に男の人に言うには恥ずかしいものがある。



 視線を逸らして言い淀んでいると、保安官は勘違いをしたのか深刻な声色で言った。



「それほど危険な物が入っていたのですね」


「違います!!その……、この瓶の中には…………。中身はエミリー様が飲まれたのですか?」



 この中身がどう使われたのか気になって聞くと。



「我々はエミリー・ジェイキンがステファン・ギャレットに飲ませたと考えています」


「ステファンに?」


「はい。ステファン・ギャレットは発見された時、昏睡状態に陥っており、彼の横にはこの薬瓶が転がっていました。そして、エミリー・ジェイキンがこれを彼に飲ませたと証言しています」


「そんな……!」



 ステファンが昏睡状態?

 そんなはずはない……、だってこの薬瓶の中身はーー。

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