37 side 保安官
「こんな所に本当にいるんですかね?」
俺は今、ある令嬢の捜索に駆り出されていた。裁判中に行方をくらました令嬢が、この宿に泊まっているとの情報を得て、俺と先輩保安官は薄汚れた路地裏に身を潜めていた。
貴族の令嬢が泊まるには汚過ぎるような……。
金のない旅人や平民が泊まるような宿は繁盛しているのか、この数十分の間でも出入りが激しい。
「無駄口を叩くな。宿の店員に客の中に令嬢がいるか聞き込みに行くぞ」
「……分かりました」
宿の店員にこの令嬢が泊まっているか聞くと、店員は首を縦に振った。
本当にこんな所にいるなんて。裁判中に逃げるような令嬢だから、まともじゃないのは確かだが……。
店員に部屋まで案内するように頼むと、階段を登って奥から三番目の部屋。そこに令嬢は泊まっているらしい。
「お客さん。お届け物です」
店員は俺達の指示通りに、鍵を開けさせるように促すが、中からの反応はない。
だが、わずかに物音がするから部屋の中にはいるらしい。
先輩が顎をクイッと上げて、鍵を開けるように合図する。店員が鍵を開け、ドアを開けて隙間から身体を部屋の中に滑り込ませるとーー。
何だこれは?
窓は閉ざされて、わずかな灯りで照らされる部屋の中は、鼻につく甘い匂いで充満していた。
「あなた達は誰ですか?」
鍵を勝手に開けて入ったにも関わらず、粗末なベッドから上半身を上げてこちらを見る女は、落ち着いた様子で言った。
異様な雰囲気を漂わす女は、探していた令嬢に間違いなかった。
そして、その令嬢の横には身動きをしない、目を瞑った男が横たわっていた。




