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「……ベル!マリベル!!しっかりして!!」
ステファンやエミリー様、裁判のことを考え込んでいると、自分の名前を呼ぶ声に顔を上げる。すると、いつの間にかエラが目の前に座っていた。
エラがどうしてここに?
裁判の証言のために、控え室から出て行ったはずじゃ??
「どうしてエラがここにいるの?」
「どうしてって……。やっぱり聞いてなかったのね。何度も名前を呼んだのよ?待っていても全然呼ばれなくて不思議に思っていたら、裁判が中止になったって言うじゃない。中止の理由を聞いたら、エミリー・ジェイキンが行方不明になったって聞いて、お願いして控え室に戻してもらったの」
「そう、なのね……。ごめんなさい。わざわざ来てもらったのに……」
裁判の証言をしてもらうために、弁護士と話しをしたり、エラは沢山の時間を使ってくれたのに、全てが無駄になってしまった。
申し訳なくてエラの顔を見れずに謝ると。
「ごめんなさいなんて言わないで!私は私のためにやったの。不安になる気持ちも分かるけど、落ち込んでるだけじゃダメよ!こういう時こそ考えを変えないと!!」
「考えを、変える??」
グッと手を顔の横で握って言うエラに首を傾げる。
「そうよ!お仕置きは拳って世の定石でしょう?エミリー・ジェイキンに直接お仕置きする機会を与えられたのよ!」
そう言ってエラは拳を突き出した。
拳で?お仕置き?
突拍子もないことを言うエラに笑ってしまう。
「何よそれ。エミリー様がどこにいるのかも分からないのに、どうやってお仕置きするの?」
笑う私をエラは安心したような顔で見て笑っている。
エラが私を励ますために、冗談を言っているのは分かっている。その優しさが今の私にはとても嬉しい。
私とエラはしばらくの間、一緒に笑いあっていた。
ーーー
「お母様がどこに行ったのか知ってる?」
「呼ばれて出て行かれたわ」
お母様が出て行ったのを気付かないほど、私は考え込んでいたらしい。
お父様が出て行って随分と時間が経つ。お父様とお母様はいつ戻ってくるのだろう。
コンコン
時計を見ていると、タイミングよくノックされる。
「どうぞ」
入ってきたのはお父様だった。お父様はエラを見て、驚いた顔をした。
「君もここにいたんだね」
「はい。戻っていいと言われたので」
エラとお父様が話し終わったのを見て、お父様に詰め寄る。
「お父様!ステファンとエミリー様は見つかりましたか?」
私の言葉にお父様は険しい顔をして言った。
「まだ見つかっていない。エミリー・ジェイキンの捜索が首都全体でされることになった。ステファン君のことだが、祖母の家には行っていないらしい……」
祖母の家に行ってない?じゃあ、ステファンの手紙は嘘だったの?ステファンは何がしたくて嘘の手紙まで送ったの?
「どういうことですか?」
混乱している私に、お父様は深刻そうな声色で言った。
「これは思ったより複雑な事件らしい」
「事件、ですか……?」
「あぁ、まだ正確には分かっていないが……」
そう言ってお父様は口を閉じてしまった。何かを言い淀むお父様に「教えてください」と言うと、お父様は首を横に振って言った。
「マリベルは先に家に帰りなさい」
「どうしてですか?私もここにいます!」
「ダメだ。マリベルは先に帰りなさい」
真っ直ぐ私の目を見て言うお父様に何を言ってもダメだと理解する。
ここにいても、待っていることしか出来ないのは分かっている。だけど……。
「お父様とお母様は帰られないのですか?」
視線を落として言うと、私の肩をお父様は抱いた。
「やらないといけないことがあって、帰るのが遅くなるかもしれない」
今は一人になりたくない。誰かと一緒にいたい。
そんな甘えたことを、忙しいお父様に言うことは出来ない。
「……わかりました」と言おうとすると、エラによって遮られる。
「あのお……。よかったら私の寮に来るのはどうでしょうか?学園の寮は安全ですし、何より…マリベルを一人にしたくないので」




