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「手紙にも書いた通り、ステファンに頼みたいことがあるの」
私はステファンに頼みたいことがあるから直接会って話せないか?という手紙を送った。そして、ステファンから了承する返事が来たことで、ステファンが学園に来るタイミングで会うことになった。
先程までの雰囲気が嘘かのように、私とエラ、ステファンは真面目な顔で机を囲んでいた。
「頼みたいこと?僕は……、婚約者なのにマリベルを傷付けてしまったから、僕に出来ることならなんでもしたいと……、いや、しなければいけないと思ってる」
話すにつれ視線が下がっていき、机の上で組まれた手をジッと見つめて、ステファンは一つ一つの言葉を慎重に紡いだ。
そんなステファンを、私の側で過去のステファンを見ていたエラは、冷たい目で見て言った。
「その言葉に偽りはない?」
「勿論だよ」
エラの冷たい声と視線に怯むことなく、ステファンは私の目を真っ直ぐと見て言った。
その真っ直ぐな目は、遠い過去の記憶にある「大人になったら結婚しよう」と顔を真っ赤に染めて、舌足らずな声で言ったステファンを思い出させた。
私はその記憶を振り払うように、目を細めてフッと笑う。
昔の私なら、その言葉と目を無条件に信じていただろう。けれど、色々と経験してしまった私は、素直に信じられない。
「ありがとう。その気持ちは嬉しいわ。でも……、どんな頼みか聞いてから、改めて、返事を聞かせてちょうだい」
「……分かった」
私の言葉にステファンは一瞬悲しい顔をしたけれど、私は気付いてないフリをする。
「確認したいことがあるんだけど……、今でもエミリー様と連絡を取り合ったり、会ったりしているの?」
「学園での事件が起こってから、僕は屋敷から出たり、誰かに会うのを制限されていたから、エミリーとは連絡を取ったり、会ってもいないよ」
学園でエミリー様と会った時に、ステファンと会えないと言っていた言葉は本当らしい。
ステファンの言葉に、私は一つ踏み込んだ質問をする。
「ステファンはエミリー様のことをどう思っているの?」
私の質問が予想外だったのか、ステファンはわずかに目を見開いた。そして、しばらく考え込んだ後、口を開いた。
「エミリーのことは……、幼馴染だけど妹のように思っていた。けど、それは僕の勘違いだったみたいだ。友人達から僕とエミリーの距離感が異常だ、と言われていたのに、僕はその言葉を大袈裟だと笑っていた……。周りから言われれば言われるほど、僕がエミリーを守らないとと思いこんでいた。事件が起こって、父や沢山の人達に怒られてはじめて気がついたんだ。自分が間違っていたと……」
ステファンは言葉を区切ると、私の目を見た。
「僕が注意をしていれば、この事件は起きなかったかもしれないのに……。守るべきものを間違ってしまっていた。本当にすまない」
そう言って、ステファンは頭を下げた。
謝罪されると思っていなかった私は、ステファンの後頭部を複雑な感情で見つめる。
謝罪を受け入れるのは簡単だ。だけど、ステファンとエミリー様の行動に傷付いた過去の私は、確かにそこにいる。
「謝らないで。謝っても過去は変えられないから」
「そう、だね……」
口から出た声は思いの外、冷たい声色をしていた。ステファンは私の言葉に、目をつぶって項垂れた。
心配そうに私を見ているエラと目が合う。
今の私には、エラやジルベルト様、クリス先輩だけでなくて、沢山の心配してくれる人がいる。
エミリー様の友人達から助けてくれた令嬢達は、裁判の証言をしてくれるとまで言ってくれた。
私はエラに安心させるように笑ってから口を開いた。
「でも、未来は変えられるわ」
ステファンにも何か大切なモノに気付いて欲しいと思うのは、傲慢なのだろうか?
私の言葉に顔を上げて、驚いた顔をするステファンに微笑みかける。
「本題に入りましょう」




