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親しい友人が、自分が知らないことを話しているのを聞いたらどうするか?
何を話しているのか聞く?それとも……知っているフリをして、話しに割って入る?
エラの研究室にやって来た私は、ノックしようとした手を止めて、エラの研究室の前に立っている。
「どうして……その………勝手なことを……のですか」
「私がした……………したの、…………は関係ないじゃない」
「問題は起こす………言われているのに、………になんと説明すれば……………ですか」
「じゃあ、………に何も言わなけ……………じゃない」
「そう言う訳に………ません。……に報告するように言わ………」
「お兄様…………には元気に……………と言えばいいわ」
途切れ途切れ聞こえるエラとクリス先輩の話し声は、言い合いをしているように聞こえるが、エラは普段通りな気もする。
どうしてノックする手を止めてしまったの??このままじゃ入るに入れないじゃない。
友人の話を盗み聞きするつもりはないのに、入るタイミングを失ってしまった。
それにしても、二人は何の話をしているんだろう。先輩がエラを嗜めているように聞こえるけれど、その声はいつもより冷たいような、事務的に聞こえる。
もう少し話し声がよく聞こえるように、足を前に動かすと、ギシッと床が音を立てた。
足を止めたけれど遅かったらしく、部屋の中の声も止まった。
このまま部屋の前から去るわけにもいかず、部屋をノックする。
「エラ、私よ」
ガチャッ 扉が部屋の中から開けられる。
盗み聞きしていたのが気まずい中、研究室に足を踏み入れる。
「お疲れさま。昨日ぶりね。減刑の嘆願書を届けに来たんだけど……。今度にした方がいいかしら??」
こちらに背中を向けて立っているクリス先輩をチラッと見て言うと。
「どうして?話は終わったわよね??クリス先輩」
「……」
エラの言葉に先輩は片手で頭を押さえて、ため息を吐いた。
エラとは対照的にクリス先輩には歓迎されていないらしい。
ーーー
私とエラ、クリス先輩は椅子に座ってテーブルを囲んでいる。
「これが嘆願書よ」
嘆願書の写しをエラに渡すと、エラは紙を燃やすような熱い視線で見ている。
「ふーん……。素晴らしい友情ですこと」
私と同じことを目を細めて言うエラに笑ってしまう。そんな私をエラは不思議そうな顔で見た。
「どうしたの?」
「私と同じことを言ってるのが面白くって」
フフッと笑うと、エラはパァッと顔を輝かせた。
「聞いた?クリス??」
「聞いてるよ」
「流石、私達親友よね」
嬉しそうに笑うエラを「そうだな」と、クリス先輩は優しい目で見ている。
時々、クリス先輩はエラを色々な感情が混ざり合った目で見ている。それが何なのか、私は分からないでいた。
「それで、どうするか決まったのか?」
エラを見つめる先輩を見ていると、先輩と目が合う。
「今日はどうするか話そうと思って来ました」
先輩にそう答えると、エラは立ち上がって言った。
「それのことなんだけど……。気に食わないけど、証言に最適な人が一人いるじゃない」
「ホントーに、気に食わないんだけど」と苦虫を食べたような顔をして言うエラに、誰のことだろう?と首を傾げた。