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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏77

スバル達とはギルド前で別れる。

アカネを背負い直しスバルは

「リオ様、ミランダ様。ありがとうございました」

支援センターへ帰っていった。

魔獣をレオナルド達のところに持ち込み遠吠えで周囲にいた他の犬型魔獣を呼び寄せていたことを話す。

「なるほど」

キラキラと輝いた瞳で私の話を聞いているレオナルドに魔獣の死骸を任せる。

「研究が捗るぞ」

と人が変わったように活き活きしていた。

気を取り直して依頼を受けようとギルドの依頼ボートを見るも、採取、狩猟、討伐、調合以外の依頼が殆ど残っていない。

「昼過ぎですから、致し方ありません。」

「うーん、店番求む。あ、これ、花街の依頼だ駄目か。えっとミランダ、この代筆求むはどうですか?」

力仕事や花街の仕事、代筆の依頼くらいしかない。

「窓口で代筆内容を確認してからなら受けても構いません。」

窓口で代筆内容を確認すると、一枚の紙に記号のような文字が羅列されていた。

「これは、」

「リオ様。これは駄目です。」

「はい。わたくし共もおススメは致しません」

窓口の職員からも言われた。

「え、どうしてですか?」

「この代筆は何度も依頼者と請け負った冒険者とで揉めておりまして、」

字が汚すぎて依頼者の意図した代筆にならないようで、代筆した書面をみて依頼者がこれには報酬を払えないといちゃもんをつけるという。

聞き取りをしながら代筆をすると申し出ても断られるため、ギルドから再び問題を起こしたら依頼受付をしないと勧告している曰く付き。

そのためか、冒険者の間で厄介な依頼だと口伝えに広まりボードに残るようになった。

「ふーん。字が汚いですけど、読めないことはないです。取り敢えず、これで一度確認して問題なければ代筆依頼を受けたいです」

紙に内容を簡単に書き、職員に渡す。

「あ、ありがとうございます。リオ様。では確認して後日指名依頼を出して置きます。依頼が入りましたらお屋敷へご連絡いたしますか?」

「はい。お願いします」

「あのリオ様。実は同じ方からの依頼でボードに出していないものもございますが、いかがされますか?」

「……じゃあ、ついでなので拝見してもよろしいですか?」

「はい!お願い致します」

待ってましたと言わんばかりの明るい声で差し出してきたのは分厚いファイルだった。

「え、こんなに」

「さぁリオ様、こちらへどうぞお座りください」

一番端の窓口の椅子に座り、一枚一枚内容を書いていく。

お茶にお菓子まで出てきた。

とっておきの品なのだろうか。どれもとても美味しかった。

ミランダも呆れている。

「よく読めますね、なんですか、このみみずみたいなものは」

「これは詩ですね。この世で一番理解し難いものです」

「依頼者のトゥール様は有名な詩人でございます。ただ編集者にも代筆した詩しか読ませないという大変な変わり者としても有名でございます」

黙々と暗号解読を続け、全ての紙に内容を書き終えた。

「疲れました。目がしょぼしょぼします。」

ところどころ何故か字が小さくなっていたりしてとても目が疲れた。

「ありがとうございます。」

「まだこれが依頼人のお眼鏡にかなうかはわかりませんよ?」

「大体の内容がわかるだけで十分でございます」

「そうですか。」

「これは報酬でございます」

「……ありがとうございます。ではギルドカードに入金してください」

「かしこまりました」

報酬を受け取りギルドを後にする。

不運体質の時は何故か貸したノートが濡れて返ってきた。

急な雨に降られた、水たまりでこけた、ホースが暴れた等等様々な事象によってノートの中身が読めない事態に陥る。

コピーは一度コピー機が故障したので諦めた。

持ち帰らないのを条件に貸すようにしてからは被害が減ったが、あの時の濡れて滲んだ自分の字を読み解いた経験がいきている。その時は授業の復習が出来るからまあいいかと開き直っていたが。

その他にも父さんの字が汚すぎてメモが読めなかったことがあった。それで鍛えられいるのかもしれない。

意外にも母さんはお手本みたいな字を書く。

屋敷に戻る。

「おかえりなさいませ、リオ様。遅かったですね」

玄関先でエドナとニーナに会った。

「ただいま帰りました」

「ふふ。リオ様、ほっぺに返り血がついてますよ」

ソースがついてますよと言われたのかと疑うような口調でエドナから指摘された。

「あ、ありがとうございます」

ハンカチで頬を拭くも、固まっているようで落としきれなかった。アカネに怯えられたのは返り血のせいか。

合点がいく。

お風呂に入りすっきりして、部屋でまったりお茶をしているとギルドからの手紙と依頼を綴ったファイルが届いた。

「え、」

「早すぎる」

手紙には依頼人が大満足してすぐにでも取り掛かってほしいと書いてあった。

「うわぁ」

ご丁寧に代筆用の紙まで添付されている。

「代筆って丁寧に書きはしますけど自分の筆跡でいいのですよね?」

「リオ様の場合変えられるなら変えてもよろしいかと。名が売れていると作品を乗っ取りかねないので」

トゥールの作品なのに私の作品だと誤認される可能性があるという。印刷してもその前段階で誤解されるようだ。

「あとは特徴のない筆跡を心がけるとかでしょうか?」

エドナが印刷の文字フォントなら問題ないのでは?と尋ねる。

確かに良さそうだ。

「それならいけそうな気がします」

早速一枚書いてみる。

「リオ様。器用ですね」

ミランダもエドナもニーナも驚きを隠せないようだ。

ニーナは特に衝撃から立ち直れていないようだった。

まぁ絵心はないのに模写はできる。筆跡変えられるくらい器用ならそれを絵に応用できそうなのにといった感じだろうか。

ミランダは私がクラリスの真似していたのを知ってるから驚きは少ない。

取り敢えず数枚代筆して、

「ミランダ、これをギルドに提出して他も進めていいか確認して下さい」

確認をとるべくミランダに依頼する。

「かしこまりました」

ミランダは代筆した紙を文箱に収めギルドへ向かった。

「普段使わない筋肉を使ったのか腕が痛いです」

腕を揉みながらファイルを捲る。その中に何故か新たに追加されている言葉を見つけ声を失う。

まじかぁ。

追加されているものをファイルから取り出して、内容を書き込んで別にしておく。

「こんなにたくさん新作が保留にされていたなんて、セラが知ったら喜びそうですね」

「そんなに有名な方なのですか?」

「はい。サイス領のみならず全国に愛読者がいて、新作を待ち望まれている詩人です。まさか、新作が出ないのは文字が解読困難なだけだったとは思いませんでした」

「そんなに売れっ子ならもっと力をいれて解読に人員割いてもよさそうですけど」

気難しいのかな、いや完全に気難しいだろうな。

ギルドと揉めて依頼を受けてくれる冒険者もいない、編集者にも代筆した詩しか渡さない。

新作発表が滞ってもそのスタイルを崩さないのだから。

「はぁ、面倒臭そうな依頼ですね、安易に受けなければよかったです」

ため息をつく。

ミランダに確認を頼んだ代筆の出来に満足しているようで次からは指名依頼をすると言っていたという。

断りたい。




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