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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏78

今週のグラッドの研修先はギルド部のようで

「今日は大変でしたね」

と夕食後グラッドの部屋でお茶をしていたらそう言われた。

昨日今日は冒険者ギルドで窓口や依頼受付、その他の業務にあたっていたという。

「窓口にいるグラッド。見たかったです」

「一瞬ギルドに入ってきましたよね?すぐタカナシを追って行ってしまったようでしたが」

タイミングが悪い。

「新しい転移者の少年が危なっかしくて尾行しました」

「午後からは二階で新人冒険者の登録や専売契約やその他の契約の窓口にいたので逢えず残念でした。私もリオの完了依頼の処理をしたかったです。」

耳元でこっそり

「リオ様、こちらが報酬です。…なんて」

囁かれる。

「ぶー、やり直しで。こんな色気のある窓口職員では女性冒険者の列が出来るので駄目でーす」

「可愛いです」

いちゃいちゃしながら過ごし、就寝前に部屋に戻る。

グラッド成分を補充したのでいい気分のまま眠りにつく。

翌日は大量にある詩を代筆し続けた。

腕が痛い。

気乗りしない依頼はさっさと済ませるに限る。

「結局夕方までかかりました。」

机に突っ伏した私にイザベラがお茶を淹れ労る。

「お疲れ様でした。報酬がっぽがっぽですよ、リオ様」

「そうです!頑張りました、私!明日は街にケーキを食べに行きます!!」

素焼きビスケットにジャムを塗り食べる。

「ジャムもまた買いに行きたいです。」

「では明日は私が街歩きにお供いたします」

「でしたら、職人工房も案内してくださいますか?!」

「勿論ですとも!お任せください」

イザベラと二人観光地図を眺めながら盛り上がる。

観光地図は飲食店や宿泊施設の部分だけなら作って構わないと許可を貰った。

各ギルドや騎士団本部、職人工房の位置を明記しては駄目だそうで簡略化した観光地図は商業ギルドで委託販売をしている。

結構なお値段になり事業資金に回している。

明日行きたい場所を話し合った。

そしてお楽しみの街歩きの日。

イザベラとノヴァと私の三人で行くことになった。

「ノヴァが一緒なら構いません」

とミランダから許可がでた。

「責任重大です」

腹部をさするノヴァにミランダが追い打ちをかけていた。

「目を離さないこと。何か起こると思いながら行動すること。……騎士の時に散々訓練したことを思い出してください。臨機応変さに磨きがかかると思います」

「ぐっ、護衛訓練は苦手でした」

「そうでしたか。リオ様もある程度は動けます。何かあればサイス領が吹き飛ぶと考えてことに当たってください」

「ミランダ、さっきから態とノヴァの胃が痛くなることを言っていませんか?」

「そんなことはありません」

はっきりと断言されてしまった。

ミランダに見送られ屋敷を出発した私達はまずイザベラの案内の下、職人工房区画をすすむ。

「サイス領は何処でも武器屋が多いです。フォッグは討伐依頼自体は少ないですが、コランダムに行く前に装備を整えたい冒険者が立ち寄るのできっちり揃っています。」

「なるほど」

「リオ様は武器屋は贔屓の工房があるので、案内は不要でしょう。ですので、武器屋以外の工房を案内します」

ウォルター工房は道具も扱っていたが、道具専門の道具屋もあるという。ノヴァから貰った中級道具セットはマルロー工房のものだった。

「マルロー工房の道具は耐久性抜群です。その分お高めですけど安心品質で人気があります。まぁ親方は愛想皆無なので職人工房初めての方や女性にはおススメしません」

あのオッサンイラつくんですよねとイザベラの言葉遣いが乱れた。

「初心者でも女性でも怯えずいい買い物が出来るのは、こちらの工房です。職人工房のオアシス、イリーナ工房。かゆいところに手が届く武器の調整の技術が高めです。見習いがいないので見習いの作った道具などの扱いがありません。その分道具も安くはないです」

イリーナさんは美人でかっこいいのですとイザベラが自慢気に言う。特に親しい訳ではないそうだが良く知っていた。

「ウォルター工房の隣りってことはセラのお家ですか?」

「あ、ご存知でしたか。はい、そうです。」

「イザベラちゃん?何、店の前で騒いでるの?」

工房のドアが開いて、一人のツナギ姿の女性が出てきた。

三十代後半くらいの何処か野生味のあるかっこいい女性だ。

「い、イリーナさん!あの、うるさくしてごめんなさい。えっと職人工房区画を案内していたんです」

「そう。あんまりはしゃぎすぎないようにな、行儀の悪い野郎共もいるから気をつけるんだよ」

「はい、ありがとうございます」

イリーナは私とノヴァを見ると、

「お連れさんが強いから、問題なさそうだけど阿呆は何処にでもいるからな。何かあれば迷わず逃げろよ?じゃあな」

そう言い残し店の中に戻っていった。

「イザベラちゃん、かぁ。可愛い呼ばれ方ですね」

「イザベラちゃん」

「二人共今のは忘れてください」

イザベラを揶揄い他の工房を回る。

武器屋や冒険者の為の道具を扱う工房が多いものの日用品や雑貨、服飾関係の工房もある。

「職人工房区画以外の服飾店と何が違うのですか?」

「そうですね、服飾店は職人工房と契約して販売しています。製造は工房です。製造のみの工房と販売もしている工房があります。違いは経理係がいるかどうかってところが大きいです」

確かに自分で売って作ってのほうが儲けはありそうだけど。

「周辺住民は工房に直接行くので、販売もしている工房を案内します。古着屋は多少のお直しと販売のみの店舗です」

武器や道具屋は結構店同士が離れてたり近くにあったり法則性はなかったが、服飾工房は一箇所に集まっていた。

「これって初代様の『学ラン』盥回し事件が元になってるんでしたっけ」

学ランを服飾職人に預けたら、俺も俺もと職人が群がり見本になった学ランが行方不明になった。それを反省した職人達は近場で店を作ることにした。

『サイス領服飾変遷史』に書かれていた。

「そうです。工房が空いても、設備は整っているから次も服飾の工房が入るといった感じで二百年以上続いています」

服飾工房は個性的なお店が多かった。

奇抜な服を扱うお店に古着屋、単色のシックなお店に彩り豊かなお店、和装に近い服や和柄っぽい雑貨を扱うお店と多様だ。

「え、短い」

ミニスカートなんてこの世界で見たことなかった。

布量足りないよ?大丈夫?

「これは単品で着用するのではなくて、ズボンの上から履きます。個性を出したい方や女性冒険者から人気があります。リオ様は普段着で行動されますから関係ないですね」

いや、ちょっと待てよ?そう言われればギルドにいた女性冒険者はこんな感じのひらひらついてたな。人混みにまだ何処か苦手意識があるのかあまり注視していなかった。

シャツを出しているのかと思ってた。

「なるほど」

重ね着用か、吃驚した。

布量足りなくて心許ないなんて感想が出てくるなんて随分馴染んでいる証拠だな。

お店が近いっていいなとあちこちのお店を覗き思う。

和装っぽいと思った服飾工房は転移者が経営主のお店だった。サトウ工房は転移者佐藤恭弥のお店だ。

彼のことも一応資料を読んで知っている。

サイス領を選んだ理由は冒険者が多いからだったか。

帰る為の情報を集めるなら人の行き来が多い土地が一番だと考えてのことだとあった。

現在は花街のお店と服飾工房を経営しているようだ。

「経営主のキョーヤさんは、色気が歩いてるってくらいの男性で、見たら納得しますよ」

和装かぁ、ユーリさんが着てたな。ここのだったのか。

「私も実家ではここの服で過ごすことが多いです。涼しくて快適です」

他にも絞り染めのハンカチや布コースター、カーテン等も取り扱っていた。

市松模様だ。菱紋に、あっ絣、結構な数の柄がある。

「イザベラ君?来てたんだ、久しぶりだね?」

店舗の奥から男性が出てきた。

イザベラ曰く色気が歩いている、その表現に納得する。

派手なイケメンだった。

それにしてもイザベラの顔の広さに驚く。

「キョーヤさん。今日は工房に居たんですね。花街のほうかと思ってました。」

「向こうの店は人に譲ったんだ。だから明日もいるよ」

「ヴィザ君にですか?違うお店になりそう」

「うん。添い寝屋さんになってる。女性冒険者に人気が出ているみたいだよ?」

二人の会話を聞いているとキョーヤと目があった。

「イザベラ君。あちらの方を紹介してくれないのかい?」

「えっーとですね、冒険者のリオ様とお付きのノヴァです」

イザベラが私を冒険者と紹介する。

「初めまして。冒険者のリオです」

「初めまして。『佐藤恭弥です。グラッド様の婚約者のリオ様』」

バレバレだった。

「『知っていたのですね。』」

「『えぇ』それではごゆっくり」

キョーヤは微笑むと店の奥へと戻っていった。




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