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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
332/605

婚約者編 夏71

翌日も冒険者ギルドへ赴く。

ギルド長室で事の経緯を説明すると、ギルド長が

「わかりました。準備致しましょう」

あっさり頷いた。

「良いのですか?!ありがとうございます」

「たくさんありますし」

その言葉に驚く。

「たくさんあるのですか?」

「えぇ。十何年か前に保管庫を拡張しまして、さらに保管庫の担当者が変わりました。今の担当者は保管癖があるというか、大切な資料だと売れ残った魔素循環器をたくさん保管しています。」

口癖は資料は量が物を言うだそう。

「それなら直接レオナルドさんを連れてきたほうがいいでしょうか。」

「それでも構いません。冒険者ギルドとしては魔獣研究が進めば生存率も上がりますし損はありません。」

サイス領の冒険者ギルドでは持ち込まれる多くの情報を資料館へ並べるので手一杯で独自研究にまで中々至れないでいた。ギルド所属以外の研究者の本は並べども所属研究員の本は少ないと言う。

「野にいる研究者を雇うのも視野に入れておきます」

「わたくし、研究成果には連名でと約束しているのですけど」

「抜け目ないですね、リオ様」

コンコン。

ノック音の後に男性職員が扉を開けた。

「ギルド長、リオ様。リオ様に収集の指名依頼が入りましたので、連絡です」

収集?レオナルドだろうか。

「バート君、その人を今ここへ連れてきて欲しい。頼めるか?」

ギルド長もピンときたらしく男性職員に指示する。

「かしこまりました。しばらくお待ち下さい」

それからすぐレオナルドがギルド職員と一緒に部屋に入ってきた。レオナルドは状況が飲み込めないようで動揺している。

「これは一体」

「まぁ、こちらへどうぞ。レオナルド殿」

ギルド長に席を勧められてレオナルドはソファに座る。

「俺は依頼を出しにきただけなんだが」

「まずは話を聞いてほしい。貴方の研究に必要な魔素循環器は我々冒険者ギルドの保管庫に、欠損品だが大量に保管庫している。その無事な部分を集めて研究に活用してはどうか、というのがリオ様からの提案だ。」

ギルド長の説明にレオナルドは瞬きの数を増やす。

「そしてこれは我々冒険者ギルドからの提案だが、ギルド所属の研究員としてこちらで研究を続けないか?」

「は?」

「勿論研究費はギルドから出すし、給与も払う。研究成果は貴方の名前で出す。勿論ギルド所属研究員として肩書きは記載はしてもらうが」

「な、なんでこんな高条件で」

「理由としては、研究のできる人材を探そうとしていたところだからかな。あと研究内容が判明しているのもいい。受けてくれると助かるのだが」

「だが、欠損品って」

レオナルドの表情が曇る。やはり気になるのはそこだ。

「魔素循環器は個体差がないから判別に使われています。その性質を魔獣達も活用していると仮定した場合、無事な部分を繋ぎ合わせることで全体を把握することも可能ではありませんか?」

「そ、それは、そうだな…はぁ俺は時間を無駄にしただけだったな」

「完全な状態の魔素循環器は各ギルドの認証情報を更新する用で優先的にギルドに回されるから一般では手に入りませんよ。そもそも依頼も難度が高くて高額ですから。貴方の培った知識を我々に貸していただきたい」

「色んな魔素循環器が見れるんですよ、研究も進みそうです。保管庫は私も見学したいです。ギルド長、いいですか?」

ギルド長が呆れつつも頷くと、保管庫を見学することになった。保管庫はギルド裏手の魔獣引き取り所のすぐ横の建物だった。ギルドの周りに関連施設は纏めて建っているようだ。

中に入ると、

「おぉ」

きっちり整理整頓された棚と箱が山積みのスペースとで庫内が二分されていた。

ふらふらと棚に近づいた私をミランダが制止する。

「あ、すみません。つい」

私にはミランダがついていたから抑えられたが、レオナルドは庫内をうろうろしている。

ギルド長が

「研究者らしい行動だねぇ」

と笑った。

「おい、ギルド長。僕の研究所に立ち入る際には一言声かけろとあれほど」

箱の積まれたスペースの中なら白衣の人物が出てきた。

声は女性だが、外見で性別が判断できなかった。

「君の研究所ではないし、声もかけた。研究に夢中で聞いてないのはこっちのせいじゃない」

「それでなんだ?研究員の増員か?」

「そのつもりの見学会だ。あっちを彷徨いてる男性が候補だ。こちらは付き添いの冒険者、リオ様とミランダ様だ。」

白衣の人物は長めの前髪をかき分けるとミランダを凝視する。

「貴女が、ミランダ?」

「そうですが、何か」

ミランダが警戒しつつ答えると、白衣の人物は髪を手櫛で整え白衣の汚れを手ではたき、ポケットからだしたハンカチで手を拭いた。

あれなんだろ。何となく次の行動が予想できる。

「僕はメノーです。あ、貴女を応援しています。握手して下さい!!」

表情を変えずにミランダは差し出された手を握り返す。

「応援、ありがとうございます。」

「お、お言葉まで!!」

メノーはいきなり泣き出した。

「泣かないで下さい。それより、庫内の案内をお願いしても?」

「はい!!お任せください。どうぞこちらへ!」

鼻を啜りながらメノーは庫内を案内してくれた。

「こちらの棚は分類が終えた棚です。あちらの箱は未分類の魔素循環器や魔獣の素材です。恥ずかしながら分類が追いつかないのです。」

指示書はあるもののそれに沿って分類する人間がいないという。新人冒険者を講座の一環で手伝いにいれても、身体を動かすのが好きな人達ばかりで全然進まない。

「へぇ。なるほど。」

転移者の職場候補になりそうだなと思いながら話を聞く。

「ミランダ様の持ち込む魔素循環器は破損状況が良いので、すぐわかります」

破損状況が良い?矛盾しているように聞こえるが

「それはどういうことでしょうか」

メノーの中ではそうではないらしい。

棚の中から徐ろに魔素循環器を取る。そして、白衣のポケットからも出す。

「これが普通の何処にでもいる冒険者の持ち込む魔素循環器、そしてこれがミランダ様の持ち込む魔素循環器。違いがわかりますか?」

傷の大きさに違いは無さそうだ。位置かな?ミランダが持ち込んだと見せられた魔素循環器は真ん中に傷がある。

「位置ですか?」

「まあ、正解ですね。正しくは真ん中に真っ直ぐ傷が入っているです。この痕に刃物を入れて割ると綺麗な断面が見れるのです。」

メノーは自慢げにミランダと他の冒険者、ミゲルとの差を語る。それを苦々しい顔でミランダが聞いている。

ひとしきり庫内を見学し、レオナルドはギルド所属の研究員として契約することになった。

「研究成果は連名に致しますので、ご安心ください。」

満足そうなギルド長にちょっとイラッとした。




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