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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏70

夕食後、グラッドと一緒に書斎にくるようにと言われた。

「リオ。何をしたのですか?」

フレッドの冷たい笑顔にグラッドから何かした前提で問われる。間違ってはいない。

「安請け合いをして叱られるところです。話を聞いたらグラッドも叱るはずです。なのでフレッド様の後でお願いします」

「わかりました。私は口を出さずにまずは見守ることにします」

書斎に入るとお説教の時のグラッドと同じ顔で笑うフレッドがソファに腰掛けて待っていた。ミレニアは事情を知らないのか戸惑っている様子だ。

「取り敢えず座って」

「はい。失礼致します」

向かい合う席に座る。

「さて、リオさん。大森林に立ち入りたい理由を説明してくれるかな?」

「え?」

「は?」

ミレニアとグラッドが驚き、開いた口が塞がらないようだ。

「まずことの発端は私がレオナルド・スカーノの研究に興味を持ったことです。そして魔素循環器を集めるのが難しいが私にならできないこともない。それだけの魔力と闇属性加護のレベルがあることに気づいたのがきっかけです。」

そして、今日の出会いと提案に至った流れを話す。

「最初は足りていない魔素循環器を求め大森林で魔獣を討伐するつもりでした。ですが」

「ですが?」

まだまだ冷たい笑顔のフレッドが先を促す。

「ですが、専属侍女のエドナから魔素循環器は完璧な状態でなくてもよいのではないかと、個体差のない魔素循環器だからこそ、欠損していない部分だけを繋ぎ合わせれば良いのではと助言を貰いました。今は冒険者ギルドにある魔素循環器から必要な部分だけを集めるつもりです。」

「大森林へ立ち入るつもりはないと?」

「今のところはございません。お騒がせして申し訳ございませんでした」

フレッドを見据え謝罪する。

「これから先はわからないってことかな?」

「必要であればいつ如何なる時でも赴く覚悟はあります。」

はっきりと口にする。

フレッドから笑みが消えた。

「君は大森林がどんな所か分かって言っているのか?あそこは危険な地域だ。場合によっては二級や一級冒険者ですら命を落としかねない場所だ。」

「存じております」

ミランダから聞いて知っている。

「君は自分の命を軽んじてはいないか?」

フレッドが俯く。

「フレッド様?」

フレッドは言葉を選ぶように口を開いては閉じる。

「君は、私達の家族だ。君は家族が危険な場所に行こうとするのを平気な顔で見送れるのか?」

震える声で問うフレッドに

「……ごめんなさい。」

謝る。

頬を涙が伝う。

謝罪の言葉以外の言葉が繋げない。

無言のままの私達にグラッドとミレニアは微笑む。

グラッドに背中をさすられる。

「ゆっくり今の気持ちを伝えたらいいよ」

「フレッド様、ぐすっ、あ、あの。嬉しいです。心配してくれて、ぅ、家族って言ってくれて嬉しい…う、うぅ」

胸が熱くなって、上手く話せない。

グラッドが渡してくれたハンカチで顔を覆う。

「ほらフレッド様も、もっと言いたいことありますでしょ?」

ミレニアがフレッドを促す。

「む、…無理はしないように」

「フレッド様ったら」

そっぽを向いたフレッドにミレニアが微笑んだまま、さらりと言う。

「娘が心配だと素直に言えばいいのに、全く」

「な!!」

「へ!?」

ミレニアを振り返るフレッドの顔は真っ赤になっている。

私の頬もものすごく熱くなっていく。驚きで涙が止まった。

「む、むすめ、へへへ。嬉しいです」

その言葉に口元がにやにやと緩む。

「そうか。」

フレッドがほっとした様子で微笑んだ。

まだ耳は赤いままだ。

「最近のフレッド様はグラッドとリオさんとお腹の子のことばっかり心配してるのよ」

「ミレニア、やめないか」

「いいえ、やめません。フレッド様が本人達に伝えるならわたくしは黙っておりますよ」

突然のミレニアに暴露にグラッドも戸惑う。

「…それにわたくし、クラリスのことがあって、領主候補に対する接し方を改めることにしました。気持ちは伝えていくと決めました。」

領主候補、または領主候補になりうる相手に対しては例え親子であっても一線を引き極力情を排し接すること、教育にあたった伯爵や夫人達の日記などによく出てくる文言。

「この先出てくるであろう領主候補に対しても同様です。後悔はしたくないですもの。勿論甘やかすということではありません」

「ミレニア…わかった」

フレッドは咳払いをするとグラッドをみつめる。

「養父上」

「……文官研修の日程が変なのは今に始まったことではないが、週替わりの研修は大変だろう?無理をしてはいないかと、気になってな」

「大変ではありますが、無理はしていません。お気遣いありがとうございます」

「私は医務部と整備、土木部と騎士団の研修が辛かったな」

体力の必要な部署は大変だったとフレッドが呟くと

「私は刑務部での研修が精神的に厳しかったです。」

グラッドもぽつりとこぼす。

「何故あんなに悪びれなくつっかかってくるのか、精神構造の違いに感心したよ。貴族達とは違う種類の話の通じなさに私も辟易したな、そういえば。」

フレッドは何か思い出したのか眉間に皺を寄せた。

「刑務、法務、今日から税務だったか?」

「はい。」

「進度が速すぎる時は担当官に申し出なさい。理解していない箇所を放置しないこと、いいね?」

「はい。ありがとうございます。養父上。」

グラッドが嬉しそうに返事をする。

それからしばらく研修の話を聞いて楽しく過ごす。

「騎士団研修は団長から一月で教えることがなくなったと、手紙が届いていたぞ」

私の時はギリギリまで体力をつけろと合格をもらえなかったとフレッドがぼやく。

「そうでしたか、知りませんでした。」

「それから、いつだったか、リオさんは騎士団研修をしないのかともきていたな。予定はないと断っておいた」

「全く団長は」

「騎士と手合わせをしたのよね?」

「はい。楽しかったです。」

「運動が得意で羨ましいわ。わたくしは苦手だから」

「ミレニアは乗馬も苦労していたな。」

「初めての乗馬の後は全身痛くて大変だったわ、それなのにお義母様とフレッド様ったら酷いのよ二人してつつきにくるの。」

フレッドがすいっと視線を逸らす。

可愛いな、何それ混ざりたい。

私の思考が読めたのか

「それは駄目だからね?リオさん」

フレッドに釘を刺される。

「駄目ですか?全身筋肉痛のミレニア様をつついてみたいので機会があれば是非!混ぜて下さい」

めげずにお願いすると、フレッドが

「わかった。少しだけなら」

と渋々許可する。

「ちょっと二人共!絶対駄目ですから!!」

ミレニアが慌てて却下した。



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