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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
324/605

婚約者編 夏63

夕食の時間に食堂へ向かうとフローラからリリについての質問責めにあう。

「リリは殆ど人前には出ませんので、申し訳ございませんがお連れすることは出来ません。」

「それじゃあ昨日は」

「フローラ様が困っていらしたので、なんとか力になりたくて」

「そうなのね、ごめんなさい。」

「いえ。」

しゅんと落ち込むフローラの姿に申し訳なく思いつつもリリに会わせることは出来ない。

ティアとオリバーが食堂に入ってくると夕食を開始する。

ルークは午前中をフロスト邸で過ごし午後から屋敷に戻ったそうだ。

今夜の献立もティエラからの要望を反映した内容だった。

各人の好きな物が入っている。

家族の好物は分かるとしても私の好みは何処からその情報を手に入れているのか以前も思ったが不思議だ。

屋敷に問い合わせたのか、グラッドからとか。

情報源に思いを馳せながら美味しくいただく。

夕食後にティエラから

「グラッドお兄様、リオお姉様。あの、ありがとう」

とお礼を言われた。

アシュレイに気持ちを伝えたそうで、婚約話を一旦白紙に戻してくれることになった。

後日改めて、選択肢を提示すると言われたとティエラが嬉しそうに報告する。

「ティエラは、もっと我儘言ってもいいと思うけど」

グラッドが苦笑すると、ティエラが驚いて

「これでも勇気を奮い立たせて我儘言ったのですよ?」

もっととか無理ですと反論する。

可愛い。

「オリバー兄上は結構父上に我儘言い放題だよ?」

グラッドの暴露にティエラが驚愕の表情で固まった。

小さい頃は嫌いな料理を回避するため書斎の扉の前に座り書斎を封鎖したり、読みたい書籍のおねだりをグラッドが読みたいってと弟のせいにしたり、一度犬を飼いたいと駄々をこねて却下されていたそう。

オリバーの印象がかなり変わる。

「幼い頃の話しか出来ないけど、手紙にも欲しい書籍があって私からも何か言ってほしいって書いてあったし。父上からはオリバーを甘やかすなって釘を刺す手紙が届いたこともあった」

「お兄様は本好きだから、買い集めたらきりがないのよね。書籍は月の購入数が決まってるし」

まじかぁ、セラは流石にここまでではないから安心?かな。

「だからティエラのお願いは可愛いものだよ。父上は喜んでいるんじゃないかな」

「グラッドお兄様は、お父様に我儘言った?」

「我儘、そうだね。家に帰ってきたら父上って呼んでいい?って言った。それは我儘じゃないって言われたからティエラと似てるかもしれないね」

「オリバーお兄様はお母様似なのよ、きっと」

「そうかも」

二人が笑いあう。

「わたくし、ティアお姉様とお話しできてよかった。リオお姉様のおかげでオリバーお兄様とティアお姉様が仲良しなんだってわかったもの。」

「……そうだね。」

グラッドの笑みに含みを感じた。

部屋に戻った後、そのことについて尋ねる。

オリバーが学園入学前に送った手紙の内容を教えてくれた。

その時は幼くて内容を覚えていなかったけど、グラッドが学園入学前に読み直して印象に残っていたから覚えていたと言う。

「天才の記憶に残るにはどうしたものか、八歳差は大きいと書かれていました。」

それだけならオリバーがティアに対抗心をもっているだけだが、

「オリバー兄上が学園在学中は結構一方的に手紙が届いていました。しかもその天才についての記述が主な内容で、幼い弟に送るにしては意味のわからない行動だと思っていました」

確かにそれは奇妙だ。

「中身を読まれたかったのではないですか?」

「読まれたかった。確かにそれも考えました。報告がいくのは養父上か養母上、ティア様達をクロムで登用してほしかった?でもそれにしてはまわりくどい気がして」

「ティア様はフォッグ元子爵が怖いと、対峙するのが面倒だと言っていました。クロムで登用されるとどうしても子爵の耳に入ります。その二人の窮状を知らせたかったのでは?」

「いや、ティア様達が領主候補にと声がかかるほど優秀なら養父上達が知らないはずはない。その上でフォッグの端のほうで仕事をしていたということは二人が望まなかった可能性が高い。それなのにわざわざ兄上が知らせることをするでしょうか」

「うーん。単純に気持ちを書き綴っただけなら良いのでしょうけど。帰ったら手紙を読んでもいいですか?」

受け取り方の違いもあるかもしれないしと言うと、グラッドがそっと目を逸らした。

「もしかして、持ってきているのですか?」

「えぇ、まぁ」

「本人に尋ねるつもりでしたか」

「二人の様子を見てからと思いまして。でも尋ねるまでもないかと少し葛藤していました。」

グラッドが口を出すと藪蛇な可能性もある。

「これです。」

鞄から手紙の束を取り出し手渡す。

それを受け取り一通一通目を通す。

「……」

天才の記憶に残るにはどうしたらいいか。八歳差は大きい。

美人で賢いとかなんだそれ。冗談じゃない。

「……」

グラッドの提案に乗って分かる人にしか分からない難解なことをしようと思う。

フォッグの一般貴族達からあの人に伝われば成功だ。

「グラッドの提案って成績を丁度真ん中にすることですか?」

グラッドは首を横に振る。

「まさかそうなるとは思いませんでした。その当時天才って言ったら凄い人としか思っていませんでしたから。凄い人にしかわからない、他の人には理解されないことをしたらと返答したはずです」

「斜め上ですね」

視界に入るには主席卒業のほうが手っ取り早かったか?

でもなぁ、真ん中を狙うのも楽しくなってきたし、調整も上手くいっているから続けることにした。

「……」

図書館であの人の直筆の参考書を見つけた。司書に頼まれて書いたと聞いた。

頭も良くて字も綺麗とかどうなっている。

買い取れないだろうか。

「グラッド、学園入学前より後に読み直しました?」

「一応手紙の時期を確認するために軽くですが」

「殆ど日記ですよ、手紙じゃないです。これ」

「やっぱり」

「グラッドの言う、まわりくどさは理解しました。確かにこれでティア様の優秀さや登用に繋がらないですね。どちらかと言えばオリバー様が憧れている?ほうが近いです」

美人で賢い。あの人に伝わればいい。視界に入る。字も綺麗。他にも称賛と舌打ちの聞こえてきそうな愚痴のようなものが書き連ねられていた。

「手書きの参考書を買い取りたいは完全に何かの収集癖でしょうか。いや、好きなら、ほしい?恋か憧れかは微妙なところです」

「手紙の意図が気になっていましたが、尋ねないほうがいいかもしれません。」

少し考えてグラッドは結論をだした。

「ただの日記かグラッドに本を読んでる感覚を与えたかったとか別の意味で捉えておきましょう」

「そうですね。あの頃は手紙の内容は覚えていませんでしたが、手紙が届くのが楽しみだったのは間違いありませんでした」

オリバーの手紙を読み返しながらグラッドの思い出を聞く。

「クラリスとソリが合わなくて気が滅入っていたので、その点兄上の愚痴に助けられていたかもしれません」

姉ぶりたいクラリスと同じ歳の姉弟に差はないと思っているグラッドとは仲が悪かった。

ほぼ一歳差があるものと言うのがクラリスの主張だ。春生まれと冬生まれだと同じ歳でも成長度が違うから。

「グラッドは冬生まれでしたね。」

「リオから冬の上月に生誕祝いの手紙をいただいた時は嬉しかったですよ。」

覚えていないのは、暦、曜日に絡んでいるからだ。

今ならグラッドや自分の誕生日は分かっている。

夏の終わりから夏の始まりまでの約一年の間、誕生日があった人にも祝いは済んでいた。記憶はない。

祝いの手段は手紙を送るのが一般的だ。

「これからは思い出を共有できるのでよかったです」



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