表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/14

魔宝石からは逃れられない

お待たせ致しました。ブクマめっちゃ増えてて大感謝です!


1.


「―キーパー」


「―時は金なり、という言葉を知っているか?」


「―異界の格言だ」


「―あそこでサボっている邪妖精(トロール)共に聞かせてやると良いだろう」


2.


 遺物についての話を聞いた後、俺はひとまず寝室のある部屋より更に北側を探索することに決めた。


 このまま南に進んで遺物をやみくもに目指しても、あのマキナが複数居た場合はそこで詰んでしまう。

早く遺物を手に入れたいという気持ちも勿論有るが、まずは地盤を固めるべきだと考えたのだ。

 敵対勢力が居ると分かった以上、クリーチャーを鍛える必要がある。そして、食料を得なくてはならない。


「ひとまず南側の探索はやめ、食料や資材を探すぞ」


「南側通路には1チームだけ見張りで置いておく。残る全員で寝室の周辺や、更に北側を探索しよう」


 クリーチャーどもは了承の意と共に散らばっていった。

(みはり、りょうかいです)(はらがへっては)(なんとやらね!)

「グルゥ」「「ギギッ」」


 食事はやはりモチベーションにも直結する。まだそこまで空腹と言うわけでは無いだろうが、動けるうちに広い範囲を探索するべきだろう。




 …しかし、魔宝石か………

 存在自体は知っていたもののまさか自分がそれを求める立場になろうとは夢にも思わなかった。


 ジェムと呼ばれ地上の人間達がこぞって求めるそれは、魔界においても多くの者が追い求め、所有者はあらゆる富と名声を得るという秘宝である。


 実際にこの目で見たことなど無いし、そんな物と関わる事など、この先無いだろうと思っていたが。


「―魔宝石(ジェム)は最高の触媒にもなる」


「ほう、初耳だ」


「―ダンジョンハートに捧げる事で、異界の最深部より恐ろしい奴らを引き寄せるだろう」


「―しかし、お前にはまだ早い」


「―キーパーにも、<格>というものがある」


「―呼び寄せたところで自殺と変わらぬだろうな」


 まぁ、そもそもとして一国が買える程の秘宝を触媒として捧げるという狂気に満ちた行動などするつもりはない。

 だが先輩がそんな事を知っているという事は、恐らくは…()()()()()()過去に。

 呼んではならない者を呼びよせてしまった愚か者が。そして、滅ぼされた。

 成る程、どうやらそれが過去の歴史で奇妙な滅びを迎えている国々の原因の一つらしかった。


「―どのみち、<オパール>は単体では触媒にはならない」


「そうなのか?」


「―選ばれし十二の魔宝石(ジェム)はそれぞれが引かれ合う」


「―全てを揃えたものは全てを得る」


「―そう、言われている」


 つまりは、十二個存在するそれらを全て集めた時初めて何かを呼び出せるという事だろうか。しかし、それは本当に呼び出しても良いものなのだろうか?


 一つ有れば国が滅びるのに十分だというのに。


「わからない事も有るが、今は出来る事をやっていくしかない」


「―それでいい」


「―お前がふさわしいキーパーで有れば」


「―意識せずとも自然と集まってゆくだろう」


「―あれはそう言ったモノだ」


3.

 しばらくクリーチャー共に探索をさせた所、坑道の中に打ち捨てられた木箱から腐った果実と、カビの生えたパンを幾つか見つけることができた。

 恐らく、以前ここを使っていた坑夫達のものだろう。

 クリーチャー共にとっても最高の御馳走、とはいかないものの、人間より遥かに頑丈なコイツらは少々腐っていようが問題なく消化できるだろう。


()()()のとくいたいのはべつ!)(わたしはパスね!あんたたべなさい)「ギギッ!?」


「どのみちゴブリン達が優先だ。もう少し食料が手に入るまでは、インプは我慢してくれ」


 これでひとまず餓死はせずにすむだろう。ダンジョンハートには食料を産み出す機能もあるのだが、それ相応の捧げ物が必要なのである。

 当面はこの木箱の食料を大事に使いながら探索していくしか無いだろう。



 更に、寝室の周辺や北側を探索した結果驚くべき事が分かった。

 何とこの坑道、入り口が無いのだ。坑夫の詰め所があった場所の近くにある筈だとアタリをつけてクリーチャー共に周辺を探らせたが、それらしきものは発見できなかった。

 それどころか北側に伸びる通路が二つ有ったのでクリーチャーを二班に分けて探索させた所、なんと途中でお互いが正面から出会うという奇妙な現象が起きてしまった。


「何故別れ道がつながっているんだ?」


「いや、繋がっているだけではなく閉じられている?」


「―空間が、()()()ているのだな」


「―『オパール』の魔力によるものだろう」


「―かの石は逃げ出す事を認めていない」


 退路は無い、というわけだ。


 どの道逃げるつもりなど無いが、仮に石を手に入れる事が出来なかった時はこの陰気な坑道で朽ちていくしか無い、という事実は俺の背筋を冷たくさせるものだった。


「不死身になってすぐ命懸けってのは、あまり気持ちの良いものじゃないな」


「―確かにキーパーとなるものは、肉体的な死からは遠ざかる」


「―だが」


「―滅び、とはあまねく神にもどんな人にも訪れる」


「―不死と不滅は違うものだろう?」




tips


 忠誠度…クリーチャーには種族によりそれぞれ好きな事や嫌いな事がある。例えばゴブリンは戦闘や探索が好きだが、魔術の研究やトラップの開発は好まない。

 クリーチャーの嫌いな事をさせた場合作業効率は落ち、段々とキーパーの言う事を聞かなくなり、最悪の場合暴動を起こす。

 ダンジョンハートに最も近いクリーチャーが裏切ると言うことはつまり…

 ちなみに腐った食料を与えても忠誠度は少し下がる。


 逆に、高い忠誠度を持つクリーチャー共の働きは見ちがえるようだろう。


読んで頂きありがとうございました。

応援よろしくお願い申し上げます。


今年の花粉は人が死ぬレベルですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ