迂回作戦
「ーお前の素早い執筆速度に亀も舌を巻いたよ」
1.
「ーおお、邪悪なるキーパーよ」
「ーマスクはちゃんとしたか?」
2.
あれからしばらく探索を続けさせたが、特にめぼしい成果は得られなかった。そこで俺はひとまずクリーチャーどもを休ませた後、これからの方針を伝えた。
「まずは、探索ご苦労だったな」
「大きく分かった事としてはこの坑道には出口が無いという事と、ここにはマトモな食料が無くのんびりとしては居られない、という二点だな」
「「ギギッ」」「ギー…」「グルルル」
ゴブリンどもはやや不満そうな唸りを上げているがこればかりはもうどうしようも無い。反乱が起きる前に状況を動かさねば。
(たたかうしかないのか)(のんびりできないの!?)(さいあくなおしらせね)
「そして目指すべきは南の方角だが、そこには何体居るかもわからん殺戮機械がおり、一筋縄では行きそうも無い」
「更にそいつらを安全に倒す為にはインプ2体とゴブリン2体の戦力が必要…というわけだな」
前回の戦いを鑑みるに恐らくゴブリン2体だけでは犠牲無しには勝てず、3体で当たれば安全に処理できる、と言った強さが殺戮機械の強さとして妥当なところだろう。
ゴブリン基準で2.5体分の強さと言うのは正直そこまで絶望的な程では無く、殺戮機械を名乗るに相応しいのか微妙なところではあるが、この限られたリソースしか無いダンジョンに於いては絶妙につらいところだ。
また、前回は他のゴブリンどもに比べて明らかに動きの良い<はぐれ>が居たと言うことも加味しなくてはならないだろう。やはりゴブリン2体以上を含む3〜4匹で当たらねば危険だと言う事だ。
「ーキーパー、あの殺戮機械は恐らく下級兵だ」
うう、知りたく無かった。
下級兵、という事はアレよりヤバい奴が居る可能性も大いに有るという事か。今いる全戦力で当たってもアレが複数同時にいた場合手に負えそうに無いというのに、更に強力な上級兵がいれば致命的だ。
「つまり、正攻法で行くのはかなり厳しいということだな」
「幸いにもここは坑道だ」
「今ある錆びたつるはしでも何とか壁を掘ることは出来るだろう」
ダンジョンハートがある限り、キーパーはダンジョン内の危険を察知する事が出来るが、ダンジョンの構造がどこかと繋がっている場合、自分の使役するクリーチャーが行った事のある場所までしかダンジョンとみなされず未踏破の区域を知覚する事は出来ない。
そして現在のところダンジョンの知覚範囲には敵生体の気配は無い。前回殺戮機械と遭遇した場所には少なくとも新たな敵や増援は居ない様だ。恐らくフラフラと単独行動していた奴なのだろうな。
「とりあえずは以前敵と遭遇した場所にバリケードを張ろう」
「ねぐらにあるガラクタを積み上げれば簡易だが目くらましになる筈だ」
「そして南に直進するルートは塞いで、西側か東側からインプ達が穴を掘って迂回する」
この状況で生き残り<オパール>を手にするには、殺戮機械に気づかれないよう隠密にダンジョンを拡張し、敵がいればなるべく回避、もしくは引きつけて各個撃破していくしかない。こちらの存在を敵全体に気取られた瞬間に待っているのは破滅だ。
相手の側面より侵入し、素早く<オパール>を奪取する。言うは易いが行うは難しだな。
「ー悪くない」
「ー現状の戦力では最善の手だろうよ」
「ーだが、思考を止めるなよ、キーパー」
「ー生き残るのは常に考え続ける者だけだ」
ああ、分かってる。
状況は常に変化するものだ。イレギュラーには常に気を配らねばならない。
生き延びるための本当の試練が始まる。
3.
薄暗い坑道の奥、少し開けた所にそれはあった。それは全ての辺が異様なまでに真っ直ぐな直線で構成されており、この世界のどんな材質とも一致しない奇妙な箱であった。箱の大きさはそれ程でも無く、大人が一人で十分に抱える事が出来そうだ。正面にはガラスのような物が貼られておりそこには不思議な青い光が漏れている。
しかしこの箱が奇妙な点はそれだけでは無い。
時折意思を持つかのように震え、光ったかと思うと周囲の空間がぐにゃりと歪む。空間の歪みが元通りになるとそこには殺戮機械が現れた。
何と、この箱はどういう原理か召喚をしているのだった。
そして箱の上側には無機質で飾り気のない箱には不釣り合いに大きい黒々とした宝石が埋め込まれているのであった。
この世界に生きる者は決して知る由も無いのだが
それは、旧型のデスクトップパソコンのディスプレイだった。
tips
付喪神…ごく稀に、魔力や瘴気の濃い場所に長年あり続けたモノや、誰かの強い思いに応えたモノが変質する事がある。九十九神と書く事もある。
人に神が居るならば、モノに神が宿るのも道理だろう。
ひっそりと更新です。
コロナにかかったり彼女にフラれたりしてました。
何とか生きてます。




