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(ケイティの視点)眠い朝

 フルブロン村から急いで馬車を走らせて、王都に着く頃には夜が明けていた。馬車の中で多少仮眠は取ったけど、当然しっかり休めたわけがなく、眠気が酷い。とはいえ、ずいぶんと慌てた手紙だったのでターニャが心配だ。離宮には寄らず、そのまま後宮に馬車を乗り付けた。


「あぁ、ケイティ姉様、おかえりなさいませ」どうやらターニャもあまり寝ていないようだ。手紙にはアグネーゼの件としか書かれていなかったので詳しく聞かなくてはならない。

「ただいま戻りました。アグネーゼから手紙が来たのですか?」私は椅子に腰掛けながらターニャにも着席を促す。

「はい、三人目の悪魔と出会ったそうです」アグネーゼからの手紙を差し出しながらターニャが言う。「詳しく書かれていないのでよく分からないのですが、一緒に行動しているようです」

「三人目ですか……」私は頭を抱えたい気分でいっぱいになった。現在の計画は三人目の登場を想定していない。どういう人物なのかによるが、計画の練り直しが必要になるかもしれない。ターニャから受け取った手紙を見ていくと、なんと「ゼーネハイトに行く」との文字が見え、今度は本当に頭を抱えた。

「ゼーネハイトに行くとはどういうことなんでしょう?」ターニャは心配そうだ。

「これだけではなんとも分かりかねますね。アグネーゼなりの考えがあるのでしょう」分からないことだらけだ。


 ルフィーナが淹れてくれたお茶を一口飲んで落ち着こうと思ったけど、次のターニャからの言葉で、落ち着いてはいられないことが分かった。


「その上、昨夜遅くにブレンダ姉様から緊急で手紙が届きました。ラインラントの宿泊場所が何者かに襲撃されたそうです。撃退したそうですが、詳しくはまだ分からないと書かれていました」と言って、そちらの手紙も私に差し出した。

「えぇ……?」私は手紙を受け取りながら困惑を隠しきれなかった。「みな無事なのですね?」

「全員無事だそうです。でも、葬儀の場で襲撃なんて……。やはりクラインヴァインなのでしょうか?」

「分かりませんね」手紙には当然詳しいことは書かれていない。アグネーゼの件と同様、こちらも戻ってきてから話を聞かなくては分からないことだらけだ。


「こうも色々とあっては眠れませんね。昨夜はあまり寝ていないのでしょう? 私も戻りましたのでターニャは少し寝てください」

「でも……、ケイティ姉様もあまり寝ていらっしゃらないのでしょう?」

「大丈夫ですよ。私も後宮に詰めますので、荷物を運ばせつつ、少し休みます」


 ターニャと話をしたら離宮に戻ろうと思っていたけど、このような状況なら、いつ続報が届くかも分からないだけに、私も後宮にいた方が良いだろう。

 ルフィーナにターニャを寝かせるように頼み、ロザリアには離宮へ行って当面暮らせるだけの荷物を移動する手配をしてもらうことにした。荷物がやってくるまでには少し時間が掛かるので、私はこのままここで休ませてもらおう。居間だけど、立派な椅子が休むにはちょうど良い。

 ウトウトとし掛けたところで、居間の窓から猫のヴィットリーオが入ってきたのが目に入った。こんな時に外出していたのか。


「ヴィットリーオ、どこに行っていたのですか?」私は眠い目をこすりつつ問いかけた。

「これはケイティ様。お疲れですね」

「ええ。色々起こるものですね。これもアレクシウスの思し召しなのですか?」

「さて、どうでしょう? 色々な思惑が交錯しているようですね」


 ヴィットリーオは隣の椅子に飛び乗ると、眠そうにあくびをした。このまま眠るつもりなのだろうか。


「ヴィットリーオ、眠る前に一つ教えてください。コルヴタールはどのような悪魔なのですか?」

「変わっている、のひと言ですね。私と同じように、楽しむことを第一にしています」

「楽しむこと……。では、アグネーゼといることが楽しいと感じたのでしょうか?」

「そうかもしれませんね。詳しいことは分かりませんが」


 アグネーゼが楽しいことでコルヴタールを釣っているのであれば、フィルネツィアにも何か楽しみを用意する必要があるかもしれない。フィルネツィアには娯楽と呼べるものがあまりないのだ。


「どういうことを楽しいと感じるのでしょう?」

「割と何でも楽しめるタイプでしたよ。封印前は、私と一緒によく人間に混じって遊んだものです」

「なるほど。あなたとは仲が良いのね?」

「人間で言うところの、家族のようなものですからね」ヴィットリーオはまたあくびをすると、目を閉じた。「申し訳ありませんが、とても眠いのでご質問はまた改めてでよろしいですか?」

「ええ、おやすみなさい」


 私も相当に眠いので、質問を改めるのは賛成だ。コルヴタールのことはもちろん、アレクシウス絡みの話もスッキリと腑に落ちないところがある。頭を整理しないといけないと考えていたら私も眠りに落ちていた。

色々動き始めたことに不安を隠せないケイティです。

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