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(ターニャの視点)お見舞い

 桔梗離宮に戻り、ルチアたち側近に無事を報告して、遅れてはいるけど学校に行こうと思ったら止められた。別に怪我でも病気でもないのだけど、皆が休めと言うので休むことにする。

 ルフィーナが一睡もしていないということなので休んでもらい、私はのんびり部屋で本でも読もうと思ったのだけど、一人にしておくのは怖いと言って、アグネーゼが部屋に来ている。ちなみにエレノアは夜通しブートリアと王都を馬で往復したため、疲れて寝ているそうだ。


「皆さんにご迷惑をお掛けしてしまいしたね」

「寝ている間に勝手に転移させられたんだから、仕方ないわよ。ターニャが気に病む必要はないわ」

「なんで私なのでしょうね?」

「それはヴィットリーオに聞けばわかるかもしれないわね。ターニャを転移させたのが誰で、なんの目的か分かれば、なぜターニャなのか分かると思う。案外、ヴィットリーオに気に入られてるのかもよ」と言ってアグネーゼはニヤっと笑った。

「……怖いこと言わないでください」


 悪魔に気に入られても嬉しいことなど何もない。できれば二度と対面したくないけど、そういうわけにもいかないのが残念だ。


「ところで、ターニャ」

「なんですか、アグネーゼ姉様?」

「ターニャはヴィーシュで魔術を学んだの?」

「……魔術ですか。小さい頃にお母さまから簡単な実用魔術は学びましたが、ちゃんとした魔術は課題をいただいてからですよ」


 私がそう答えるとアグネーゼはちょっと考えこんで、頭をひねりながらまた質問してくる。


「それにしては上達が速すぎるんじゃない? 防御も攻撃も補助も、祈り無しで使えるのよね?」

「ウェンディの教え方が良いのですよ。彼女はすごい魔術士です」


 ウェンディにはあれからもちょいちょい魔術の相談に乗ってもらったり、教えてもらったりしている。私一人なら、最初の防御魔術の課題で止まってしまっていたに違いない。さすが魔術大国エーレンスだ、うんうんと一人で納得していると、アグネーゼは納得していないようだ。


「そういうものかしらね。ターニャは飲み込みが速いのね」

「そう言えば、神に祈りが届きやすいタイプなのかもしれないとウェンディに言われたことがありますよ」

「なるほどね……」


 そう言うとアグネーゼはまた考え込んでしまったので、私は予定通りのんびりと本を読むことにした。




 夕方になるとブレンダとケイティが見舞いに来た。


「やぁ、ターニャ。気分はどうだい?」

「無事でなによりでしたね、ターニャ」

「お二人にもご心配おかけしました。何ともありませんので大丈夫です」


 学校帰りなのだろう、二人は制服のままだ。


「アグネーゼは?」とブレンダが部屋を見回す。

「さきほどまでここにいてくれたのですが、ちょっと休むと部屋に戻られました」

「そうか、大活躍だったものな。彼女の迅速な対応がなければもっと大変だったろう」

「はい、助かりました」


 ブレンダが言う通り、アグネーゼが物音に気付いてくれなければ、私はもっと長い時間あの牢の前で倒れていたことになるだろう。冬の寒い時期でもあるし、風邪をひいていたとしてもおかしくない。


「またあのダンジョンに行かなければならないようですが、ターニャは大丈夫ですか?」心配そうにケイティが言う。

「……大丈夫ではありませんが、当事者になってしまったようですので、諦めています」

「そうですか。次は私たちも一緒に行きますので、安心してください」

「え? そんな――」

「ハハハ、私たちが行かないわけがないだろう」


 止めても無駄だとばかりにブレンダが笑う。まぁ、どうせ一緒に行くだろうとは思っていたので、想定範囲内だ。


「ありがとうございます。では、次の休みにはよろしくお願いします」

「うん。剣を磨いておかないとな」ブレンダは少し嬉しそうだ。


 ケイティが肩をすくめながら言う。「ですが、魔物はほとんどいないでしょうし、万一ヴィットリーオと戦うような羽目になれば、私たちの剣や魔術など無駄でしょう」

「うむ、ケイティの言う通りだな。戦いにならぬように、あるいは皆を守るための準備をしっかりすべきだな」


 夕食前ということもあって、二人は早々に帰っていった。ルフィーナが二人の見送りから戻ってくると、私たちはこれからのことを考えなくてはならない。


「また大勢でダンジョンに行くことになりそうですね、ルフィーナ」

「二度とこのような失態はいたしません。必ず私がターニャ様をお守りしますので、ご安心を」


 私が転移陣で連れ去られたことをルフィーナはずいぶんと気に病んでいるようだが、仕方がないことだと私は思う。


「頼りにしています。ところで、もう幾日もありませんが、何か準備しておくことはあるかしら?」

「どうでしょう? ケイティ様がおっしゃった通り、悪魔と戦うわけにはいかないでしょうから……」

「そうですね。緊急脱出ができるような魔術でもあると良いのですが」


 ダンジョンから皆で脱出できる魔術があれば、何かの際には役に立ちそうだ。さっそく明日、ウェンディに聞いてみよう。

ちょっと短いですが、お見舞いです。

今日はもう一本アップ予定です。

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