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(ブレンダの視点)国王陛下との話し合い

 私たち四人が王都に戻る頃にはすでに日が暮れかけていた。四人とも何も話さず、私も馬車の窓から外を眺めながら、思考の海に沈んでいた。


 ……悪魔などという存在があり得るのだろうか?


 少なくとも人間ではなさそうではある。もっとも牢の中を詳しく調べたわけではないので、まったくのペテンという可能性も捨てきれない。

 そんなことを考えている内に、馬車は門をくぐり、貴族街に入っていく。すると外から、


「ブレンダ様!」と声が聞こえた。確認するまでもなくウェンディだ。私は馬車を止めさせ、降りるとそこにはウェンディとロザリアが怖い顔で立っていた。


「済まない、ウェンディ。言い訳のしようがないよ」

「ご姉妹だけで外出など、何かあったらどうするのですか。ブレンダ様は長女でいらっしゃるのですから、無茶をお諌めすべきお立場ではございませんか」


 隣ではケイティがロザリアに謝っている。さすがのケイティもバツが悪そうだ。すると、一頭の馬が門をくぐって馬車の隣に止まった。乗っていたのはルフィーナとエレノアだ。二人とも馬を降りるとそれぞれの主のもとに駆け寄り、お説教を始める。それを見た私はふと気づいたことをウェンディに尋ねる。


「ウェンディ、もしかしてルフィーナとエレノアの二人は、ずっと私たちを付けていたのか?」

「当然です。何かあっては困りますから。二人には王都を出た皆様を付けてもらい、私とロザリア殿が待機していました」


 なるほど。ダンジョンでも見守られていたのか。さすが優秀な護衛たちだ。ということは、


「ルフィーナ、エレノア、ちょっとよいか?」と私は二人に声を掛ける。二人はお説教を中断し、私の方を振り返る。ちなみにお説教といっても、ターニャは涙目でルフィーナに謝っているが、アグネーゼは全く悪びれる様子も見えない。好対照な二人だ。


「なんでしょうか? ブレンダ様」

「二人もダンジョンの最奥には入ったか? あの男を見たか?」


 二人はちょっと顔を見合わせ、エレノアが答える。


「陰から隠れて見ていましたので、はっきりとではございませんが、私たちも見ました」

「……そうか。その話はこれから国王陛下に報告するので、他言は無用にしてくれ」

「かしこまりました」

「ウェンディ、済まないが、至急国王陛下と内密に面談したいのだ。手配を頼む」

「内密にですね。かしこまりました」


 ダンジョンで何かあったことを察したウェンディが慌てて王宮の方に駆けていく。私は残った者たちを振り返り、この後のことを頼む。


「みなはいったんそれぞれの離宮に戻り、身なりを整えてから、後宮に集合してくれ。夕食前に国王陛下と話しておきたい」




 ダンジョンで起きたことをひと通り国王陛下に説明すると、まず姉妹だけで出掛けたことを叱られた。その上で、ガブリエラも呼ばれ、私たちがダンジョンで見たものの話に移る。


「ヴィットリーオという名は知っているか、ガブリエラ?」

「いえ、存じません。五人の悪魔を封じたという話が万一本当だとしても、ずいぶんと昔の話なのでしょう」

「王宮図書館で関連する話を調べさせよ。内密にな」

「かしこまりました」


 ガブリエラが扉の外に出て、部下に指示を出して、また席に戻ってくる。


「何にしても、ダンジョンに行ってその男に会い、詳しく話を聞いた方が早いでしょう」

「危険だが、話を聞かぬわけにはいかないな。次第によっては、さらに封印を行い、万一にも出れぬようにする必要がある」


 私はヴィットリーオの言葉を思い返しながら、二人に話す。


「……世界を滅ぼしかけた、と言っていました。危険な存在かもしれません」

「ええ。真偽がはっきりするまでは慎重に動く必要がありますね」とガブリエラは頷く。


「よろしいですか?」とアグネーゼが発言を求め、許可を得て話し始める。


「ヴィットリーオは、『五人の一人』と言っていました。つまり、あの男の話が本当なら、あと四人いることになりますよね?」

「そうなるな」

「フィルネツィア国内とは限りませんが、他にも突然現れたダンジョンなどがないか、調べさせるべきと思います」

「うむ、その通りだな」


 国王陛下は頷くと、騎士を呼び入れ、指示を与える。騎士が出ていくと、アグネーゼがさらに言葉を続ける。


「フィルネツィアにあと四ヶ所あれば良いですが、他国の場合、さらに別の問題が生まれるかもしれません」

「……悪魔を利用しようという国が現れる、ということか?」

「はい。他国の状況もよく監視する必要があると思います」

「その通りだな。注意しよう」


 さすがアグネーゼは色々なことに気が回るなと感心していると、ガブリエラが私たち顔を見回し、話しかける。


「その男の尋問には私が参ります。ご姉妹のうち一人、一緒に来て欲しいのだけど、どなたが適任かしら?」


 それなら私がと言おうとした瞬間、アグネーゼがパッと手を上げ、「私が行くわ。ダンジョンの順路も覚えているし、あの男と話をするのであれば、感情を顔に出さない方がいい。私が適任だわ」と立候補した。そう言われると、私はダンジョンの中をどう進んだか覚えていないし、表情も顔に出やすい。たしかにアグネーゼに任せた方が良さそうに思う。


「分かりました。では、アグネーゼ様にお願いします。あと、ベアトリーチェ絡みなので、ターニャ様も一緒の方がよろしいでしょう」

「私もですか……、分かりました」


 しぶしぶターニャが頷く。話はひとまず終わりだ。もうちょっと情報が集まるまで、この話は内密にするよう言い渡され、私たちは国王陛下の部屋を退出した。

実はルフィーナとエレノアは付いて行ってました。

次話は明日予定です。

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