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(ターニャの視点)祠のダンジョン攻略 その3

 ドラゴンて……。


 私は思わず頭を抱える。あまり魔物のことを知らない私でも知っている、強力な魔物だ。ヴィーシュでも山奥などで稀に出現することがあり、その際は騎士や魔術士が総出で退治に向かっていた。


「どうしますか? 引き返しますか?」


 扉をそっと閉めながらルフィーナが私に問いかける。


「ガブリエラの課題とはいえ、姉様たちをこれほどの危険にさらすわけにはいきませんね。残念ですが──」

「そんなのダメよ」


 私の言葉を遮ったのはアグネーゼだ。


「倒しましょ。このメンバーなら勝てるわよ」

「そんな無茶な。危険すぎます」

「いや、上手く立ち回れば勝てると思うぞ」


 ブレンダもアグネーゼの意見に賛成する。「ただ、ドラゴンだけでなく、ガレスの姿も見えたので、それぞれがしっかり役割を果たさないとならないが」と続けた。ガレスとは四本足タイプの魔物で、体は小さいが鋭い牙を持つ危険な魔物だ。


「ケイティ姉上はどう思う?」

「ターニャのためですもの。頑張りますよ」

「三人の姉はこう言ってるけど、どうする? ターニャ?」


 三人ともやる気になっているみたいなので、もう戦うしかない。本当はルフィーナの意見を聞きたいところだけど、その目は大丈夫と言っているようにも見える。


「分かりました。ありがとうございます。よろしくお願いします」


 やると決めたからには作戦が必要だ。突っ込むだけだは勝ち目はない。短い話し合いの末、決めた作戦は次の通りだ。

 まず、ブレンダとルフィーナがドラゴンに攻撃を仕掛け、注意を惹く。その間に、ロザリア、エレノア、ウェンディの三人で十匹以上はいるであろうガレスを殲滅する。ここまでが第一段階だ。

 次はドラゴンだ。ドラゴンの鱗は非常に硬く、容易に剣は通らない。ただ、ドラゴンには弱点がある。アゴの下に、逆鱗と呼ばれる逆さの鱗があり、そこだけは剣が通る。もちろん、ガードされているので、簡単には狙えないが、なんとか隙を作って逆鱗を突かなくてはならない。ちなみにこのドラゴンに関する知識もアグネーゼによるものだ。よっぽど魔物好きなのですね。

 そこで次は、魔術の出番だ。ドラゴンに攻撃魔術は効かないが、目くらましをしたり、怯ませたり、足止めをしたりすることはできる。つまり、逆鱗を突く隙を作るのだ。


「うまく隙を作れると良いのですが」

「なんとか上を向かせて欲しい。そうすれば、私とルフィーナはその隙を見逃さない」

「羽はあるけど、幸いあのタイプのドラゴンは飛ばないわ。隙も作りやすいと思うわ」


 作戦を決めた後は、各自水を飲んだり、ポーションで魔力を回復してもらったりして、突入の準備をする。ケイティが全員に水属性の加護の魔術を全員に掛ける。これでドラゴンが吐き出す炎も軽減できるらしい。


 それにしても不思議だ。ドラゴンに挑むというのに、あまり怖くない。なんとも心強い姉たち、そして護衛たちだ。


「では行くぞ! 気を抜かないように!」


 ブレンダの掛け声とともに、私たちは部屋に飛び込む。学校の体育館が二つは入りそうな広いフロアだ。その中にドラゴンは一匹、ガレスは十五匹はいそうだ。


「ウェンディ!」

「はい!」


 ウェンディが返事とともに右手を掲げ、攻撃魔術を展開する。部屋全体の魔物に向けての範囲攻撃魔術だ。青い光が魔物たちに届くと、ドラゴンとガレスの群れが一斉にこちらに向かってくる。


「ガレスは任せたぞ!」


 ブレンダとルフィーナが飛び出し、ドラゴン目指して攻撃を仕掛ける。二人の攻撃にドラゴンは進路を変え、追いかけていく。ドラゴンだけを引き離す作戦通りである。

 私たちはまずガレスの殲滅だ。ロザリアとエレノアの二人が前に出て、剣を構える。牙を剥いて襲い掛かってくるガレスの群れにウェンディの攻撃魔術が炸裂し、ロザリアとエレノアが一匹一匹素早く倒していく。


 ウェンディはもちろんですが、やはりこの二人も本当に強いですね。


 十五匹はいたはずのガレスはあっという間に殲滅できた。ここからである。

 次は部屋の中央奥側でドラゴンと戦っているブレンダとルフィーナの援護だ。私たちも奥へ進み、陣形を整える。私は私たちの前に少し大きめに水の防御魔術陣を展開し、ドラゴンが吐く炎のブレスに備える。


「よし。ではウェンディ頼みます」


 私の声にウェンディは頷くと、次々と攻撃魔術をドラゴンの顔あたりに撃ち込む。全く効かないが、鬱陶しそうにドラゴンは顔をしかめる。

 私はドラゴンの足元に足止めの魔術を展開する。足元を凍らせる水属性の補助魔術で、さすがに完全には効かないが、ドラゴンの動きはちょっと遅くなった。

 それでもドラゴンは怯まない。両腕を振り回し、鋭い爪でブレンダとルフィーナを切り裂こうとする。

 私も攻撃魔術の援護だ。私が撃てるのは基本的な攻撃魔術だけなので痛くも痒くもなさそうだけど、目のあたりにいけば、鬱陶しさくらいは感じるだろう。


「はっ!」


 ウェンディと私が魔術を撃ち込む間も、ブレンダとルフィーナの二人は爪をかいくぐりつつ、攻撃を続けている。鱗が硬すぎてダメージは与えられていないが、二人で連携して隙をうかがいながら剣を振り続ける。


「炎のブレスがくるわよ!」


 アグネーゼの声に私は展開している防御魔術陣にさらに魔力を込める。咆哮とともにドラゴンの口から猛烈な炎が私たちに向けて吐き出されたが、水の魔術陣は完全に炎を防いでいる。


 防ぎ切りました!


 ドラゴンが炎を吐き切った直後、ウェンディが放った攻撃魔術が鼻先に直撃し、ドラゴンは反射的に首を振った。その刹那をブレンダは見逃さない。


「ルフィーナ!」


 ブレンダが叫んだ時には、すでにルフィーナはドラゴンの首元に飛び込み、逆鱗にその剣を突き立てていた。ドラゴンが苦しそうに咆哮をあげる。


「今よ! ウェンディ!」とのアグネーゼの声に、ウェンディは剣に向かって雷撃系の攻撃魔術を撃ち込んだ。雷撃が剣に吸い込まれると、ドラゴンは動きを止めた。そして、体中の鱗の隙間から煙を発しながら、ゆっくりと崩れ落ちた。

協力してドラゴンを倒しました。

今日は後一本上げる予定です。

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