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(ターニャの視点)祠のダンジョン攻略 その2

 祠の地下だからそれほど広くはないだろうと思っていたのだが、少し歩くとそれなりに広さがありそうなダンジョンであることが分かってきた。通路はそれほど複雑ではないけど、分かれ道などもあり、なかなか降りる階段が見つからない。

 出てくる魔物は、小型のムルムーやモゴルゴくらいだ。ムルムーは蜘蛛を大きくしたような魔物で、モゴルゴは飛行型の小さな蝙蝠のような魔物だ。もちろん見たのも初めてで名前も知らなかったけど、なぜか詳しいアグネーゼが色々と解説してくれた。見つけるたびにブレンダが飛び出して一瞬で狩ってしまうので、防御魔術や補助魔術の出番はない。


「弱っちい魔物しかいないわねぇ」

「魔物が弱いに越したことはないですよ、アグネーゼ姉様」


 隣でエレノアが無言で頷いている。普段から苦労していそうだ。


「そう言えば、アグネーゼ姉様はどうやって今日私たちがここに来ることを知ったのですか?」

「フフ、内緒よ。でも、こうして四姉妹で遊べるなんてなかなかないことでしょ?」

「そうですね。ダンジョンじゃなかったらもっと良かったのですけど……」


 遊びに相応しい場所ではないけれど、たしかにこうして四姉妹で出掛けるのは悪くない。


「扉があるぞ。注意してくれ」


 ブレンダとルフィーナが剣を構えて、扉を開けて部屋へ飛び込む。だが、魔物はいなかったようだ。「大丈夫だ、みな入ってくれ。下への階段もある」とのブレンダの言葉に私たちも部屋に入る。ついでにちょっと休憩だ。


「やっと地下一階クリアですね。思ったより時間が掛かりますね」

「うむ。意外に広くて驚いたな。寒くはないか、ケイティ?」

「ええ、大丈夫です」


 ブレンダとケイティが水を飲みながら話をしている横で、アグネーゼは興味深げに部屋を見回している。


「部屋と言い、通路と言い、明らかに人の手で作られたものだけど、いったい何のためにこんな地下迷宮を作ったんだろう? この部屋にも何か置かれていた跡があるわね」


 たしかに、部屋の床に何かが置かれていたような、色の変わった部分がある。棚でもあったのだろうか。


「ロザリアに調べてもらったのですけど、公式には祠の所在が明かされていないようです。つまり、秘密の祠ですね」

「でも、騎士団が管理しているんでしょ? 戦争で騎士不足のご時世に、この祠を管理するために騎士が二人も常駐してるのは不自然な気がするわ」

「フフ、そうやって疑問点を見つけて、探っていくのね。アグネーゼが情報収集に長けているわけが少し分かったような気がします」

「あら、褒めても何も出ないわよ、ケイティ姉上」


「そろそろ、地下二階へ下りよう」とのブレンダの声で、私たちは慎重に階段を下っていく。


 地下二階もこれまで同様に、レンガ造りの部屋と通路の組み合わせだ。魔物はちょっと強くなっているようで、地下一階にいたムルムーやモゴルゴに加え、ファリトと呼ばれる動物型の魔物も出てきた。ブレンダとルフィーナの敵ではないが、数が多くなってきたので、エレノアとロザリアも剣を振るうことが増えてきた。


「魔物が増えて来ましたね。あまり離れないようお願いします」

「分かりました、ウェンディ」


 ウェンディも飛んでいるモゴルゴを魔術で撃ち落としている。攻撃魔術も祈り無しで繰り出しており、やはりウェンディは優秀な魔術士なのだと再確認した。

 私はと言えば、防御魔術をいつでも出せるように心の中で準備しつつ、いつでも足止めの魔術を出せるように、周りを注意しながら進む。結構、神経を使う役割だ。


「宝箱でも落ちてないものかなぁ」


 アグネーゼは変わらず暢気に周りをキョロキョロ見ながら進んでいる。緊張感が無いというか、おそらくエレノアを信頼してるのだろうとも思う。私もこの場にルフィーナがいてくれるので安心して進めるのだ。


 しばらく右へ左へと迷いながら進んでいくと、先に扉が見える。おそらく、部屋があるのだろう。


「地下二階はあっさりクリアかな」と言いつつも、油断なく剣を構えて、ブレンダとルフィーナがまず部屋に入っていく。


「魔物はいないな。階段もあるぞ」


 ブレンダの言葉に私たちも部屋に入る。


「さぁ、いよいよ地下三階だ。ガブリエラの言葉が本当なら最終フロアということになるな」

「最後は手強い魔物が待ってるのよね?」

「止めて下さいませ、アグネーゼ姉様」


 階段を下りると、一本道の通路が続いている。魔物の姿はない。通路の先はこれまでより少し大きめな扉があり、おそらくその部屋が最奥なのだろう。


「地下三階は一本道か。迷わなくて済むのは良いけど、ちょっと物足りないかな」


 ブレンダはそう言いながら、今度も慎重に扉を少し開ける。そして、中を覗き込んで、固まったように動かない。同時に隣にいるルフィーナも息を呑んで止まっている。


「どうしたのですか? 二人とも」と言いながら私も扉の隙間から部屋を覗くと、そこはかなり広いフロアになっており、中には私たちの身長の五倍はありそうな大きなドラゴンが鎮座していた。

ダンジョンその2です。

次話は明日です。

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