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(ターニャの視点)祠のダンジョン攻略 その1

 フィルネツィア王立女学校の敷地は広い。レンガ作りの校舎に体育館、プール、グラウンドなどの施設のほかに、鬱蒼とした森も敷地内にある。それほど広いわけではないが、道もなく、奥深い森だ。

 当然、森は立入禁止になっていて生徒が立ち入ることはないが、ポーションの原料となる触媒が採れるらしく、許可を得て森に入っていく魔術士の集団をたまに見かけることがある。

 私とルフィーナは森の中にあるという祠に向かって、道なき道を、ガブリエラが書いてくれた地図を頼りに歩いている。


「学校の中にこのような森があるのは意外ですが、そこに祠があるのはともかく、ダンジョンがあって魔物がいるというのは驚きですね」

「ターニャ様は魔物は見慣れているではありませんか」

「ヴィーシュにいたのは、小型のポルソやオロバくらいではありませんか」


 ポルソもオロバも森に棲む小動物系の魔物だ。ヴィーシュでは剣士を目指す子供たちが競って狩るような、小さくて弱い魔物である。大きな魔物もたまに出たようだけど、すぐに城の騎士たちが狩ってしまうので、私は見たことがない。


「それよりも、ダンジョンではとにかく、防御に徹してくださいね。常に防御魔術を出せるように身構えていてください」

「分かっています。戦いはルフィーナに任せます」


 森を進んでいくと、行く手に祠のような建物が見える。高い木々に囲まれていて、これでは森の外からは見えないだろう。祠が見えたことでルフィーナなホッと胸をなでおろす。


「さすがに正しい地図でしたね。ガブリエラ様のことなので、地図にも何か仕掛けがあるのかと思いました」

「……ガブリエラもそこまで意地悪ではないでしょう」


 祠の前にはガブリエラが何人かの魔術士を連れて待っていた。騎士団員もいるようだ。ケイティとロザリアはすでに到着しており、そして驚くべきことに、なんとブレンダとアグネーゼがいる。


「ブレンダ姉様とアグネーゼ姉様! どうしてここに!?」

「ハハハ、水くさいではないか、ターニャ。こういう時こそ私を頼ってくれないと」

「そうよ、ターニャ。面白そうなことをする時は呼びなさいよ!」


 にこやかな二人の隣で、ケイティは「私が言ったわけではありませんよ」という目で苦笑している。私たちのやり取りをニヤニヤ見ていたガブリエラはひとつ手を叩き、混乱した場を仕切り始める。


「さぁ、ターニャ。これでメンバーは揃ったのね。この八人に向かってもらうのは、この祠の中にあるダンジョンの一番奥よ。といっても、地下三階の小さなダンジョンなので、そんなに時間は掛からないと思うわ。最奥に石碑があって、そこにお宝を置いてきたので、それを持って帰ってくること。いいわね?」

「……分かりました」


 もはやこのメンバーで行くしかないのだろう。私は頭を抱えつつ頷く。四姉妹と護衛が四人で、計八人だ。


「さぁ、行こうではないか」


 ブレンダが上機嫌で祠の扉を開き、中に入っていく。そう言えば、最近ブレンダは少し元気がなく見えたけど、ダンジョンで戦えるとあって、かなりテンションが上がっているようだ。

 祠に入ると、中には何かの石像や石碑が並んでおり、神秘的な雰囲気だ。奥の方に地下へ降りる階段が見える。


「じゃ、気を付けて行ってきてね」というガブリエラの声を背に私たちは地下へ降りた。


「灯火の魔術を使わなくても、中は明るいのだな」


 階段を降りると、何も無い小さな部屋になっており、周囲の壁は白っぽいレンガのような石を積み重ねているようだ。ダンジョンとはいっても、そもそも人が作ったもののようだ。右側の壁に通路が開いていて、そこから先に進めるようだ。


「じゃあ、さっそく行こう」と言って通路の方へ向おうとするアグネーゼを私は止める。


「ちょっと待ってください、アグネーゼ姉様。道中の並び方と役割を再確認させてください」

「そうだな、では私が先頭を行こう」

「ルフィーナも一緒に先頭でお願いします、ブレンダ姉様」

「おう。では私が左前方、ルフィーナは右前方の警戒を頼む」

「かしこまりました」


 ケイティと私、それにウェンディは中団で魔術の担当だ。当初は私が攻撃魔術も担当するつもりだったのだが、ウェンディがいるので攻撃魔術は任せられる。私は防御魔術、ケイティが回復魔術の役割だ。魔物の足止めなどは適宜行うことにする。


「そう言えば、アグネーゼ姉様は魔術は使われるのですか?」

「うーん、大した魔術は使えないから、三人に任せるわ。私は応援するよ」


 応援て……とも思ったが、前で戦うとか言い出さなくて良かった。


「では、アグネーゼ姉様も私たちの側にいてくださいね。ロザリア、エレノアは私たちの周囲をお願いします」

「かしこまりました」

「承知いたしました」


 ロザリアとエレノアの二人が頷く。


「役割は決まりましたね。では、進む前に加護の魔術を唱えておきますね」


 ケイティはそう言うと、懐から短剣のようなものを取り出し、祈り始める。すると、短剣が金色に輝いたかと思うと、金色の光が私たちに降り注ぐ。


「光の加護の魔術です。さぁ、慎重に進みましょう」


 私たちは部屋から通路に入り、先を目指して進んでいく。

ダンジョン攻略が始まりました。

四姉妹+護衛のパーティーで進みます。

次話は明日です。

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