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(ケイティの視点)焦る母と隠す娘

「アグネーゼがずいぶんと積極的に動いているようです」

「そうですか? 真面目に執務に取り組んでいるように見えますけど」

「それは表向きです。騙されてはなりませんよ、ケイティ」


 母の目にはかなりの焦りが見える。どうせ、お爺さまあたりからプレッシャーを掛けられているのだろう。


「エヴェリーナの側近がかなり動いているようですから、ケイティも注意しなくてはなりませんよ」


 エヴェリーナはアグネーゼの母だ。側近は諜報に優れているらしいけど、私はそんなことに興味はない。第三王妃である母としては、第二王妃のエヴェリーナに後れを取りたくないという焦りもあるのかもしれないと思った。


「注意と言われましても……。私にできることは祈ることくらいですよ」

「なぜそんなに他人事なのですか。最近の姉妹たちの言動や行動などでおかしなところはありませんか?」


 最近のブレンダはちょっと暗いように感じるし、アグネーゼは魔導書について何か知っているようだし、ターニャからはダンジョンへの同行を頼まれている。これらについては一切お母さまには報告していなし。


「おかしなところはないと思いますけど。みな、課題を頑張っていますよ」

「まぁ、動いているのは後ろにいる者たちでしょうから、表立っての動きはないでしょうね」

「ところで、以前話のあった、なんとかの魔導書については何か分かったのですか?」

「ベアトリーチェの魔導書ですね。いえ、とくに情報はないようです。お父様も魔導書の存在そのものが怪しいのではないかと仰っていましたよ」


 やはり、聖堂や教会の情報力では掴めないですか。そう考えると、ネーフェの情報収集力はずば抜けていますね。


「魔導書については特に気にすることはありません。ケイティは引き続き、しっかりと授業を受けて過ごしなさい。あとは、姉妹たちの変化にも気を付けて下さい」

「ええ、お母さま」




 母が私の自室から出ていくと、堪りかねたようにロザリアが口を開く。


「……やはり、ドナート様にはお話にならないのですね」

「妹からの私的なお願いをいちいち親に報告する必要はないでしょう?」

「私的ではあるのでしょうけど……」

「いいのよ、ロザリア。すべて私の責任で話さないことにしているのです。あなたが気にすることはないわ」


 ロザリアはあまり納得はしていない表情だが、諦めの目で「かしこまりました」と頷く。


「それよりも、女学校の祠のダンジョンのことは何か分かりましたか?」

「申し訳ございません。女学校内なのですが、騎士団が厳重に管理していて、詳しくは分かっていません」


 ターニャから依頼を受けてまだ三日しか経っていない。しかも、他の者には明かさず、ロザリアだけで調べてもらっているのだ。さすがに詳しいことは分からなくても無理はない。


「実際に潜るまでまだ三週間ほどありますので、引き続き情報を集めて下さいませ」

「かしこまりました。警備している騎士の顔ぶれを見ると、さして危険なものではないのではないかと思われます」

「そんなに危険なものが学校の中にあったら怖いですしね」


 それでも魔術士団長がターニャの課題とするくらいだから、それなりに手応えはあるのだろうとは思う。生半可な魔物はルフィーナによって瞬殺だろう。それは課題にならない。


「攻撃面はルフィーナとロザリアで良いとしても、防御はちょっと心配ですね」

「魔物の数が多い場合が少し心配ですね。その場合、私がケイティお嬢様をお守りしますので、ご安心を」

「ターニャも守ってあげてくださいね」


 母に内緒にしていることもあり、私はもちろんターニャにも怪我があっては困る。大ごとになれば話も漏れてしまうだろう。


「誰にも怪我なく、スムーズに終わらせることが重要ですよ」

「無論お怪我はさせませんが、スムーズにはいかない予感がします……」


 私もそのような気がするけど、今から気にしても仕方ないですね。

今日も後でもう1本上げます。

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