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(ターニャの視点)新たな課題に向けての検討とお爺さま

 とりあえず、ダンジョンへ一緒に行ってくれるかどうかをケイティに確認することにした。ダメなら別の人を考えなければならないけど、最悪、回復魔法は無しでも大丈夫じゃないかとも思っている。

 できれば明日確認してしまいたいのだが、ケイティに話をする場所が問題だ。普通なら女学校の昼食で会えるわけだけど、その席にはブレンダとアグネーゼもいる。


「間違いなく、そのお二人も一緒に行くと言うでしょうね」


 そうルフィーナが言う通り、ダンジョンに行くなどと聞けば、二人とも間違いなく付いてくるだろう。私としてはあまり大ごとにしたくないので、その二人には聞かれないようにしたい。

 そこで、「二限と三限の間の中休みに会いに行かれるのがよろしいのでは?」というルフィーナの案を採用して、二年生の教室に向かった。


「こんな時間に会いにくるなんて珍しいですね」

「申し訳ありません、ケイティ姉様。どうしても二人で話がしたくて」


 私はケイティを屋上に連れ出し、話を始めた。通常の授業間の休みよりは長いとはいえ、長々と話をしている時間はない。ちなみに二人とは言っても、二人とも護衛は連れているので正確には四人だ。

 ガブリエラから出された課題と、ダンジョンに行かなくてはならない旨などを話し、ケイティに同行を頼む。


「というわけなのですけど、ケイティ姉様も一緒に行っていただくことをご検討いただけませんか?」


 ケイティはちょっと考え込み、振り返って、ロザリアと言葉を交わす。ロザリアがずいぶんと慌てているように見えるが、大丈夫だろうか。


「分かりました、行きましょう。ターニャ」

「ちょっとお待ちください、ケイティお嬢様。それは……」

「ロザリア、私たちの話に勝手に割り込んではダメですよ」

「しかし……」


 快諾の返事に私がお礼を言う前に、ロザリアが慌てて止めてきた。他の人とも相談しないといけないということなのだろう。もちろん、私も即答を求めたわけではなく、後日の返事でも良かったのだが。


「あの、ケイティ姉様。ご快諾は嬉しいのですけど、家の方には相談されなくても大丈夫なのですか?」

「良いのです、ターニャ。うちの者に相談するとさらに面倒なことになりかねませんので。ということで、ロザリアも他言無用です。とくに、お母さまに知られてはなりませんよ」


 ケイティがまた振り返ってロザリアに釘を刺すと、ロザリアは納得いかなそうな顔ながらも「……承知いたしました」と答えた。




 昼食時もそうした話は一切出さず、素知らぬ顔でやり過ごす。ブレンダは何やらあまり元気がなく、アグネーゼはいつも通りだった。

 授業を終えて離宮に戻ると、これから学ぶ魔術についてルフィーナと話し合いだ。ケイティが一緒に来てくれることになったので、それも踏まえて決めなくてはならない。


「攻撃については主に私がやりますので、ターニャ様は不測の事態に備える意味で、各属性の基本的な攻撃魔術だけあればよろしいのではないでしょうか?」

「火・水・風・地・天属性の攻撃魔術ですね。使う機会はあるかしら?」

「物理攻撃が効かないような魔物がいれば、という感じですね。後は、補助魔術ですね。こちらは結構使うことがあると思います。敵の足を止める系の魔術です」


 足止めの魔術にも色々な種類がある。足元を揺らしたり、凍らせたり、木の根を絡ませたりと、これも属性により効果が異なるため、それぞれの属性の魔術を学んでおいた方がよさそうだ。


「ケイティ様は回復だけでなく、加護系の魔術も使えると思いますので、そちらはお任せしましょう」

「ケイティ姉様は本当に優秀なのですね」

「回復と加護は教会で祈りを捧げるための基本魔術ですから、もしかするとエレノア殿も使えるかもしれません」


 ということで、これから一ヶ月弱、私は攻撃魔術と補助魔術を練習していくことになる。もちろんこれらも祈り無しで展開できなくては、実戦で使いものにならないだろう。幸い、ポーションの材料がヴィーシュから大量に届いたので、魔力切れは心配なさそうだ。


 では早速ポーション作りから始めようかと準備を始めたところで、ルチアが扉をノックして部屋に入ってきた。


「ターニャお嬢様、お客様ですよ。居間までお越しください」


 約束はないはずですけどと思いつつ、そう言えば、先ほど玄関のほうからちょっと騒がしい音が聞こえていた。またアグネーゼかな?などと考えながら居間に入ると、なんとそこにはお爺さまがいた。


「お爺さまだー!」


 テンションが急上昇した私は思わずお爺さまに飛びつき、抱きつく。懐かしい匂いがする。


「いつ来たの? しばらくはいれるんでしょ?」

「これこれ、ターニャ。苦しいよ。変わらず元気そうじゃな」

「うん! 元気だよ! 学校も楽しいよ!」

「ターニャお嬢様、ヴィーシュ侯が苦しそうですよ。座ってお話しされてはいかがですか?」


 ルチアに引き離されてしまったが、ピッタリお爺さまの隣に座り直して、改めてお爺さまを見上げる。二ヶ月前と変わらない優しい笑顔だ。


「王都はどうじゃ? ヴィーシュと全然違うから戸惑うことも多かろう?」

「うん。ヴィーシュが懐かしいよ。でも、二ヶ月経って、だんだん慣れてきたよ」

「そうかそうか。お友達はできたか?」

「姉様たちはみんな優しくしてくれるよ。課題も手伝ってくれるよ」

「それはよかった」


 そう言って、お爺さまは笑顔を深める。


「わしはこれからイェーリングに向かわなければならん。すぐに戦争を終わらせて帰ってくるからな」

「えー! お爺さま戦争に行っちゃうの? そんなのお父さまに任せておけばいいのに」

「ハハ、そういうわけにもいかんのじゃ。今夜は泊まっていくので、それで許しておくれ」


 その夜は遅くまでお爺さまと話をした。お母さまがひたすら私の心配をしていることや、初等学校時代のクラスメイト達が私の側近になろうと猛勉強してることなどを聞いて、心が温まった。

 翌朝イェーリングに向かうお爺さまを見送ると、それまであまり感じなかった寂しさが押し寄せてきたけど、お爺さまと話す私の言葉がヴィーシュ時代に戻ってしまっていたことをルチアにじっくりと叱られ、寂しさはどこかにいってしまった。

お爺さまに会って、言葉遣いが戻ってしまったターニャでした。

次話は明日です。

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