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(アグネーゼの視点)王宮執政所でのお仕事

 王宮執務所は、王宮に隣接する広大な敷地にある。フィルネツィアの政治に関わるすべての部局があり、貴族から平民まで多くの人が働いている。王命により私が執務の修行をすることになったのは行政管理局で、直轄地の行政区を統括している部局だ。要するに、直轄地でしっかりと行政が進められているかを監督するところである。


「アグネーゼ様、お仕事には慣れましたか?」

「えぇ、大丈夫よ。お気遣い感謝するわ」


 私に話しかけてきたのは、行政管理局局長のノイシュテッターだ。まだ二十代と若いのに、その手腕を買われて局長に上った有能な女性官僚だ。


「地方行政官の陳情を受けるのも大変でしょう。無理はなされないでくださいませ」

「なかなか興味深い話が聞けて楽しいわ」


 この時期の行政管理局には、陳情がとても多い。新年度が始まり一段落したところで、直轄地の行政官が王都にやってくるのは毎年の慣例になっているそうだ。

 王都にやってきて、要望やら文句やらを行政管理局に陳情に来るわけだが、その相手を私は積極的に引き受けている。私が席に着くと、最初はなぜこんな子供が?と訝しみ、私が名乗ると飛び上がって驚いて跪くのがいつものパターンだ。


「平民たちの実情を知ることができる貴重な機会を与えてくれて感謝してるわ、ノイシュテッター局長」

「お役に立てていれば光栄です」

「それにしても、橋が欲しいとか、建物を建て直してとか、人を回してくれとか、どこもかしこも足りないものばかりなのね」

「予算には限りがございますので。それに戦争も始まってしまいましたから、これからはさらに厳しくなると思います」

「なるほど。さらに陳情が増えそうね」


 例年であれば、陳情のうち何割かは追加で予算が下りて叶うことになるのだそうだが、今年はかなり厳しいらしい。戦争は金食い虫だ。


「お茶はこれくらいにして、仕事に戻るわね。まだ陳情は来ているのでしょう?」

「はい、今日は次の陳情で最後です」

「行くわよ、エレノア」

「はい、アグネーゼ様」




 陳情を受ける部屋に入ると、小太りの男と痩せた男がすでに座っていた。私たちが入ってきて席に着いたことを訝しむように、小太りの方が言う。


「あの、行政管理局の方に陳情に来たのですが……」

「私がその担当者よ。アグネーゼ・フィルネツィアと隣は護衛のエレノアよ」

「え!?、……フィルネツィアって」


 小太りの男は驚きのあまりか、慌てて椅子から転げ落ちて、跪き、よく分かっていないようで座り続けている痩せた方を引きずり下ろし跪かせる。よく見るパターンだ。


「大変失礼いたしました! 王女殿下とはつゆ知らず、無礼をお許しください」

「いいのよ。王族がいるなんて思わないものね。座って話を聞かせて」

「着席はお許しください。私はブートリアの行政官パップロート、こちらは副官のヴァイゼです」

「ブートリア……。王都の西方の直轄地ね」

「はい。あまり豊かな土地ではありませんが、昔から西へ向かう物資や人の中継地として、町はそれなりの賑わいもございます」

「それで要望はなんなのかしら?」


 地方行政官パップロートは汗を拭きながら要望を話し始める。


「戦争が始まり、西のイェーリングへの人と物資の流れが急増し、宿屋や店など、あらゆるものが不足している状況です。とくに足りないのが町の警備で、治安を保つのも難しい状況なのです」

「まぁ、それは大変ね。でもそれは軍に言うべきことではなくて?」

「それがその……、軍にはもちろん陳情したのですが、行政管理局に言えと……」

「なるほど、たらい回しってやつね」


 人の流れはほとんど兵士だろうし、物資も戦争のためのもののはずだ。中継地が困っているのであれば、軍の方でなんとかすべきことのはずだ。


「分かったわ。必ずとは言えないけど、掛け合ってみるわ。詳しい資料はあるわね?」

「は、はい、ありがとうございます! 人と物の流れの資料はこちらです」


 エレノアがパップロートから資料を受け取ると、二人は何度も頭を下げつつ部屋から出て行った。


「アグネーゼ様、よろしいのですか? 軍に掛け合うなどと」

「これでいいのよ、エレノア。騎士団長に会う口実ができたわ」

「……始めるのですね?」

「ええ。楽しくなるといいわね」

アグネーゼも課題を頑張ります。

でも何か思惑がありそうです。

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